第35話
計画
部屋に戻ると、マチルダたちが、あああでもない、こうでもないと、喧々諤々、話し合っていた。
「オルドの役所は膨大に広いんです。基本的に内部は関係者以外立入禁止の上に、特殊な許可がないと通れない道もあります。」
「代々継いできたっていう、秘密のルートが、それなのか?」
「いえ、ウィルソン家が継いできたのは、関係者でも一部しか知らない、地下の極秘のフロアからになります。」
「じゃぁまず、その極秘の地下にどうやって辿り着くんだよ?」
当たり前だが、関係者ではないマチルダや、狙われてるエイダ、横領の容疑でクビになったウィルソン達は、真正面から入れない。
誰にも見つからないように潜入する必要があるのだが、潜入だけならまだしも、役所には様々な組織が詰めており、政治家専用フロア、警察詰所、VIP限定エリアなど、関係者でも立ち入れない領域が存在している為、ウィルソンの言う《地下にある極秘フロア》へ到達するにはそれらを一部、通過しなくてはいけない。
「役所の内部の地図は無いのかい?」
「従業員用に簡単な地図はありますが、政治家や警察などの専門組織フロアの地図は、該当関係者以外に公開されません。」
「なら、建物の設計図は、どうなんだ?」
「一部公開されていますが、内部の全設計図はテロ防止目的で閲覧禁止、持ち出し禁止の制限がかかっています。」
「あんたの伝手とかで、入手できないのか?」
「難しいですね。どこで管理されているかも、わかりません。」
「なんだい!わかんない事ばっかじゃないか。」
「ええ、そうですよ。だから、・・・私がいます。」
ウィルソンは胸ポケットから、小型のタブレット端末を取り出すと、テーブルの上にホログラムを出現させた。
自然と引き寄せられるように、皆がテーブルに集まる。
「ウィルソン家が代々継いできたのは、地下の極秘フロアの情報だけですが、私は父から、極秘フロアへ行った際の順路データを、確かに預かり受けました。」
ホログラムは、ウィルソンの父が、財宝の扉を開ける時に通った地下までのルートを映し出している。
オルドの市街庁舎の全体像と、各フロアを立体的に映し出しているものの、父親が通ったルート以外は、不明瞭な箇所が目立つ。
父親が実際に通ったルートを示すように、黄色の線がホログラムの建物の中をゆっくり動いており、その線を追うウィルソンの視線は、父親の面影に思いを馳せているのか、憂いの色が滲んでいる。
「記録しててくれたお父さんに、感謝しないといけないさね。」
「ええ、そうですね。」
ウィルソンは(ですが、そのせいで、死にました。)と喉まで出かかった言葉を、ぐっと呑み込んだ。




