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第二十二話

 晩春の柔らかな陽光が降り注いでいた。

 風は心地よく、海からの潮の香りが街中に満ちている。

 しかし、港街の人達の心には、祭りの華やかさとは裏腹にラモン侯爵の圧政がもたらす重苦しい影が依然として覆いかぶさっていた。

 飢えと不安が影を落とし子供たちの遊び声も以前ほど響かなくなった。

 それでも街の片隅ではささやかながらも助け合いの精神が息づき、人々の間には、ヴェールの存在がもたらす微かな希望の光が灯り続けていた。


 侯爵邸の社交界では、祭典の成功が話題の中心となっていた。

 ラモン侯爵はこの宴会を自身の権力と富を誇示する絶好の機会と捉え、王国の貴族や高位の役人、他領の有力者たちを招き、港街の「安定と繁栄」を印象付けようと画策していた。

 この豪華絢爛な宴会の費用の一部には、王国から支給された「都市活性化政策給付金」が巧妙に流用されていることはごく一部の者しか知らない秘密だった。


 侯爵邸の大広間は天井から吊るされた巨大なシャンデリアが眩いばかりの光を放ち、磨き上げられた大理石の床にその輝きを反射させていた。

 足元からはひんやりとした空気が伝わり、壁には豪華なタペストリーが飾られ、季節の花々が生けられた銀の花瓶からは芳しい香りが漂う。

 長テーブルには山海の珍味が惜しげもなく並べられ、熟成されたワインの芳醇な香りが部屋中に満ちていた。

 遠くからは楽団の優雅な調べが聞こえ、使用人たちは皆最高級の制服に身を包み、完璧な動作で客人を迎え入れる準備を整えている。その全てが、侯爵の絶大な権力と富を誇示するための舞台装置だった。


 宴会が始まると邸内はたちまち華やかなざわめきに包まれた。

 きらびやかなドレスを纏った貴婦人たちが宝石を煌めかせながら談笑し、重厚な礼服を身につけた貴族たちが葉巻の煙を燻らせながら政治や経済について語り合う。

 楽団が奏でる優雅な音楽が、その喧騒に心地よい彩りを添えていた。


 広間の片隅では、侯爵夫人イサベラの姿が見当たらないことに一部の貴族が気づいていた。

 彼女は病弱を理由に、このような大規模な社交の場には滅多に顔を出すことはない。

 しかしその不在は、侯爵にとって常に頭の痛い問題だった。

 侯爵は自身の権威を保つため、そして侯爵家の体面を保つため、イサベラの不在を補う存在を求めていた。

 だが、まさか「預かり」の身分であるイネスが、その代わりを務めるかのように振る舞うとは、侯爵は予想だにしなかった。


 ラモン侯爵は、主役であるカイエンを伴い広間の入り口に立っていた。

 カイエンは退屈そうな表情でグラスを弄び、時折、場違いな笑みを浮かべて見せる。

 その姿は、周囲の貴族たちに「やはりドラ息子だ」という印象を植え付けるには十分だった。


 そこへ一組の貴族が近づいてきた。

 初老の男爵と、その隣に立つ着飾った若い娘だ。

 男爵は、いかにも野心家といった風情で、その目はカイエンを値踏みするように細められている。


「ラモン侯爵閣下、この度はご子息カイエン様の誕生日誠におめでとうございます。我が娘、フィオナも、カイエン様の聡明なご人柄には常々感銘を受けておりまして」


 男爵は、娘を前へ押し出すようにしながら、露骨なまでに婚約の話を持ちかけた。

 フィオナは、はにかんだようにカイエンに視線を送る。


 カイエンは男爵の言葉を聞き流すようにグラスの中のワインを揺らした。

 そしてわざとらしく大きなあくびを一つすると、フィオナの方を一瞥し興味なさげに答えた。


「ふぁあ……。聡明、ですか。いやはや、恐れ入りますな。わたくしなど、酒と女と賭け事しか興味がございませんで。お嬢様のようなお美しい方が、わたくしのような者に感銘を受けるとは、よほど目が曇っていらっしゃるのでしょうな」


