第十二話
通気口から冷たい雪が舞い散る夜の闇へと滑り出したレオンハルトは、身を潜め息を切らして駆け抜けた。
身体は疲労の極致に達していたが、懐に隠した「密約書」の重みが彼の心を突き動かした。
侯爵の監視網が街中に張り巡らされていることは肌で感じていたが、彼の足は止まらない。
追手の足音は遠ざかったものの、それは一時的なものに過ぎない。
この凍てつく港街のどこに身を隠すべきか、そしてこの強大な証拠をどう扱うべきか、必死に思考を巡らせた。
彼の肺は氷点下の空気を吸い込み、灼けるような痛みを発した。
全身の筋肉は悲鳴を上げ、足元は何度ももつれそうになる。
数刻に及ぶ逃走は、彼の体から全ての活力を奪い去り精神の消耗もまた激しかった。
しかし、彼は止まらなかった。背後から迫る足音と、彼を捕らえようとする冷酷な意図が彼の疲弊した身体に鞭打った。
石畳を蹴り、路地裏の影から影へと移動する。
細雪が視界を遮り、冷たい空気が肺を焼いた。
雪は地面に落ちるそばから溶け、足跡はわずかに湿った黒い染みとなってすぐに消えていく。
追手の怒声が遠くから聞こえ始め、レオンハルトは再び加速した。
港街の入り組んだ路地は彼にとって見知らぬ迷路だったが、本能的に最も人目につかず、かつ逃走に適した経路を選び取る。
身を低くし、影から影へ、細い路地の屈曲を利用して追手の視界から逃れる。
時には、錆びた鉄骨を飛び越え、崩れかけた壁のわずかな隙間をすり抜け、その身をねじ込むようにして進んだ。
港特有の潮の匂いが腐敗した魚の内臓や生ゴミの悪臭と混じり合い、彼の鼻腔を刺激した。
薄暗い路地では、凍結した水たまりに足を取られそうになり思わず壁に手をついた。
その冷たい感触が、一瞬現実へと引き戻す。
私兵の一人が「逃がすな。侯爵様のご命令だ」と叫び、別の者が「あの男を捕らえろ。見つけ次第、確保だ」と怒鳴る。
追手の声がすぐ背後まで迫る。
その騒音に驚いたネズミや野良猫がゴミの山から飛び出し、足元をすり抜けて闇に消えていった。
レオンハルトは息を呑み腐敗した生ゴミと埃が混じった悪臭が漂う、廃材が積まれた狭い隙間に身を滑り込ませた。
鉄屑が皮膚を擦り、錆びた木材が軋む。
身動きが取れないほどの窮屈さに全身の筋肉が軋む。
心臓は喉元まで飛び出しそうなほど激しく脈打ち、その音だけが闇に響く。
私兵たちの足音がすぐそばで止まった。
彼らの吐く白い息が冷たい空気の中にぼんやりと見えるような錯覚に陥る。
彼は、見つかれば終わりだと直感的に悟った。
私兵の一人が舌打ちして「ちっ、どこへ行った」とつぶやくと、別の者が「この辺りにいるはずだ。散開して探せ」と命じる声が聞こえてくる。
私兵たちの顔には、侯爵の激しい追及への恐れとこの得体の知れない獲物を取り逃がすことへの焦りが滲んでいた。
彼らは乱暴にゴミの山を蹴散らし、古びた木箱をひっくり返しながら、レオンハルトの潜む場所を探し回る。
金属が擦れるような不快な音が聞こえ、私兵たちが懐中から提灯を取り出した。
その光が、闇を切り裂き彼の潜む場所へとゆっくりとしかし確実に迫ってくる。
レオンハルトは、冷や汗が背中を伝うのを感じた。
身を固くし、音を立てまいと全身に力を込める。
このままでは見つかる。
しかし、彼は動けない。
その時、遠くの路地からガアァンと金属がぶつかり合うようなけたたましい物音が響いた。
私兵たちの注意が、一瞬にしてそちらに逸れた。
その音はまるで嵐の夜に雷が落ちたかのように、港街の静寂を切り裂いた。
一人が音の出所を確かめるように問いかけた。
