第三十一話
夏の終わりが、残暑の気配を残しつつもどこか新しい風が吹き始めるような感覚に包まれていた。
強い日差しが照りつける日中、市場の喧騒は相変わらずだが夜の帳が降りる頃にはこれまでとは違う不自然なほどの静けさが街を包み込むようになった。
それは、ラモン侯爵による突然の「浄化作戦」が始まったためであった。
侯爵は、自身の地位を盤石にするためこれまで共に活動し陰で支えてきたはずの貴族や闇の商会の幹部たちを次々と告発し、警邏隊員や私兵に逮捕させていった。
彼らは、治安が悪化してから参入してきた商人や、次々と土地を買収し、あるいは権利を奪い取って住んでいた人々を追い出した貴族や商人そしてラモン侯爵の悪事を手伝い、その恩恵にあずかっていた者たちだった。
侯爵は彼らを「プエルト・エスぺランサの治安を乱す元凶」として大々的に市民へ向けてこれまで彼らが行ってきた脱税、不当な契約による利益の徴収、麻薬の販売や買い付けなどの悪事を暴き、逮捕等の活動を始めたのだ。
一方的な利益でどれだけ住民から不当な搾取をしてきたのか、大麻や麻薬が出回ったことでどれだけの人々が苦しんでいるのかと、時には演説をしたり、横暴な態度をとる貴族を窘めたりと侯爵は自ら先頭に立って動いた。
そして、私兵や警邏隊を浄化作戦の為に惜しみなく投入した。
それにより、今まで侯爵に忠実に従っていた者も、街の為、家族の為にと心を押し殺しささやかな反抗をしてきた者も、一丸となって逮捕・粛清に力を入れていた。
その結果、街の治安は目に見えて回復していったのだ。
これまで苦しめられていた者たちは不正な契約から解放され、住む場所を失った人々はまた大事な家に戻ってきたり、新しい住居を見つけて暮らし始めた。
安心して暮らせる人々が増え、貧困街やスラムに流れていた者たちも戻り新しい生活を始める家族も増えていった。
悪徳な商売をしていた者は商売の権利をはく奪され、今まで私腹を肥やしていた者たちはその分の税金を請求されて、逃げようものなら強制執行されて税金を取り立てられた。
地位のはく奪や罰則により一家離散や貴族の平民化が増えたのである。
大々的にラモン侯爵が中心となり主導し動くことによって、自身の権力強化に繋がっていた。
薄暗い牢獄に、鎖の擦れる音が響く。
男は信じられないといった様子で虚空を見つめ、乾いた唇から掠れた声が漏れた。
「なぜ、俺たちが捕まる……」
その呟きは、呆然とした絶望に満ちていた。
隣の男は、壁に拳を叩きつけ、悔しさに顔を歪めた。
「畜生、今までこんな事なかったのに」
捕らえられた者たちから、怒号が上がる。
「裏切者、 裏切者め」
その罵声は、まるで呪いのように、遠く離れた侯爵の耳にも届くかのように響き渡った。
侯爵の行動は徹底していて、彼らの不正の証拠を外部にリークさせ所有物を没収し、裁判にかける。
街中では、警邏隊の厳しい取り締まりが始まり、これまで公然と行われていた違法な取引や悪行が影を潜めていく。
麻薬の売人たちは姿を消し、人身売買に関わっていた末端の者たちも次々と捕らえられた。
その中には、「救済の館」と裏で繋がっていた者たちも含まれていたという。
当初、この不穏な動きに多くの市民は戸惑いを隠せないでいた。
長年、侯爵の支配下で暮らしてきた彼らにとって突然始まった「浄化作戦」は、新たな形の圧政の始まりにしか見えなかったのである。
しかし、日が経つにつれその印象は少しずつ変化していく。
これまで以上に警邏隊の巡回が増え、夜間の外出も安心してできるようになった。
裏路地での怪しい人影は減り、子供たちが外で遊ぶ姿も増えていった。
街角では、井戸端会議をする女たちの顔に、以前にはなかった穏やかな笑みが浮かんでいた。子供たちの甲高い声が路地裏に響き渡り、母親たちはその声に耳を傾けながら、心なしか肩の力を抜いているようだった。
