第2章:ダブルメイドの波状攻撃!
昨夜の悪夢のような(ある意味、天国のような?)挟み撃ち事件から一夜明け、俺の精神はギリギリの状態だった。
あの後、どうやってあの二人を部屋から追い出したのか、正直よく覚えていない。
気づけば朝で、俺はなぜか自分のベッドではなく、執務室の長椅子の上で凍えながら目覚めたのだ。
(くそっ、あのエロメイドどもめ……! こうなったら、力づくでも追い出してやる!)
俺は悪徳領主として、いや、一人の男としての尊厳を取り戻すため、ある作戦を決行することにした。
名付けて「エロメイド体力消耗・泣いてサヨナラ大作戦」だ!
◇
「今日から貴様らには特別訓練を受けてもらう! 俺直々の地獄の特訓だ! ついてこれなければ即刻クビだ、覚悟しろ!」
城の訓練場にフィオナとリリアを呼び出し、俺は可能な限りの悪徳領主ヅラでそう宣言した。
心の中ではニヤリと笑っている。
二人を肉体的に疲れ果てさせ、メイド業が務まらないほど消耗させてしまえば、国も諦めて彼女たちを連れ帰るだろう、という完璧な作戦だ。
しかし、俺の心臓が凍りついたのはその直後だった。
フィオナは、なぜか体にぴったりとフィットし、体のライン……特に胸と腰が強調されまくった露出度高めの「運動メイド」服というとんでもない格好をしていた。
淡い水色の生地はまるで彼女の体に吸い付くように密着し、腰のくびれから伸びる脚線美は、俺の視線を自動的に誘導する罠のようだ。
胸元は普通のメイド服よりも大きく開いており、鎖骨と、その下のなだらかな起伏がはっきりと確認できる。
光沢のある素材は彼女の肌の白さを際立たせ、汗をかいたらどうなるのかと考えただけで頭がクラクラしてきた。
「レオン様、わたくしが直々に『正しいフォーム』をご指導いたしますわ。手取り足取り、優しく教えて差し上げますので、ご安心くださいませ」
フィオナは妖艶な笑みを浮かべて俺に迫ってくる。
フィオナが近づくにつれ、バラの香りが俺の鼻孔をくすぐった。
この距離では、彼女の肌の質感さえも見て取れる。
滑らかで瑞々しく、まるで上質な磁器のようだ。
彼女の指が俺の腕に触れると、電流が走ったような衝撃が走る。
さらに太ももに触れ、「姿勢を正しましょう」と言いながら背中に回るたびに、俺の心臓は早鐘を打ち、顔からは火を噴きそうになる。
「ち、ちがう! 俺が貴様らを指導するんだ! さっさと走り込み千周! 腕立て伏せ三千回! 腹筋五千回だ!」
俺はフィオナの魔の手から逃れるように叫ぶ。
その声が異様に裏返っているのに気づき、さらに恥ずかしさが倍増した。
一方のリリアは、「はーい! がんばりましゅ!」と元気よく返事をしたものの、運動用の短いスカートと、なぜか胸元がやけに緩いシャツという、これまた別の意味で目に毒な格好だ。
若草色の運動着は彼女の愛らしさを引き立て、スカートの丈の短さは彼女の健康的な太ももを惜しげもなく露わにしていた。
シャツの第一ボタンは外れていて、少し前かがみになるだけで危険なことになりそうな予感しかない。
「まずは準備運動からですわね。レオン様、わたくしに合わせてくださいまし」
フィオナがしなやかな体で屈伸運動を始めると、そのたびに豊満な胸がプルンプルンと揺れる。
朝日に照らされた彼女の肌は、まるで上質な絹のように輝いていた。
いかん、見てしまう!
視線をそらそうとするも、体は正直に反応してしまう。
「わ、私もやります!」
リリアも真似して屈伸するが、案の定バランスを崩して派手に転倒!
短いスカートがまくれ上がり、昨日見たのと同じ、純白のフリル付きパンツが再び俺の眼前に……!
白いレースのフリルが朝日に透けて、その下の柔らかそうな肌の色が透けて見える。
頭の中が真っ白になり、熱い何かが鼻から噴き出そうになる。
「ぐはぁっ! またか!」
俺はまたもや鼻血を堪えきれず、派手に噴き出した。
「きゃっ! レオン様、大丈夫ですか!?」
リリアが涙目で駆け寄ってくるが、その揺れる胸元がまた俺の視界を直撃する。
彼女が近づくにつれて、ミルクと甘いクッキーのような香りが漂ってきて、さらに俺の理性に追い打ちをかける。
「だ、大丈夫だ、問題ない……(白目)」
その後も地獄は続いた。
フィオナは腕立て伏せの正しいフォームを教えるという名目で、俺の下に潜り込み、「背中をまっすぐに」と胸で俺の背中を支えてくる。
その柔らかさと温かさに、俺の腕は震えてついに崩れ落ちた。
リリアは縄跳びで自分の足にもつれて転び、開脚状態で俺の足元にダイブ。
「きゃっ! すみませーん!」
そのたびにチラチラと見える白い太ももや下着に、俺の精神はゴリゴリと削られていく。
目のやり場に困り、天井を見つめるものの、それでも視界の隅にリリアの姿が入ってくる。
極めつけはストレッチだった。
フィオナが「レオン様、もっと深く体を倒しませんと」と俺の背中に密着し、柔らかいものを押し付けてくる。
彼女の吐息が耳元にかかり、甘い声で「ゆっくり、深く呼吸して……」と囁かれると、全身が熱くなる。
そしてリリアも「私もお手伝いします!」と前方から俺の足首を掴もうとして、またもやバランスを崩し、俺の上に覆いかぶさってきた!