「今の音は何だ」
別の者が確認を促した。
「あっちだ。誰かいるのか確認しろ」
大きな音に体が反応しそうになる。
まるで、心臓が耳元に有るようにドクドクと激しい音が聞こえてくる気さえした。
必死に、声が出そうになるのをレオンハルトは抑え込んだ。
私兵たちが物音のする方へと走り去る足音が聞こえてくる、それが陽動だとレオンハルトは悟った。
偶然にしてはあまりにタイミングが良すぎる。
あの倉庫で自分を助けた「何か」が、再び現れたのだ。
彼の胸にわずかな希望の光が灯る。
あの倉庫、そして今、二度目の陽動。
誰かが自分を助けている。
だが、なぜ。その人物の正体、そして目的への疑問が、疲弊した思考の片隅で渦巻いた。
しかし、今はその疑問に答えている暇はない。
レオンハルトは、身を潜めたまま静かに廃材の隙間から這い出た。
冷たい夜風が汗で濡れたシャツを通り抜け、皮膚に刺さるような冷たさを感じる。
彼は、この好機を逃すまいと再び走り出す。
だが、疲労困憊の身体は限界に近づいていた。
膝は震え、足は鉛のように重い。
路地を抜けると、目の前に凍てついた運河が広がる。
運河の水面は鈍く光り、凍てつく風が吹き荒れていた。
向こう岸へ渡るには老朽化した木製の橋を渡るしかない。
しかし、彼の目に映ったのは橋のたもとに待ち伏せる武装した警邏隊員たちの姿だった。
完全に罠にはめられた。
一人の警邏隊員が剣を抜きながら叫んだ。
「見つけたぞ、こっちだ」
レオンハルトは咄嗟に身を翻したが背後からも別の警邏隊員たちが迫っていた。
彼は完全に包囲されていた。
逃げ場はない。
万事休すか。
彼の脳裏に、この場で「密約書」が奪われる最悪のシナリオがよぎる。
侯爵の手にだけは、決して渡してはならない。
この「密約書」は、侯爵が港街の貿易利権を独占し私腹を肥やすための偽装工作の決定的な証拠だ。
これさえあれば、侯爵の悪事を白日の下に晒しその権力を打ち砕くことができる。
彼の、そして港街の人々の未来はこの一枚の紙切れにかかっている。
彼は懐の「密約書」の重みを指先で感じながら、決死の覚悟を決めた。
たとえ捕らえられようともこれだけは守り抜く。
その瞬間、水車小屋のすぐ裏手にある古い倉庫の屋根から漆黒の影が鮮やかに舞い降りた。
冷たい雪が舞う夜空にその影はまるで一筋の稲妻のように映る。
その影が倉庫の屋根に着地したと同時に、腐朽した木製の荷揚げ台が激しい軋み音を立てて崩れ落ちた。
朽ちた木材が大地を叩き、金属の蝶番が鋭い音を立てて飛散する。それは、倉庫に積まれた大量の空樽が一斉に崩れ落ちる轟音と重なり街全体を揺るがすほどの激しい爆音となって響き渡った。
ガアァン。ガシャン。と、連続する轟音が街全体に響き渡り、警邏隊員たちは皆反射的に音の方向へと顔を向けた。
その轟音の直後、ヴェールは水車小屋の屋根の端に一瞬だけ姿を現した。
その姿は一瞬の閃光のように追手の目に焼き付いて、彼の存在に気づいた警邏隊員たちが息を呑み動揺の色を浮かべた。
その隙をレオンハルトは見逃さなかった。
彼は瞬時に「密約書」を丸め、まさに警邏隊が去ったばかりの壊れた古い水車の羽根の隙間にねじ込んだ。
その水車は長い間使われておらず、錆びて朽ちかけた木製の羽根は水流から隔絶された場所に静止していた。
羽根の奥深くにある隙間は、雨風からも巧妙に守られており密約書が濡れる心配はなかった。
そこは、簡単には見つからないが探しさえすれば見つけられる場所だ。
レオンハルトが密約書を隠すその瞬間をヴェールは屋根の上からしっかりと確認していた。