 カイエンはにやけ顔でそう言い放つと、再びグラスに視線を戻した。

 その態度は、まさに世間で噂される「うつけ者」そのものだった。


 ラモン侯爵は、男爵の露骨な野心とカイエンのだらしない振る舞いに内心で舌打ちした。

 このような場で自分の息子がこれほどまでに体面を損なうとは。

 しかし、侯爵は表情一つ変えず、冷徹な笑みを浮かべたまま男爵に応じた。


「これはこれ男爵殿。ご厚意、痛み入ります。しかし、ご覧の通りこの愚息は世間知らずでございましてな。当面は、自由にさせておくのがよろしいかと」


 侯爵の言葉には、男爵の申し出を丁重に、しかし明確に拒絶する意図が込められていた。

 男爵は、侯爵の冷たい視線とカイエンの無関心な態度にこれ以上深入りしても無駄だと悟ったようだ。

 彼は引きつった笑みを浮かべながら、娘を伴ってその場を去っていった。


 男爵たちが去ると、ラモン侯爵はカイエンに冷たい視線を向けた。


「カイエン。貴様は、そこでうろちょろしているが良い。私に付きまとう必要はない」


 侯爵の言葉は周囲には聞こえないほどの小さな声だったが、その響きには明確な侮蔑が込められていた。

 カイエンは何も言わずただ軽く頭を下げた。

 侯爵は煩わしそうに顔を背け、別の貴族たちの方へと歩み去っていった。

 カイエンは、一人残された広間の隅で再び退屈そうな表情を浮かべグラスを傾けた。

 彼の背後から、周囲の貴族たちの値踏みするような視線が突き刺さるのを感じた。

 彼らは侯爵の「愚息」を嘲笑うかのように、あるいは憐れむかのように遠巻きにカイエンを見つめていた。

 父の冷酷な言葉が彼の心に重くのしかかっていた。

 しかしそれ以上に、妹がこの偽りの舞台で利用されていることへの無力感が彼の胸を締め付けていた。


 イネスは、その華やかな群衆の中にいた。

 深紅のシルクのドレスは彼女のしなやかな体つきを際立たせ、微かな香水の匂いが周囲の男たちを魅了する。

 彼女は人当たりの良い笑みを絶やさず訪れる貴族や有力者たちに丁寧に挨拶を交わし、巧みな会話術で彼らの心を開いていく。

 病弱な侯爵夫人の見舞いという表向きの口実も、彼女の「温和で人当たりの良い貴婦人」としての振る舞いを補強し周囲の貴族たちはイネスを好意的に受け入れた。


 しかしその瞳の奥ではイネスは常に情報を探っていた。

 彼女は、会話の端々から侯爵家の内部事情、侯爵の行動パターン、そしてカイエンの性格や交友関係など、侯爵家の「弱点」となりうる情報を注意深く探り入れた。

 特に、侯爵が最近自身の私兵を動かし何かを命令しているという噂や、侯爵夫人が体調を崩しがちで、邸の運営に支障をきたしているという話は彼女にとって重要な情報として頭の中に記憶されていく。

 彼女の目的は侯爵への復讐と自身の境遇からの脱却であり、そのために必要な情報を彼女は決して見逃さなかった。


 広間の奥、侯爵の傍らには悪徳商人ジェラの姿があった。

 彼は侯爵の「慈善事業」である《救済の館》の運営を任されており、侯爵の信頼を得ていた。

 ジェラは侯爵に恭しく頭を下げながら、時折、侯爵と親密な関係にある貴族や商人たちと談笑している。

 その顔には卑しい笑みが浮かんでいた。

 

