第21章 – 時を刻んだ過去
古の森を並んで歩くカイルとカエリラ。カイルは小さな娘の手をしっかり握り、大地の匂い、踏みしめる枝の音、葉がそよぐ穏やかな波音が、記憶と啓示の雰囲気を作り出していた。
カエリラは軽やかに歩きながらも、目線はずっと父に向けられていた。何か大切なことがまもなく語られると知って、胸が高鳴っていた。
カイル:
カエリラ…お前のお母さんと俺が出会った経緯は…説明は難しい。まるで…運命そのものが道を描いたようなものだった。未来が強引に我々を結びつけたような。
カエリラ:
パパ、話して!わたし、分かるから…約束する!
カイルは優しい笑みを浮かべたが、その目には少しの陰りもあった。これは血と痛み、そして抑えがたい愛に彩られた話だった。
カイル:
今の俺は部族のアルファの一人だって知ってるよな?お前のお母さんと並んで。
カエリラ:
うん、パパ!みんなパパを尊敬してるし…それにママを恐れてる。へへ。
カイル(笑って):
その通りだ…でもな、昔はアルファじゃなかった。実は俺も原初の力を持ってる。ママと同じ…ただ、技術的には俺はオメガなんだ。今でもな、お前のお母さんのオメガであり続けてる。
カエリラは軽くくすりと笑い、もう片方の手で口元を隠した。
カエリラ:
私、もう気づいてたよ、パパ。ママがパパを支配してるって!でも二人は愛し合ってるから、理解してる。
カイルもうれしげに笑った。そして空を見上げ、森の木々の間に思いを馳せた。
カイル:
な、お前知ってたか?俺とお前の母さんは違う部族の出だってこと。
カエリラは一瞬立ち止まり、驚いた表情を見せた。
カエリラ:
えっ?違う部族?じゃあ…私のオーラが変わる理由はそれ?青いときもあるし、赤いときもある…
カイル:
その通りだ。俺は“太陽の古の部族”の出身だ。平和、癒し、穏やかさを尊ぶ一族。お前のお母さんは“怒りの部族”――戦いの炎から生まれた、戦闘的で激しい戦士たち。
カエリラは考え込んだように歩いた。
カエリラ:
なるほど…ママは怖いし、パパは穏やか…夜と嵐みたいな二人だね。
カイル(笑って):
ハハハ…いい例えだな。
少し間を置き、表情が真剣になった。
カイル:
でもな…昔はそんなじゃなかった。二つの部族は“原初獣の狩人”に滅ぼされた。あるモンスター…古き血を求めて世界を巡る影。
カエリラ:
怖い…。誰だったの、その人?
カイルは頭を垂れ、重い思い出を思い返すように息を吐いた。
カイル:
アイツは…俺の父親だった。
カエリラは息を呑んだ。
カエリラ:
えっ?!
カイル:
そうだ…俺の父さんが、その原初獣の狩人だった。二つの部族を…特に俺たちの部族を根絶やしにした。だが、俺とお前の母さんだけが生き延びた。そして共に、彼と対峙したんだ。
カエリラ:
部族の狼たちがその話をしてたよ!二人が勝ったって…でも最終的に仕留めたのはママだって。
カイル(笑みを浮かべて):
そうだ…アシナが決定打を放った。でも誰も知らないんだ…その前に、俺と彼女があの狩人と戦ったんだ。その戦いは、時間さえ屈服させたほどの壮絶なものだったってことを。
カエリラ:
どういうこと…“時間”が?
カイル:
何日も戦った。空は暗くなり、風は止み、地面は裂けた。自然が静まり返った。俺たちの力――炎と光、怒りと均衡――が衝突し、現実のヴェールを裂きそうだった。
カエリラ(心の声):
じゃあ…パパはママの前でも私の前でも、本当に最大の力は使ってないんだ…
カエリラは冗談っぽい微笑みを浮かべ、目を輝かせて父を見ると、甘えた表情でおねだりした。
カエリラ:
わぁ…すごい!でもパパ…もっと教えて!どんな風に最大の力で戦ったのか知りたい!お願い!
カイルは笑い、優しく娘の頭に手を置いた。
カイル:
いいよ、娘よ…話してあげる。でも…覚悟しておいてくれ。だってこの過去は…未来の始まりだから。
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続く…