彼の冷徹な視線は、周囲の地形、警邏隊の配置、そしてレオンハルトの動きの全てを瞬時に分析していた。
この陽動は、一秒たりとも遅れてはならない。
その計算された行動には、弱者を救うヴェールとしての情と、全てを支配しようとする侯爵への明確な敵意が込められていた。
ヴェールが確認を終えると同時に、その漆黒の影は水車小屋の屋根から港の奥へと向かって高速で駆け出したのが遠目からレオンハルトの目に捉えられた。
その影はまるで闇に溶け込むかのように滑らかで、しかし尋常ならざる速度で屋根を伝い、壁を蹴り、警邏隊の視線を一斉に引きつけた。
その姿こそ、まぎれもなく「黒い稲妻」ヴェールその人だった。
ヴェールが追手の先頭に立って逃走を始めたのだ。
その影が静止した場所から複数の声が重なり合うように、しかし明確に響き渡った。
「ヴェールだ、ヴェールが出たぞ。黒い稲妻だ。奴は水車小屋の屋根の上から港の奥へと逃げた。追え」
その声は一人の男が叫んだようにも、複数の声が混じり合ったようにも聞こえ、警邏隊員たちの間で瞬く間に動揺と混乱が広がった。
「ヴェールだと」
「あの黒い稲妻か。なぜこのタイミングで」
「くそ、侯爵様はあの義賊の捕獲を最優先とされている。一部隊は港へ急行しろ。レオンハルトの追跡は残りの部隊で」
命令が飛び交い、警邏隊の包囲網は一瞬にして崩壊した。
侯爵に忠実な警邏隊員たちは、ヴェールという予期せぬ獲物の出現に戸惑い恐怖と興奮が入り混じった表情で互いに顔を見合わせた。
彼らの間では「侯爵様はヴェールの出現を何よりも恐れていたはずだ」「なぜ今、ヤツが現れた」「レオンハルトを優先すべきか、それともヴェールを」といった囁きが交わされ、指揮系統が一時的に麻痺する。
半分ほどの隊員が、声のした港の方向へと混乱しながらも駆け出していく。
その混乱と分散を、レオンハルトは見逃さなかった。
彼は、この見えない協力者がもしかしたらこの証拠の存在を知っているかもしれないという微かな期待を抱いた。
この混乱は、単なる偶然ではない。自分を助けている者達が居ると、そう確信した。
警邏隊員たちが動揺する中、レオンハルトは彼らの包囲網を突破すべく果敢に突進した。
彼は足元から響く音の意味を問いかける。
「今の音は何だ」
もはや、逃げるだけでは駄目だ。
彼は身体に残された僅かな力を振り絞り、警邏隊員の間を縫うように駆け抜ける。
剣が唸り、棍棒が空を切る。
彼は紙一重でそれらを躱し、運河沿いの細い道へと飛び出した。
凍てつく石壁に指先を擦りつけながら狭い通路を駆け抜け、視界が開けた瞬間、彼は大きく息を吐いた。
追手の足音は次第に遠ざかっていく。
港に面した仮設の指揮所で、ラモン侯爵のもとへ緊急の報告が飛び込んできた。
伝令兵は、凍える顔で慌ただしく駆け込み告げた。
「閣下、水車小屋付近にてヴェールが出現。警邏隊の一部がヴェール追跡のため、港湾部へ向かいました」
報告を聞いたラモン侯爵の顔は、驚愕から瞬く間に怒りへと変わった。
彼の眼は血走り机を激しく叩きつけた。
彼が最も警戒していた義賊が、なぜこのタイミングで現れたのか。
レオンハルトの追跡を混乱させるかのようなあまりに都合の良い出現に、侯爵の眉間に深い皺が刻まれた。
ラモンは激昂し、仮設の指揮所中に怒鳴り散らした。
「何、ヴェールだと。なぜ今この時、あの忌々しい輩が……まさか、レオンハルトと繋がっているとでもいうのか。無能どもめ、何をぼやぼやしている。レオンハルトの追跡を優先しろ。ヴェール如きに気を取られるな。だが、いや、待て。ヴェールも生かしておけぬ。港湾部の警備隊にも連絡しろ。ヴェールを捕らえろ。両方を絶対に逃がすな」