 イネスは、その様子を遠巻きに観察していた。

 彼女は、ジェラが侯爵の不正の片棒を担いでいることを知っていた。

 彼らの会話の断片から、イネスは侯爵の新たな不正の糸口を掴もうとその耳を傾けた。

 侯爵がジェラに何か指示を出しているような素振りを見せるたび、イネスの瞳は鋭く光った。

 その時、侯爵がふと視線をイネスの方へ向けた。

 イネスは咄嗟に柔らかな笑みを浮かべ、何事もなかったかのように視線を逸らした。

 彼女の表情には一片の動揺も見えない。

 彼女の脳裏には、侯爵の「慈善事業」が彼の支配を揺るがす新たな糸口となる予感が閃いた。


 新興商家の三男として頭角を現しつつあるレオンハルト・フォン・ヴィンターも、この宴会に出席していた。

 彼は洗練された礼服に身を包み、その表情には常に冷静な知性が宿っている。

 侯爵との関係を築くという表向きの目的と、侯爵の動きや集まる貴族たちの間の情報を探るという裏の目的を抱いていた。

 彼は、華やかな宴会の裏に潜む腐敗の匂いを敏感に感じ取っていた。


 レオンハルトは侯爵に丁重な挨拶を交わした後、広間をゆっくりと巡った。

 彼の耳には様々な貴族たちの噂話が飛び交う。

 侯爵の「大規模改修計画」に関する不満の声、あるいは「救済の館」での不審な出来事に関する囁き。

 彼はそれらの情報を注意深く収集し、自身の情報網と照らし合わせようとしていた。


 その視線がイネスの姿を捉えた。

 彼女が貴族たちに巧みに近づき、何かを探っている様子にレオンハルトは興味を抱いた。

 イネスの立ち振る舞いは完璧な貴婦人だが、その瞳の奥にはどこか冷徹な光が宿っている。

 彼女もまた、この宴会で何かを企んでいる。そう感じ取った。


 カイエンの妹であるエレナは、兄の誕生日を祝う宴会にどこか複雑な表情を浮かべていた。

 彼女は、兄カイエンの「うつけ者」としての振る舞いを間近で見て内心憂いていた。

 なぜ兄は、このような振る舞いをしているのだろう。

 兄の真の姿は一体どこにあるのだろう。

 エレナは、兄への深い愛情と信頼を抱きながらもその将来を案じていた。


 エレナは、人ごみを避けるように広間の隅で静かに立っていた。

 彼女の瞳は、華やかな宴の光を映しながらもどこか憂いを帯びていた。

 兄カイエンの「うつけ者」としての振る舞い、そして父侯爵の冷たい視線。

 その全てが彼女の心を重くしていた。

 彼女にはまだ婚約者がおらず、それは社交界において時に狙われる隙となる。


 その時、一人の若い貴族がエレナに近づこうとしているのがレオンハルトの目に留まった。

 その貴族の顔には、露骨なほどの打算が見て取れる。

 レオンハルトは、エレナの無垢な輝きが貴族社会の醜悪な思惑に利用されることを良しとしなかった。

 彼は、その貴族よりも早くエレナの元へと静かに歩み寄った。


「お嬢様、この宴の華やかさに少々お疲れのご様子と見受けましたが、いかがでしょう」


 レオンハルトの洗練された振る舞いと、穏やかな声に、エレナは驚いて彼を振り返った。

 見慣れないしかし洗練された立ち振る舞いの青年に、彼女はわずかに戸惑った。


「あら、あなたは。ええ、確かに、この賑やかさは、わたくしには少々刺激が強すぎますわ。このような大勢の皆様の前では、どう振る舞えばよいのか、まだ慣れておりませんの」

 

 エレナは、まだ警戒を完全に解いたわけではなかったが彼の言葉にふわりと柔らかな笑みを浮かべた。

 その表情はまるで春の陽光を浴びた花が綻ぶかのように優しく、彼女の瞳にはレオンハルトの気遣いへの感謝が静かに宿っていた。

「それに、最近、お兄様が邸にいることが多くて、お母様の体調も良い日が増えたのです。先日も、お兄様と三人で夜の庭を散歩いたしましたの。月明かりの下、噴水の水音が心地よくて、とても楽しいひとときでございました。そのような機会をくださった貴方様のお言葉に、感謝いたしますわ。」

