第25話
「匿う?」ノーマンの表情に緊張が走る。
「はい。すぐにピンときましたよ。それはクロコで惨殺されたエイダの遺品だという事に。」
「なぜ、わかるのですか?」
「キムさんは実のところ、墓荒らしもする遺品専門のバイヤーです。そんな人物から、匿わないといけない程の商品が出た。ここ最近で聞いた危なそうな遺体といえば・・・。」
「エイダの遺体、ですか。」
「ええ、そうです。それに、オルド役所での騒動、捕まった僧侶と少女。その少女はエイダの片割れ。短期間での殺人と騒動と誘拐は、ただの偶然でしょうか?」
数々の事件に僅かな共通点があれば、必ず深い理由がある。
ウィルソンは深く背もたれに体を委ねると、ふう、とため息。
「ブラウン姉妹の抹殺が目的なら、ランダに殺しの依頼をすればいのに依頼されたのは誘拐。となれば目的は身代金、恐喝、強奪、奪取か取引・・・そんな時に、殺害現場のショワンにいる遺品バイヤーのキムから連絡が来れば、おのずと答えはひとつでしょう。」
「そこまで解っているのなら、エイダを殺した犯人もウィルソンさんは知っているのではないですか?」
「残念ながら、当初、有り触れた事件だと思っていましたし、あなたがたを見守り始めたのは、オルドの騒動の後からですので。」
「では、ランダに誘拐の依頼をした人物は?」
「それもまだ解っていません。今、探らせていますが・・・ランダ自身に直接、色々と聞いた方が、幾分も早いでしょうね。」
にっこり微笑むウィルソンに、ぞくりと悪寒が走る。
やさしく言ってはいるが、言葉の裏は、ランダを今すぐ捕まえて尋問、拷問の限りをつくそうという提案に聞こえるのだ。
ふと、ここでノーマンの脳裏に疑問が生じる。
どうして、このアイザック・ウィルソンは、ここまで教えてくれるのだろうか? 過去に大道寺を信仰していたから、僧侶を保護したいから、ユージーンに恩があるから?
そんな曖昧な理由で、生死が絡んでいる事件に、知れば知るほど闇が深いこの事件に、ここまで動けるものだろうか。
ウィルソンの口からどんどん溢れる事実に、イブはまだ飲み込めないといった様子で、片手で顔を覆うように頬杖をついている。
ツーは、事態がまったく解らないと言いたげな表情だ。
「・・・あの、ウィルソンさん。」
「はい、なんでしょうか。」
「どうして、あなたはそこまで、教えてくれるのですか?大道寺の僧侶だから、それだけの理由で助けたい訳ではないでしょう。」
「どうして、ですか。」
「はい。一体、どんな目的があるのでしょうか?拙僧たちに、何をしてほしいのでしょうか?」
「ノーマンさんは、実に、聡いお方ですね。」
いいでしょう、お話しします、とウィルソンは姿勢を正し、まっすぐノーマンを見据えた。
「私の父は、オルドの役所に殺されました。」