「最近は、夜になっても安心して街を歩けるようになったね」
一人の市民が、隣を歩く友人に話しかけた。
「ああ、あの高利貸しもいなくなったし、子供を心配することも減ったよ」
「本当に侯爵様のおかげだわ。こんなに早く街が良くなるなんて」
そう言って、 心底から安堵したように息を吐いたそれぞれが話、若い母親が抱きかかえた子供の頭を優しく撫でた。
市民の間からは、そんな安堵の声が聞こえ始める。
侯爵の真意がどこにあるかは分からずとも、結果として治安が改善され暮らしやすくなったことは確かであった。
そのため、侯爵への認識は良い方向に変わっていく人々も現れ始め、街には以前のような活気が戻りつつあるように見えた。
市場には新鮮な魚介や農作物が豊富に並び、商人たちの威勢の良い声が響き渡る。
焼き菓子の甘い匂いが漂い、大道芸人の奏でる陽気な音楽が街に彩りを添える。
路地裏からは子供たちの賑やかな笑い声や、鬼ごっこをする元気な足音が聞こえてくる。
観光客も増え、陽だまり亭のような飲食店も賑わいを取り戻し、街全体が経済的に潤っているかのような錯覚を覚えるほどだった。
税金を納める人も増えてきたのだ。
その一方で、街の片隅では眉をひそめる者たちの声も聞こえていた。
「確かに街は綺麗になったけど、なんだか、前よりも息苦しい気がしないか」
古参の商人が、酒場のカウンターでグラスを傾けながら呟いた言葉に別の男が、低い声で同意した。
「こんなに急に、何もかもが片付くなんて……裏があるに決まってる。あの侯爵が、急に正義の味方ぶるなんて、虫唾が走るぜ。何か企んでるに違いない」
彼らの目には、表面的な平和の裏に潜む不穏な影が見えていた。
その裏で侯爵の新たな悪行が、より巧妙な形で進行していることに気づく者は少なかった。
だが、告発され次々と捕らえられていく貴族や悪徳な商人たちにとって侯爵の行動はまさに青天の霹靂であった。
ある貴族が、信じられないといった表情で呟いた。
「あの侯爵が、まさか我々を裏切るなど」
「これまで共に甘い汁を吸ってきたというのに、この冷酷な裏切り者め」
別の商人が、憤りを隠さずに吐き捨てる。
彼らは、侯爵の冷酷さと誰をも信用しない本性を目の当たりにし、恐怖と絶望に苛まれた。
これまで侯爵を隠れ蓑に活動していた者はもちろん、権力を陰で支えてきた者たちが、一転してその犠牲となったことで侯爵の支配体制の内部には大きな亀裂が生じ始めたのである。
この浄化作戦の嵐が吹き荒れる中カイエンは侯爵邸にいた。
妹のエレナや母親のイザベラと中庭でティータイムを過ごしながら、最近の出来事について雑談していた。
穏やかな夏の午後の光が降り注ぐ中庭は、外の喧騒とはまるで別世界のようであった。
エレナは花に水をやりながら歌を口ずさみ、イザベラは優雅な手つきでティーカップを傾けている。
「お父様、最近は本当に忙しそうになさっているわね。お疲れではないかしら」
エレナが心配そうに呟いたその時、ちょうど帰宅したラモン侯爵が中庭に足を踏み入れる。
カイエンたちは立ち上がり侯爵を迎えた。
イザベラは、夫の顔に疲労の影を見つけ胸の奥で不安が募るのを感じた。
「あなた、お身体が冷えてきたでしょう。少しお部屋で休まれてはいかが」
イザベラはそう言ってラモン侯爵の手を取り、彼の体を気遣うように部屋へと促した。
「あぁ、このくらいは気にするな。それよりイザベラ、庭でティータイムを過ごすのはいいが体調は大丈夫だろうな、頭痛や眩暈などは無いのか」
ラモンは妻の優しさに微笑み、共に部屋へ向かい送り届けることにした。
「よろしければ、少しわたくしとお話をしてくださいませんか。最近は、とても忙しそうで中々一緒に入れませんでしたもの。紅茶を入れますのでいかがですか」
妻からのその言葉にラモン侯爵は眉間にしわを寄せたが、その顰めた顔にうっすらと口元に笑みを見せた。
