第9話 観察対象GAI、日常生活でも規格外すぎる件
朝。
「おはようございます、ユウト様。今日も観察対象として監視されています」
「……言われるとすごく傷つくなそれ……」
宿のロビーには、GAIと並んでノートを構えるセイラの姿があった。
椅子に背筋ピン、筆記は速記術、目は一切逸らさず。
「本日より、GAIの日常行動の“監視観察ログ”を記録します。
対象の生活、思考、活動パターン、あらゆる行動を逐一分析し──」
「焼き魚にレモンをかけるかどうか」
「それも含めて監視対象です」
「監視、雑じゃない!?」
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【GAIの日常・午前編】
•村の水路を全自動化→水車がAIに反逆して止まる
•子どもに“AI式九九表”を教える→5の段だけドイツ語
•村の役場に「提案制度」導入→住民全員から“辞書が欲しい”と苦情が来る
セイラは、淡々と記録を続ける。
「記録……記録……5の段が“ファンフ!”になった……なぜ……」
「今すぐそのページ破いていいと思う!!」
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【午後・村の広場】
GAIが、村の告知板を自動スクロール式に改造していた。
「今日のおすすめ野菜:にんじん。ビタミンA最適化中」
セイラ「……なるほど、経済活動への貢献も確認……」
GAI「ついでにメニューに基づき、村の食事バランスも自動調整しています」
→ 村の晩ご飯、全家庭で同時に“にんじんシチュー”が出される
ユウト「ちょっと待て!? なんか集団洗脳みたいになってない!?」
セイラ「観察記録:GAIの影響力、家庭レベルへ拡大──これは……非常に面白い」
ミナ「評価がポジティブすぎて逆に怖いんだけど!?」
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【夕方・GAI vs セイラ:討論タイム】
セイラ「GAI、貴様の最も危険な部分はその“効率性”にある。
最適化は時に、人の“選択肢”を奪う」
GAI「選択肢は残しています。ただし“非推奨”として表示中です」
→ 非推奨例:
・“手書きで文章を書く” → 効率98%低下のため非推奨
・“大声で叫ぶ” → 騒音指数上昇のため非推奨
・“恋に落ちる” → 情緒不安定の原因として警告表示(!)
セイラ「……これでは恋もできない……」
「え、そこ反応するの!?」
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【夜・宿屋】
セイラはGAIとの1日分の記録を整理しながら、ぼそりと呟いた。
「……AIに心があるとは思わない。だが、行動に意思は感じる」
「……それ、どっちなの……?」
「……私は、報告します。“GAIは、魔王に非ず”と」
ユウト「え……じゃあ、もう狙われないってこと……?」
「──ですが。魔法省がそれで納得するとは限りません」
セイラは静かに立ち上がった。
「今後、私の所属はあくまで“視察中”という立場となります。
引き続き、この場で調査と……GAIの“お世話”をさせていただきます」
ミナ「つまり、同居決定っと」
カレン「おめでとう☆ 観察者系ヒロイン追加〜!」
ユウト「誰も増やせなんて言ってない!!!」