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月女神の庭で。  作者: 祐多
第一章
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「……斬り裂くのに特化した刀なんですが、ありますか?」


「斬り裂く……? あぁ、嬢ちゃん、ディーツゥッア国の出か」



 ──ディーツゥッア国。


 その国についての情報は、ルラの脳にあった。あの女性がくれたものだ。


 『極東の小さな島国で、長年鎖国していたため、特有な文化が発達している』──という、それだけの情報であるが。

 その情報だけだと、ディーツゥッア国は日本に似た国のような気がする。ドワーフのこの男性の言葉から推測するに、日本刀に似た刀がディーツゥッア国にもあるようだ。



「はい」



 勿論、ルラの出身は別世界の日本国であり、嘘を吐くことになるが頷いておく。ディーツゥッア国の出身ということにしておけば、色々と説明が楽そうだからだ。



「ほぅ……。ディーツゥッア国の出身でその歳でこっちの言葉が話せるとは、嬢ちゃんなかなかすごいな」


「……この歳だから、ですよ。大人になってから学ぶより、子供のうちに学んだ方が、記憶力がある分上達が早いですから」



 言葉につまりかけて、しかし何とか受け答えた。どうやらディーツゥッア国はこの国とは言語が違うらしい。そこでふと思う。──ルラが今いるこの国は、何処の何という国なのだろうか、と。

 この世界の地図は、一般常識としてルラの脳にある。しかし、ここの国名がわからないのだ。



「確かに、な」



 ドワーフの男性は少しだけ笑んでルラに背を向けた。



「ちょっと待ってな。今、持ってきてやる」



 ディーツゥッア国の刀は、この武器屋においてあるようだ。──しかし、はたと思い出す。ルラは今、貧乏だ。おそらく彼が持ってこようとしている刀を買えるほどの金はない。



「すみません! 今お金ないんです」



 咄嗟に声をあげるが、ドワーフの男性は武器庫らしきところに向かう足を止めず、ルラに背を向けたままひらりと手を振る。



「金はいい。どうせ置いといても誰も買うやつはいないからな」


「えっ!?」



 ──買うやつはいない……? 一体どういうことだろうか。



 ルラが今いる国には、ディーツゥッア国の者はなかなか訪れないということなのだろうか。それともディーツゥッア国の刀を使う者が少ないということなのだろうか。

 ただで手に入るというのはありがたいが、ただより高いものはないという言葉も存在している。譲り受けたら危険なものなのかもしれない。


 暫くして店の奥に消えていったドワーフの男性が、再び姿を現した。

 彼が手にしているのは、鮮やかな紅の刀である。



「ほら、抜いてみろ」



 手渡され、彼を一瞥すると、鳶色の瞳がこちらをじっと見ていた。ルラは唾を飲み込み、鞘からそれを一気に引き抜く。



 ──刀身まで綺麗な紅色をしていた。しかしそれは、血にぬれたかのような禍々しい色合いではない。秋の紅葉もみじのような、美しい紅。


 よく見てみると、つばが龍をかたどっていた。



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