「すまない、では話し相手になっていただこうか」
ラモンの言葉にイザベラは静かに頷いた。
夫の普段からは考えられない優しい口調に、イザベラはそれ以上深く踏み込めない。
彼の言葉の裏に何かがあるような気がして、胸の奥がざわついた。
イザベラの部屋に着き、中に通して貰ったラモンは妻に言われたまま広いソファーに腰かけた。
イザベラの部屋に居た使用人が侯爵へ紅茶の準備をしようと動き出していたが、イザベラはスッと近くに行くとその行動を止めた。
「いいわ、ラモン様には私が淹れた紅茶を飲んで欲しいの」
イザベラはそう告げた。
そういうと、ティーポットやカップなどが乗ったトレーを運んで来て、ラモンの横に腰かけると丁寧に紅茶を淹れ始めた。
部屋にあったクッキーを使用人が綺麗に盛り付けテーブルに持って来たのを確認すると、イザベラは部屋に居た使用人を人払いの為全員退室を促した。
イザベラの自室で二人は向き合った。
彼女は改めて、最近の侯爵が不正を正す活動で多忙を極めている様子を案じ優しく声をかける。
「最近は、随分とお忙しそうにしていらっしゃるけれど、無理はなさっていないかしら」
イザベラは夫の顔を覗き込んだ。
ラモン侯爵はその問いに柔らかな笑顔を向け、妻の手を優しく握り返した。
「何、心配はいらんイザベラ。これも街のため、そして私たちの家のためだ」
穏やかな空気の中、夫がお茶請けに出したクッキーを何枚か食べた事を見てからイザベラは口を開いた。
「そのクッキー、カイエンが街に行って美味しかったと買って来てくれた物なのです。最近、あなたが頑張ったおかげで治安も良くなり、店じまいしたお店が再び開いたり、新たなお店が出来たり、空き家が減ったりと活気が戻って楽しい場所になってきたらしいのです。お味は如何でしたでしょうか」
イザベラは尋ねた。
その声には、侯爵の功績を称える響きとどこか皮肉めいた喜びが混じっていた。
カイエンが街から買ってきたという言葉を聞いて、侯爵は顔を険しくさせクッキーを睨みつけるように見た。
妻から勧められたからと言って毒見も無しに簡単に口に入れていいものでは無い。
「彼奴は未だに長男としての自覚が無いのか、何が入っているかも分からないこの様なモノをお前に渡すなど……これだから、婚約者をあてがえないのだ。跡取りなのだぞ」
侯爵は苛立ちを隠さずに言った。
夫のその言葉を聞いて、イザベラは楽しそうに笑う。
「最近、あなたが頑張ったおかげで治安も良くなり、安心して物も食べれるのです。それは私達だけでなく、このプエルト・エスペランサに住む人たちも一緒です」
イザベラは微笑んだ。
その笑顔は、侯爵の言葉の裏にある不信感を打ち消すかのように純粋な喜びを湛えていた。
ラモンは彼女の目をじっと見つめると、その表情に偽りはないように見えた。
しかしイザベラの胸には拭いきれない不安が残る。
夫の優しさが、まるで薄い氷のように感じられた。
「でも……一つ、お願いがあるのです。まだお会いしたことは御座いませんが、イネスさんの事なのだけれど長い期間お客様としてこの邸に居ていただいております。そろそろ、この邸の長女として正式に迎え入れてはいただけないかしら」
イザベラは意を決して、イネスの件を切り出した。その言葉には、長年の葛藤と、夫の真意を探るような緊張感が滲んでいた。
身体が弱くても、部屋に居ることが多くても、イザベラは侯爵夫人としてこのデル・ルナ邸の事は把握していたつもりだ。
夜会やパーティーなどに出てどんな言葉を向けられて居るのか、使用人たちから何を思われているのか、知らない訳では無いのだ。
イザベラが侯爵夫人代理と一時呼ばれていた事も、愛人の娘だ、不義の子だと本人やデル・ルナ一家も言われている事も理解していた。
侯爵はイザベラのその言葉に一瞬目を伏せたが、再び目を開けてイザベラの頬をそっと撫でた。
