成長
すみません、受験が目前に迫っていまして……(汗)
一端更新をストップします。
三月頃からまた再開する予定です。
朝の澄んだ空気は冷たく、しかしここにきてから毎朝感じていた肌に突き刺さるような寒さではなくなっていた。
空を見上げれば、霞がかった春の青空が広がっている。東の空に浮かんでいる月は、白く儚い。
「……おはようございます、月女神様」
小さく呟いたルラは、大きく伸びをしてからギルドへ向かって歩き始めた。
──この世界に来てから、一週間が経過した。ゆっくりと過ぎていく毎日は、日本で過ごしてきた日々より何倍も穏やかで、時折起こる予想外のできごとが楽しくてしかたがない。
その一方、彼がいないという寂しさが、真夜中に襲ってくるときがある。十六になるまでの辛抱であるが、彼がいない寂しさというのは、何をしても紛らすことのできない感情であった。
「おはよー、ルラちゃん」
「おはようございます、ディーゼさん」
何度も足を運ぶうちに、顔を見れば挨拶を交わす程度の仲になった川魚の串焼を露店で売っているおじさん──ディーゼに挨拶をして、さらに進む。
──この一月で様々なことを学んだ。
一番衝撃的だった事実は、ルラの魔法は『おかしい』ということだ。
この街には図書館があると聞いて、ルラは足繁く(あししげく)通った。 会員登録(登録料は銀貨三枚と高め)をすれば読み放題であったため、元々本好きのルラは、午前中もしくは午後のどちらかに依頼を受けると、残った時間は図書館に篭っていたのだ。
魔法についての書もいくつかあったためそれらに目を通したのだが、魔法というのは基本的に長ったらしい詠唱と呼ばれるものを口にしてから魔法の名前を口にしなければ発動しないものらしい。詠唱とやらをせずとも魔法を発動する方法は二つあるが、一方は所謂魔方陣を描いて魔法を使うという方法で、もう一方は何度も何度も同じ魔法を繰り返し練習し、血がにじむような努力を重ねて、漸くできるようになる詠唱破棄──詠唱をせずに魔法を行う──というものだ。
ルラの魔法の発動のさせ方は明らかに後者の詠唱破棄なのだが、ルラは一度も練習することなく一発で詠唱破棄による魔法発動ができてしまっていた。
そうつまり、ルラは規格外であったらしい。
次にルラにとって大きな発見だったのは、ディーツゥッア国についてのことだ。
日本刀に似た片刃の剣があるこの国は、どうやら気候の面や文化の面において、日本にそっくりであるようだ。米を主食とし、ショーユ(醤油)と呼ばれる黒くてしょっぱい調味料を作り、漁業が盛んな島国で、キモノ(着物)と呼ばれる何重にも袖があるだけの布を身に纏っている民族が生活している。
数年前まで鎖国をしていたせいで、他国の文化の流入が進んでおらず、洋服を着たり、洋館に住んだりしている者は少ないらしい。
この国よりもさらに四季が明瞭な本州と呼ばれる北東から南西へと延びるように細長い一番大きな島、北の端はケッペンの気候区分で冷帯に分類されるであろう夏でも涼しい気候の大きな島、南の端は亜熱帯に分類されるであろう冬でも温暖な小さな島、それから二つの比較的大きな島と幾つかの小さな島からなりたっている。
形といい、何といい、日本にそっくりなのだ。
魔物についても調べてみた。魔物は魔人と魔獣のことであり、魔人とは人の型をした人と異なるもの──具体的には、その中でも力の弱い者は顔や身体に鱗をもっていたり、全身がイボだらけだったりするらしい。それを知ったときは魚人族やら竜人族やらも鱗を持っているのではないか、と思ったのだが、根本的にその性質が違っていた。それに、もっと大きな特徴もあったのだ。
彼ら彼女らは、残虐的な思考を持ち、人族(魚人族、エルフ族等の亜人族を含む)に敵対心を持っている。鮫肌のようなざらざらとした、それでいて黒てかりする肌をしていて、目は血のような朱色らしい。髪色はそれぞれであるらしいが、黒髪が最も多い。そして魔法が得意らしい。
基本的に醜い顔立ちをしている者が大半であるが、極一部の美しい顔立ちをした者は魔人の中でも力が強く、『美しい魔人を見たら、どんなに力に自信があっても逃げろ』と書物に書かれていたほどに危険な存在だ。
魔獣は魔力を持つ人型以外の生き物の総称だ。しかし、植物型は別物らしく、こちらは魔草と呼ばれている。
魔力を持つ菌類は一体どうなるのかなどというどうでもよい疑問が浮かんだが、この世界では茸は植物に分類されているようだし、カビも植物に分類されているようだから、菌類≒植物なのかもしれない。それに原核生物なんかは目に見えないのだから関係ないのだろう。その他微生物も同じく。
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