 エレナはそう付け加えると、さらに柔らかな笑みをレオンハルトに向けた。


 その時、老執事エミリオがエレナの傍に音もなく近づいてきた。

 彼の顔には、侯爵からの伝言を伝えるわずかな焦りが浮かんでいる。

 

「エレナ様、侯爵様がお呼びでございます。そろそろ、ご挨拶回りを再開なさるとのこと。お早く」

 

 エミリオの声は周囲には聞こえないほどの小さな声だったが、その響きには侯爵の意を汲む厳しさが込められていた。

 エレナは、レオンハルトに申し訳なさそうに視線を送り、小さく頷いた。

 

「では、わたくしはこれで失礼いたします。お話しできて、光栄でしたわ」

 

 エレナは、レオンハルトに会釈するとエミリオに促されるまま侯爵の元へと足早に歩み去っていった。

 彼女の背中は再び貴族としての義務へと向かうわずかな寂しさを帯びていた。

 レオンハルトはそんなエレナの後ろ姿を静かに見送った。


 侯爵は広間の中心で貴族たちと談笑していたが、エレナが近づいてくるのに気づくとその視線を向けた。

 彼の顔には、わずかな不機嫌さが浮かんでいる。

 

「遅かったな、エレナ。貴様も、いつまでそのような場所にいるつもりだ。この宴は、デル・ルナ家の体面を示す場でもあるのだぞ」

 

 侯爵の声は周囲には聞こえないほどの小さな声だったが、その響きには明確な叱責が込められていた。

 エレナは小さく肩をすくめ、申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「申し訳ございません、父上。少々、夜風に当たっておりました」

 

 エレナはそう答えると、侯爵の背後に控えるように立った。

 彼女の顔には再び貴族としての役割を演じるためのわずかな緊張感が浮かんでいた。

 侯爵は、エレナの返答に満足げに頷くと再び周囲の貴族たちへと視線を向け優雅な笑みを浮かべて挨拶を再開した。

 エレナは、その傍らで控えめに微笑みながら貴族たちとの挨拶回りに付き従い始めた。


 侯爵家の執事長エミリオは、宴会の総指揮を執りながら全ての客、特に侯爵、カイエン、イネス、そしてレオンハルトの動きに細心の注意を払っていた。

 彼の目は邸内の隅々にまで光を放ち、些細な異変も見逃さない。

 彼は、カイエンが「うつけ者」の仮面を被っていることを知る数少ない人物の一人であり、カイエンの安全と、彼が正体を露見させないように常に周囲に目を光らせていた。


 エミリオの視線は時折カイエンへと向けられた。

 彼の顔には、疲弊と、そして葛藤の色が深く刻まれている。

 エミリオは、その視線でカイエンの苦悩を無言で理解し、時に忠告を促すような意味を帯びた。


「カイエン様、少々お疲れのご様子でございますな。無理はなさいませんよう」


 エミリオは、カイエンの傍に近づき囁くような声で言った。

 その言葉には、彼の忠誠心と、主への深い気遣いが込められていた。


 カイエンは、自身の誕生日を祝う場でありながら、「うつけ者」の仮面を被り続けることに疲弊していた。

 イネスの探るような視線、レオンハルトの鋭い観察、妹エレナの心配する視線、エミリオの無言の監視、そして他の貴族たちの好奇の視線が交錯する中で、自身の二重生活の重圧と正体が露見するかもしれないという不安が彼の心の中で激しく渦巻いた。


