第11章 ― 真実の時
カエリラとアシナは、荒廃した戦場の中心へと歩いていった。
空は激しく泣いていた。雨は彼女たちの髪に降り注ぎ、目、腕、そして爪をつたって流れていく。
沈黙は耳をつんざくようだった。
アシナ(真剣に):
「よく聞きなさい、娘よ。
攻撃するチャンスをあげるわ。
私に当ててみなさい。」
カエリラはごくりと唾を飲み込んだ。
心臓は胸の中で激しく打ち鳴らされていた。
震える足取りで、深く息を吸い込み……そして母へ向かって走り出した。
彼女はアシナの腹にパンチを放った。
……何も起こらない。
かすり傷ひとつなし。
アシナは一歩も動かなかった。
アシナ(見下ろしながら):
「……それだけ?
もう一度やってみなさい。」
カエリラは再び挑んだ……蹴り、拳、爪……
しかし母の怒りが高まるのを感じた瞬間、カエリラは恐怖に駆られて後ろへ跳んだ。
アシナは沈黙していた。
カエリラ(神経質に笑いながら):
「え、え、えぇぇぇ……
その、まだ力の使い方が分からなくて!」
アシナは一歩前に出た。
地面が震えた。泥水の溜まりにも波が立った。
カエリラ(絶望的に):
「え、えぇぇ……待って! ママ!
お水、飲みたい? ほら!
木のコップ、あるよ!」
彼女は震える手でカバンから小さな木製のカップを取り出した。
アシナは二歩目を踏み出した。
さらに重く、さらに強く。
世界が逃げ出したくなるような圧。
カエリラ(泣きそうに):
「え、えぇぇぇ……へへ……」
アシナは身をかがめ、
爪をゆっくりと地面につけた。
四つん這いの姿勢になった。
それは明確だった。
彼女は今、狩る者の姿だった。
その瞳は……二つの血の太陽のように赤く燃えていた。
カエリラ(青ざめて):
「ひ、ひぃ……」
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少し離れた場所では…
カイルはねじれた木の下に倒れたまま、まだ回復途中だった。
全身が痛みにうねっていたが、彼の目は開かれていて、すべてを見ていた。
カイル(苦しそうにささやく):
「ア、アシナ……だめだ……
彼女はまだ……ただの子ども……
違う世代の子狼にすぎない……」
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戦場に戻ると…
カエリラは動けず、震えていた。
カエリラ:
「え、えぇぇ……ねぇ、いい雨だね? ハハ……」
アシナは口を開いた。
濃く熱い煙が歯の間から漏れ出す。
それは彼女の部族の本能が発動した証だった。
その目は完全に真紅に輝いていた。
戦いが始まろうとしていた――。
次回へ続く…




