護衛──3
──本人がいくらそう思ったところで、向こうは関係ないのだ。
全員揃ったところで、南門にいる商人のもとへ向かい、早速出発となった。見渡す限りの草原はルラがこの街に来た方角(西)とあまりかわりはないが、しかし、小さな川が流れている。
水量はあまりなく、深さも浅い川であるが、見ていると和むのはなぜだろうか。
「坊主。このままずっと西に行くと結構でかい森に行きつくんだが、そこにはなかなか手強い奴がいるんだ」
「手強い奴、ですか?」
長い行商の前方の方で『竜鱗』のメンバーに混じって歩いていたルラは、ギースの話を聞いていた。
「巨大雀蜂ってやつだが……、聞いたことはあるか?」
「あ、はい」
ルラを街まで乗せてきてくれた行商人──ジンの護衛をしていた少年──ケビンが、街に来るまでに狩ったと言っていた魔獣である。彼らは西の方から来たはずであるが、街の南の方の森にも出現するようだ。
「名前そのままな大きなスズメバチですよね?」
「あぁ。強力な毒を持つ上に、刺されても刺したビッグホーニトは死なない。王赤蜜蜂みたいに針が尻からもげて死んだららくなんだがなぁ。ちなみにだが、ビッグホーニトに刺されると死にはしないが身体中がしびれて三日は身動きがとれなくなるから気を付けろ」
──身動きが取れなくなる。ということは、チームや団体で行動していれば大丈夫であろうが、単独で行動していた場合は、そのまま死もありえるということか。
身動きがとれない状態で森に独り、というのは、ほぼ確実に死に繋がる状況である。魔法が使えるルラでも避けたい状況だ。舌が痺れて声が出せなければ、魔法を発動させにくい。
魔力を持たない獣ならまだしも、この世界には魔獣がいるのだ。奴等に食い殺されたら、指一本さえも残るまい……なんて想像をして、身震いする。毒にだけは気を付けよう。
「……はい、気を付けます」
「力はあんまり強くはねぇんだが、あやつらは素早い。逃げるよりも尻の針を狙って攻撃した方が楽だ」
執念深くどこまでも追ってくるような魔物なのだろうか。面倒な魔物もいるもんだ、と密やかに息を吐き出した。
「おい小僧」
不意に背後からかけられた声に、ルラは顔をしかめた。この中で小僧と呼ばれるような年頃の男──本当は女であるが──は、ルラしかいない。
隣にいるギースも眉を寄せているところからして、声をかけてきた相手はおそらく『荒れ狂う一角獣』である。
正直振り返りたくもないが、無視をすれば何をされるかわかったものではない。渋々後ろを向けば、刃がぼろぼろになった大鎌を背負った男と目があった。白い部分が広い目──所謂三白眼の男は、ニキビ面を歪めてにやりと笑う。
(うっわぁ……、絡まれたよ)
ルラは顔をひきつらせた。
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