彼の指示は混乱を極め警邏隊員たちはその矛盾した命令に戸惑うばかりだった。
その場にいた警備隊の隊長の一人が、侯爵の怒鳴り声に肩を震わせ蒼白な顔で報告書を握りしめていた。
彼の指揮系統は、既に機能不全に陥りかけていた。
仮設指揮所では、ラモン侯爵の怒りが収まることなく混乱した状況に関するさらなる報告が彼を苛立たせた。
報告の度に彼の顔は怒りに歪み、握りしめた拳が小刻みに震える。
警邏隊の隊長からの報告は、もはや支離滅裂なものだった。
それでも隊長は役目を全うしようと報告した。
「レオンハルトは水車の近くで姿を消しました。しかし、その直前、奇妙な音が聞こえ、一部の隊員が……」
それを聞いたラモンはやはり罵声を浴びせる。
「言い訳は聞かぬ。あの男が、単独でここまで逃げ延びたと言うのか。保管庫の件といい、貴様らの報告はまるで要領を得ぬ」
彼の顔は紅潮し、怒りで血管が浮き出ている。
机を激しく叩く音が響き、その場にいる全員が身をすくめた。
ラモンは血走った目で問い詰める。
「ヴェールという義賊めいた輩に加え、今度は内部にも裏切り者がいるとでも言うのか。それとも、あの小賢しい商人が、私兵や警邏隊を欺くほどの腕を持っていたとでも」
ラモン・デル・ルナの猜疑心は、今や彼自身の忠実な部下たちにも向けられていた。
一部の警邏隊員が不可解な行動を取りレオンハルトの逃走を間接的に助けているという報告は、彼の心を深く蝕んでいた。
それにより、私兵たちの間でも互いへの不信感が広がることになり指揮系統が乱れることを恐れた。
ラモン侯爵の絶対的な支配に、見えない亀裂が走るかのようだった。
ラモンは凍てつくように冷たい声で命じた。
「何としてでも、レオンハルトを捕らえろ。そして、彼を助けた裏切り者どもを洗い出せ」
彼の脳裏には、裏切り者たちを軽率に切り捨てることのデメリットが瞬時に浮かんだ。
職を解けば街を出て、遠方で我がデル・ルナ家の不都合な真実をまき散らすかもしれぬ。
解雇した後に、暗殺や監禁などしても其れが続けば不信感が広がりま、また別の疑惑が流れる。
事故に見せかけて排除するにも、弔慰金や補償金がかさむ。
我がデル・ルナ家の財政に響けば、それこそ無駄な出費だ。その金があればさらに多くの私兵を雇い、街を完全に掌握できるだろうに。
ラモンは冷酷に言い放った。
「まずは隔離し、監視を厳重にしろ。そして、奴らの弱みを握り二度と口を開けぬよう、徹底的に調べるのだ。一人残らず、私に忠誠を誓う者以外は、決して信用するな。疑わしきは罰し、排除するまでだ」
彼の支配体制に、微かながらも亀裂が入り始めていることを彼はまだ完全には理解していなかった。
港街の冬の夜は一層の厳しさを増していくのだった。
冷たい風が指揮所の隙間から吹き込み、彼の焦燥感をさらに煽った。
運河の対岸、屋根の上に身を潜めていたヴェールはレオンハルトの動きを静かに見守っていた。
凍えるような風が彼の漆黒のローブを揺らす。
彼が水車の羽根の隙間に何かをねじ込んだ瞬間を、ヴェールは高い位置から見逃さなかった。
侯爵の追跡が激化する中であの「密約書」を無事に回収することこそが、今、ヴェールの最優先事項だった。
レオンハルトが突破した警邏隊員の中には、ヴェールの意図を察し、あえて動きを鈍らせたり、わざとらしく別の方向へ注意を逸らしたりする者がいた。
彼らは侯爵の圧政に苦しむ港の人々の一人であり、ヴェールの行動にかすかな希望を見出していたのだ。