だがその目の奥には、怒りと憎しみが見えていた。
「お前がそんなことを気に病む必要はない。私の決めることだから、安心してくれ」
ラモンの告げた言葉は、彼女の提案をはぐらかすものだった。
イザベラは言葉に詰まる。
夫の冷たい視線が、彼女の心を凍らせたが表情には出さない様に微笑んで夫の言葉にうなずき返事を返した。
ラモンは妻の顔色をじっと見つめて、最近の体調はどうか、苦しいところはないかと逆に彼女を心配し始めた。
近くにあったストールを優しく肩にかけ「ゆっくりと休むように」と言い残し、部屋を出ていく。
イザベラは、ただ夫の背中を見送ることしかできなかった。
彼の言葉の裏に隠された真意を認めたくなくて、彼女の不安は募るばかりである。
その日の夕刻、イザベラは密かに一人の使用人を呼び出した。
その声は、普段の穏やかさとは異なり微かに震えていた。
彼女の顔には何か重大な決意を秘めたような、しかし同時に深い憂いを帯びた表情が浮かんでいた。
「イネスさんに、私の部屋へ来るように伝えて頂戴」
イザベラは静かに命じた。
その言葉には、後戻りできない覚悟が込められていた。
イネスは、侯爵夫人に呼ばれたことを知るとわずかな緊張を覚えた。
侯爵邸に身を寄せている間、侯爵夫人であるイザベラ・デル・ルナと直接顔を合わせる機会はほとんどなかったのだ。
憎い憎い存在ラモン、そして彼の妻イザベラ。
顔を合わせれば、自分はどんな罵りをしてしまうのか、それとも嘲りを向けられるのか。
長年、街の裏路地で生きてきたイネスにとって貴族の邸宅の空気は息苦しく、特に侯爵夫人の部屋へと向かう廊下は、まるで断頭台へ続く道のように感じられた。
格式高い部屋に通されると、そこには優雅なドレスを身にまとったイザベラが座っていた。
彼女の顔は、どこか憂いを帯びているように見えた。
「イネスさん、よく来てくれたわね」
イザベラの優しい声に、イネスは戸惑いつつも頭を下げた。
自分はこの家に厄介ごとを持ち込んでいるはずなのに、なぜこんなに優しく声を掛けられるのか。
その声の裏に隠された意図を探るようにイネスは警戒心を緩めなかった。
イザベラは人払いがされた部屋でイネスに座るように言うと、空いているカップに紅茶を注いだ。
「どうぞ、お飲みになって」
良く体調を崩してることもあってか、か弱い名家の令嬢出身でずっと守られてきたのだろうと、イネスはギリリと奥歯を嚙み締めた。
自分の母は愛人にも妾にもなれずにこの街を出たのに、と思うと悔しさがイネスの心臓を締め付けた。
娼婦として生きてきた彼女の誇りが、貴族の優雅な振る舞いの前で微かに揺らぐのを感じた。
イネスはイザベラが淹れた紅茶を飲むと、ほぅっと溜息を吐いて夫人の方を見た。
その瞬間、ぞくりと背中に悪寒が走り手に持っていたカップがカタカタと震えだした。
イザベラの目が、とても冷たく、顔つきはとても厳しく睨まれているように感じた。
その瞳の奥には、一切の感情が宿っていないように見えた。
まるで、獲物を品定めするような、あるいは無機質な人形のような視線。
やはり、自分が気に入らないのだ。
イザベラより先に侯爵の子供を孕んで生まれた子供だ、この言い分を何処まで信じているか分からないが、今更侯爵の娘として名乗り上げて出たイネスは、長年娼婦として培ってきた自分の容姿と対人スキルに自信が有った。
そして、実際に病弱な夫人代理として社交の場や使用人から見られている事を自負していた。
不義の子がいきなり出てきて、実の娘より名を残そうとしているなど面白くないだろう。
さて何を言われるか、と思いながらもこのプレッシャーに耐えようと、彼女は唇を噛み締めた。
しかし、イザベラの視線は、彼女の自信の根底を揺るがすには十分だった。
「ねぇ、イネスさん。あなた、このプエルトエスペランサを出て行ってくれるかしら」
