第二章 怒りの継承者
ケイリラはため息をつき、腕を伸ばしてから、大きな洞窟の入り口へと歩いていった。中に入るとすぐ、石と骨でできた玉座に座っているアシナが目に入った。その鋭く突き刺すような真剣な眼差しは、部族のどんな戦士でも震え上がらせるほどだった。
アシナ: 「ケイリラ…どこにいたの、私の娘?あなたは——」
ケイリラ(話を遮って): 「——始祖の力を継ぐ偉大なる後継者で、最強の一人で、闇の魔獣を狩る者で、忘れ去られた遺跡の英雄で、絶対的な力の持ち主で、はいはい、もう全部分かってるよ、ママ。」
アシナは深く息を吐き、それでも誇らしげに微笑んだ。
アシナ: 「その通り。あなたは本当にすごいわ、私の娘。あなたをこの世界に生むと決めた時、私は確信していた…あなたは特別な存在になるって。」
洞窟の光に照らされたアシナの笑みは、鋭く輝く牙を見せる野性的で威厳のあるものだった。
アシナ: 「あなたは、私とあなたの父を合わせた以上の力を持っている。最終形態を完全に制御できるようになった時を想像してごらん…」
ケイリラは目線を落とし、もう一度ため息をついた。
ケイリラ: 「分かってるよ、ママ…でも私、まだ若いし。自分の力もちゃんと使えないんだ。」
アシナは何も言わず、静かに立ち上がると、素早く娘を強く抱きしめた。彼女の大きな灰色の尻尾は、ケイリラの体に優しく巻きつき、愛と守護を示していた。
アシナ: 「ああ、私の小さな子よ…まだ分かっていないかもしれないけど、その力はもうあなたの血の中に流れているの。もうすぐ、本当にすぐに、あなたはそれを使いこなせるようになるわ。私も小さな狼の子だった頃から、自分の力を制御していたのよ。」
ケイリラは目を閉じ、一瞬その温かい抱擁に身を預けた。
ケイリラ: 「…ママ…パパのカエルはどこ?」
アシナ(即答で): 「あなたの父?ちょっと外で寝てるだけよ。」
ケイリラ(心の声): やっぱり。ママが怖すぎて逃げてるんだよ。…たぶんね。
アシナ(いたずらっぽく微笑んで): 「それ、聞こえたわよ、娘。私もね、心を読む力、持ってるって覚えてる?」
ケイリラは目を見開き、顔の置き場に困ったように視線を泳がせた。そして、あわてて話題を変えようとした。
ケイリラ: 「あ、あはは…それよりお昼は?今日は何を食べるの?」
アシナはゆっくりと離れながらも、捕食者のような鋭い視線を崩さずに言った。
アシナ: 「鹿よ。あなたの好きなやつ。部族の狼たちに、新鮮なのを狩ってこさせたわ。」
ケイリラの瞳が、空腹な子オオカミのように輝いた。
ケイリラ: 「最高。」
彼女の赤い尻尾が嬉しそうに揺れ始めた。洞窟の奥から漂ってくる香ばしい肉の匂いが、すでに彼女の鼻先をくすぐっていた。
次回へ続く…