正義の心を持つ彼らのささやかな抵抗が、ヴェールの活動を助ける。
彼らの僅かな逡巡や、視線の動き、あるいは不自然な体の向き一つ一つがヴェールにとっては全て明確な協力の合図だった。
レオンハルトが運河沿いの道を駆けていく姿を追うように、ヴェールは屋根の上を跳んだ。
冷たい風がローブを揺らし、雪が顔に当たるが、彼の視線は揺るがない。
彼の動きはまるで影絵のようであり、雪明かりに照らされながらも、その姿は決して捉えられない。
彼が水車の場所へ辿り着くと、そこはすでに私兵たちが捜索を終え次の場所へと移動した後だった。
凍てつく水車の羽根は雪と氷に覆われ、回収は困難を極めるかと思われた。
しかし、ヴェールは素早くそして慎重に羽根の隙間に手を伸ばし、丸められた「密約書」を回収した。
冷たい羊皮紙が彼の指先で確かな重みを持つ。
それは、侯爵の不正を暴くための決定的な足がかりとなるものだった。
その瞬間、ヴェールの胸に確かな手応えが宿った。
港街の夜の闇は、一層の深まりを見せていた。
冷たい風が吹き荒れ雪が舞う中、侯爵の支配にわずかながらも亀裂が入り始めていた。
レオンハルトとヴェール。
二つの異なる影が交錯し、港街の命運を懸けた静かな共闘関係が芽生えたのだ。
彼らは言葉を交わすことなく、しかし互いの存在を深く認識し、共通の目的を持つことを無言で理解し合った。
それは、見えない糸で結ばれたかのような確かな連帯感だった。
レオンハルトは、凍える体を震わせながらも自身の逃走が単なる偶然の産物ではないことを強く感じていた。
あの倉庫での陽動、水車での警邏隊員の不自然な動き、そしてあの「密約書」が無事に誰かの手に渡ったであろうという微かな希望。
全てが、彼を助けようとする「見えない手」の存在を物語っていた。
それは、ヴェールという名の義賊の仕業であると同時に、侯爵の圧政に苦しむ、匿名の正義の心を持つ警邏隊員たちの密かな抵抗の現れでもあった。
彼の胸にはこれまでの孤独な戦いでは感じられなかった、温かい希望の灯がともる。
一人ではない。
この港街には、確かに真の正義を信じ行動する人々がいる。
その確信が、彼の疲弊した心に新たな活力を与えた。
侯爵を打倒するという決意は、もはや彼一人のものではなかった。
一方、ヴェールもまた屋根の上から街を見下ろしながら、自身の行動が港街の奥底に眠る港の人々の希望を揺り動かしていることを感じていた。
侯爵の指示に忠実に従う者、あるいは彼の意図を察して自ら動く警邏隊員たち。
それは、鉄壁の支配が内側から少しずつ崩壊し始めている証だった。
彼は、自身の「うつけ者」の仮面の下で重い責任と、そして未来への確かな予感を抱いていた。
この「見えない繋がり」を育み侯爵を完全に打倒するためには、さらなる知恵と大胆さが必要となる。
彼は手に残る羊皮紙の確かな感触を確かめるように、ローブの中で「密約書」を握りしめた。
真冬の夜空に、新たな戦いの予感がこれまでになく確実に高まっていた。
その嵐は、街の歴史そのものを塗り替える大きなうねりの始まりとなるだろう。
港街の闇の奥で、運命の歯車が軋みを上げ止められない変革の時が刻々と近づいているかのようだった。
しかし、この戦いはもはや孤独なものではない。
見えない影の共闘が、今、確かな形を取り始めていた。
お時間有難う御座いました。
今回は、本当にレオンハルトの逃亡劇とヴェールに「密約書」を渡すことで話がそんなに進んでいなかったですが、お付き合い頂き有難う御座いました。
読んで頂き有難う御座いました。




