刀
「……斬り裂くのに特化した刀なんですが、ありますか?」
「斬り裂く……? あぁ、嬢ちゃん、ディーツゥッア国の出か」
──ディーツゥッア国。
その国についての情報は、ルラの脳にあった。あの女性がくれたものだ。
『極東の小さな島国で、長年鎖国していたため、特有な文化が発達している』──という、それだけの情報であるが。
その情報だけだと、ディーツゥッア国は日本に似た国のような気がする。ドワーフのこの男性の言葉から推測するに、日本刀に似た刀がディーツゥッア国にもあるようだ。
「はい」
勿論、ルラの出身は別世界の日本国であり、嘘を吐くことになるが頷いておく。ディーツゥッア国の出身ということにしておけば、色々と説明が楽そうだからだ。
「ほぅ……。ディーツゥッア国の出身でその歳でこっちの言葉が話せるとは、嬢ちゃんなかなかすごいな」
「……この歳だから、ですよ。大人になってから学ぶより、子供のうちに学んだ方が、記憶力がある分上達が早いですから」
言葉につまりかけて、しかし何とか受け答えた。どうやらディーツゥッア国はこの国とは言語が違うらしい。そこでふと思う。──ルラが今いるこの国は、何処の何という国なのだろうか、と。
この世界の地図は、一般常識としてルラの脳にある。しかし、ここの国名がわからないのだ。
「確かに、な」
ドワーフの男性は少しだけ笑んでルラに背を向けた。
「ちょっと待ってな。今、持ってきてやる」
ディーツゥッア国の刀は、この武器屋においてあるようだ。──しかし、はたと思い出す。ルラは今、貧乏だ。おそらく彼が持ってこようとしている刀を買えるほどの金はない。
「すみません! 今お金ないんです」
咄嗟に声をあげるが、ドワーフの男性は武器庫らしきところに向かう足を止めず、ルラに背を向けたままひらりと手を振る。
「金はいい。どうせ置いといても誰も買うやつはいないからな」
「えっ!?」
──買うやつはいない……? 一体どういうことだろうか。
ルラが今いる国には、ディーツゥッア国の者はなかなか訪れないということなのだろうか。それともディーツゥッア国の刀を使う者が少ないということなのだろうか。
ただで手に入るというのはありがたいが、ただより高いものはないという言葉も存在している。譲り受けたら危険なものなのかもしれない。
暫くして店の奥に消えていったドワーフの男性が、再び姿を現した。
彼が手にしているのは、鮮やかな紅の刀である。
「ほら、抜いてみろ」
手渡され、彼を一瞥すると、鳶色の瞳がこちらをじっと見ていた。ルラは唾を飲み込み、鞘からそれを一気に引き抜く。
──刀身まで綺麗な紅色をしていた。しかしそれは、血にぬれたかのような禍々しい色合いではない。秋の紅葉のような、美しい紅。
よく見てみると、鍔が龍を象っていた。
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