イザベラは静かに、しかし有無を言わさぬ口調で尋ねた。
その声は笑っているはずなのに、冷たく、まるで刃物を突き付けられている感覚にイネスはうまく言葉が出てこなかった。
彼女の頭の中は真っ白になり、長年培ってきた対人スキルも、この冷徹な圧力の前では無力だった。
侯爵の裏切りにより、彼の支配体制の内部には大きな亀裂が生じていた。
侯爵のやり過ぎを指摘する声は、貴族や商人、ギルドといった限られた場所で密かに囁かれていた。
しかし彼らは侯爵の冷酷さを肌で感じ、公然と動くことはできなかった。
自分たちが、侯爵に言われるまま何も考えずに行ってきたことが良くないことだと自覚が有れば有るほど表立って反抗できないのである。
隠れ蓑にしていた者達も、侯爵とつながりが無いからこそ慈悲もなくいつでも公衆にさらされるように捕まるのでは無いかと怯える日々だった。
その裏切りがあまりにも巧妙で、そして見せしめとしては効果的すぎたため良識的な貴族や警邏隊員たちさえも、侯爵の真意を測りかねていたのである。
この混乱で、侯爵に反抗心を持ち良心的な警邏隊は侯爵に忠実な警邏隊と共に仕事をこなしても、また人々を妨げる日が来るのではないか警戒していてと連携は取るもの裏切りを懸念し溝をさらに深める結果となっていた。
表向きは治安改善に貢献している侯爵の政策に、一部の隊員は疑念を抱きながらも従うしかなかった。
カイエンとレオンハルトもまた、侯爵の異常な動きに疑問を抱いていた。
次々と逮捕されていく悪事を働いていた商人や貴族たち。
確かに彼らは悪事を行っていたが、侯爵がこれほど徹底した粛清に乗り出した理由が掴めないでいた。
「侯爵が、なぜ今になってこのようなことを始めたのか」
カイエンは、執務室で届けられる報告書に目を通しながら眉間に深い皺を刻んだ。
父の行動は、これまでの冷徹な計算高さとは異なる、どこか焦燥感のようなものが感じられたのだ。
彼は、侯爵が次に誰を標的にするのかその意図を探り始める。
父の側近、あるいはデル・ルナ家の血を引く自分自身さえも危険に晒される可能性を考えずにはいられなかった。
現状、ヴェールとして活動しても暴力的な騒動から助けるくらいで、不当な税の徴収なども少なくなり活動自体も縮小してきているのだ。
不自然すぎる、何が狙いだっとヴェールとして巡回すことは欠かさない。
平民落ちした貴族や捕まって残された家族たちが、不当な暴力を受ける事が無いように気にかけていた事の他にも、救済の館に連れていかれている人達も少なからずいるのだ。
活動を無くす訳にはいかない。
治安が良くなってきているとはいっても、それは嵐の前の静けさとでもいうのか不気味で仕方がなかった。
一方、レオンハルトは、アルトから得た「救済の館」の情報と街で得た侯爵の「浄化作戦」の情報を照らし合わせていた。
彼は、侯爵が単なる治安改善のために動いているのではないと直感していたのである。
「侯爵は、自分の尻尾を切り離そうとしているのかもしれない」
レオンハルトは、そう仮説を立てた。
特に「救済の館」と関わりのある者たちが次々と捕らえられていることに注目していた。
それは、侯爵がその闇を隠蔽しようとしている証拠ではないか。
レオンハルトは、ギルドの商人たちとの接触を続け侯爵の動きの裏に隠された真実を探り続けた。
カイエンとレオンハルトは、それぞれの立場から侯爵の動きを調査し始める。
表向きは別々の目的を持つ二人であったが、彼らの目指す先は同じ「真実」へと向かい始めていたのである。
更新させて頂きました。
読んで頂いている方、有難う御座います。
少し今までとは書き方が違うかもしれませんが、
変わらず読んで頂ける方や、
新しく読んで頂ける方が一人でもいて下されば嬉しいです。
お時間を頂きました、有難う御座います。