 彼は、グラスを傾けながら周囲の会話に耳を傾けた。

 酒場の噂話として「ヴェール」の話題が上がるのを耳にし、自身の秘密の姿が社交界の話題になっていることに内心複雑な感情を抱いた。


「あの黒い稲妻、侯爵様の警備が厳しくなってからというもの、以前より姿をくらますことが多くなったな」


 とある貴族がそう呟くと、別の貴族が応じた。


「いや、噂では、あの義賊は侯爵様の『慈善事業』に手を貸しているとか。まさか、侯爵様と裏で繋がっているのでは」


 カイエンはその言葉に内心で舌打ちした。

 侯爵が自分を陥れるために、ヴェールの評判を貶めようとしている。

 そう直感した。

 彼の心には、怒りと、そしてこの偽りの生活から解放されたいという強い願望が渦巻いていた。


 広間の隅でグラスを傾けていたカイエンは、エレナが父侯爵の傍らに立つ姿を静かに見つめていた。

 彼の顔にはいつもの「うつけ者」の笑みが張り付いているが、その瞳の奥には妹への深い心配と、父への複雑な感情が渦巻いていた。

 カイエンは、グラスの中のワインを揺らしその冷たさが指先に伝わるのを感じた。

 彼の心には、この偽りの生活の重圧が一層深くのしかかっていた。


 宴会の警備には、侯爵の意に従う警邏隊員と、街の真の秩序を願う警邏隊員が混在していた。

 後者の警邏隊員たちは、侯爵の贅沢な振る舞いや不正の噂が飛び交う社交界の雰囲気に一層の不信感を募らせていた。

 彼らは、侯爵の私兵や、侯爵に与する警邏隊員たちの影に隠れ密かに情報を収集していた。

 彼らの目にはこの華やかな宴会の裏に潜む街の苦境が鮮明に映っていた。


 レオンハルトは、侯爵とエレナが並び立つ姿を広間の別の場所から冷静に観察していた。

 彼の表情には、感情の起伏はほとんど見られない。

 レオンハルトはグラスを傾けながら、侯爵とエレナの周囲に集まる貴族たちの視線に注目した。

 彼らは、侯爵家の安定を測るように、あるいは新たな権力構造を読み取ろうとするかのように二人の姿を注視している。

 レオンハルトの知性はこの場のあらゆる情報を分析しようと、静かに、しかし鋭く働いていた。


 イネスは、侯爵とエレナの様子を貴族たちとの会話の合間に、ちらりと視線を送りながら観察していた。

 彼女の唇には、微かな、しかし冷たい笑みが浮かんでいる。

 

(侯爵も、随分と体面を気にするものだ。病弱な妻の代わりに、無垢な娘を傍らに侍らせるとは。だが、その純粋さが、いずれこの邸の闇に飲み込まれることになろう。そして、あのカイエンも……)

 

 イネスの瞳の奥には、侯爵家への深い憎悪と復讐への揺るぎない決意が宿っていた。

 彼女は、エレナの純粋さやカイエンの「うつけ者」の仮面さえも自身の目的達成のための「駒」として利用できると、冷徹に算段していた。


 宴会は華やかに終わりを告げた。

 しかし、その裏ではそれぞれの思惑が交錯し新たな動きが始まろうとしていた。


 イネスは、宴会の場で貴族たちから引き出した会話の断片を繋ぎ合わせ、侯爵の弱点に関する新たな手がかりを掴んでいた。

 侯爵が最近特定の悪徳商人との間で不審な取引を行っており、その取引が侯爵夫人の病状を悪化させている、あるいは利用している可能性を示唆する情報だった。

 イネスの目には、侯爵が夫人の健康を顧みず自らの利益のために何かを企んでいるように映っていた。


 レオンハルトは、侯爵邸の内部情報や今後の動きに繋がる貴重な情報を手に入れていた。

 侯爵が、王都からの視察官に偽りの報告をしていること、そしてその報告を裏付けるための偽造書類が、邸内のどこかに保管されているという噂。

 彼は、その噂の真偽を確かめるための新たな調査計画を練り始めていた。


 カイエンは周囲の視線と自身の使命の間でさらなる葛藤を深め、自身の二重生活の重さを痛感していた。

 ヴェールとしての活動が彼の精神を蝕んでいく。

 しかし、プエルト・エスぺランサの未来のため、そして愛する人々を守るため、彼はこの重圧に耐え続ける覚悟を決めていた。

 彼の誕生日を祝う宴会は、彼にとって新たな戦いの始まりを告げるものとなった。

 港街の闇はまだ深い。

更新させて頂きました。

お時間ありがとうございます。


更新が遅くなる事が有りますが、必ず完結させますのでよろしくお願いいたします。


今回も、読んで頂き有難うございました。

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