結果、俺はフィオナの官能的な体とリリアの無邪気な柔らかさに見事にサンドイッチされる羽目に!
二人の甘い匂いと体温に包まれ、右からはバラの香り、左からはミルクの香り。
正面からはリリアの潤んだ瞳、背後からはフィオナの熱い吐息。
頭がクラクラし、全身の血液が一斉に顔に集中する感覚。
「も、もう……勘弁してくれ……」
俺は心の中で絶叫した。
この状況からどう逃げ出せばいいのか、もはや考える余裕もない。
遠くでリカルドが「……レオン様、本日も絶好調(に翻弄されて)ですな」と冷静に何かを記録している姿が、やけに憎たらしかった。
あいつ、確実に楽しんでいやがる!
結局、疲労困ぱいしたのは俺の方だけで、二人のメイドは汗一つかかずに涼しい顔をしている。
フィオナは「今日はよい運動になりましたわね」と満足げに微笑み、リリアは「明日もがんばりましょうね!」と無邪気に笑顔を振りまく。
作戦は無残にも失敗に終わったのだった。
太陽は高く昇り、暑さが増してきた訓練場で、俺はぐったりと地面に横たわった。
「どうしてこうなった……」
遠くでリカルドが「第二の作戦、完全失敗」と書き留める音だけが、虚しく響いていた。
◇
その夜。
俺は新たな作戦を思いついた。名付けて「酔わせてポロリ・自爆サヨナラ大作戦」だ!
「今夜は無礼講だ! 貴様らも飲め!」
俺は晩餐の席で、フィオナとリリアに高級ワインを強引に勧めた。
二人を酔いつぶれさせ、何かしらの失態を演じさせれば、それを理由に追い出せるだろうという魂胆だ。
フィオナは「まあ、レオン様がお注ぎくださるお酒なら、喜んでいただきますわ」と、挑戦的とも言える妖艶な微笑みを浮かべた。
そして、俺の手から杯を受け取る際に、わざとらしく俺の指に自分の指を絡ませてくる。
その刹那の感触に、俺の心臓がまたしてもドキリと跳ねる。
こ、こいつ、絶対わざとだ!
「わーい、お酒だー!」
一方のリリアは、そんな計算など微塵も感じさせない無邪気さで、出されたワインをごくごくと飲み始めた。
あっという間に顔を真っ赤にしたリリアは、「レオンしゃま~、なんだか、あたまがふわふわしましゅ~」と呂律の回らない口調で、俺の腕にぐにゃりと寄りかかってきた。
その拍子に、リリアのメイド服の胸元のボタンが一つ、ぷちんと音を立てて弾け飛んだ!
「なっ……!?」
俺の目の前には、リリアの柔らかな谷間が……!
白い肌が惜しげもなく晒され、俺の視線はそこに釘付けになる。
「うへへ~、レオンしゃま~」
リリアは完全に酔っ払って、俺の腕にすりすりと顔を押し付けてくる。
その無防備さと、時折チラチラと見える胸元に、俺は生きた心地がしなかった。
結局、フィオナは顔色一つ変えずに優雅にワインを嗜み続け、リリアは早々に俺の膝の上で寝息を立て始めた。
そして俺自身は、フィオナの色香とリリアの無防備な姿に当てられて、完全に酔っ払ってしまった。
(だ、ダメだ……このままでは俺の理性が……!)
ふらつく足取りでなんとか自室に戻ると、そこには信じられない光景が広がっていた。
なぜか俺のキングサイズのベッドの真ん中で、リリアが「すぴー、すぴー」と幸せそうな寝息を立てて眠っているではないか!
(くそっ、部屋を間違えたな、あのドジメイド!)
そして、そんな俺の絶望をさらに加速させるように、フィオナがゆったりと近づいてきた。
その身にまとっているのは、肌が透けて見えそうなレースのバスローブ!
「あら、レオン様。ずいぶんとお困りのご様子ですわね。よろしければ、わたくしが今宵も『優しく介抱』して差し上げましょうか?」
フィオナは、舌なめずりでもしそうな妖しい笑みを浮かべて、ゆっくりと俺に近づいてくる。
前門の酔いどれドジっ娘、後門の誘惑プロメイド。
今宵もまた、俺の純情と貞操は、風前の灯火なのである。
ああ、誰か助けてくれ……マジで。