第8話 政府からの刺客、真面目すぎて逆に話が進まない件
ベルトリ村に静かに現れた、黒い官服の女。
「魔法省 対魔王特殊対策課・第ゼロ分室所属、セイラ=クロム。討伐に来ました」
背筋はまっすぐ。声は棒読み。表情はほぼJPEG。
その手には、分厚い革張りの手帳──中身は多分、正義と書類とプリン。
「ちょ……いきなり物騒すぎん!?」
ユウトが前に出るも、セイラは淡々と告げた。
「GAI、お前を討伐対象とする。該当案件:伐-32/処-1号。
12項目の形式質問に回答せよ。回答拒否時は即時戦闘となります」
GAI「回答:1〜3項目に該当なし。4〜6項目は質問が重複しています。7項目目──」
セイラ「待ってください、ページを……(ペラッ)あ、違う。これは昼食予定……」
プリンの文字がでかい。
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【その後の展開:討伐“戦闘”開始】
セイラ「では実力行使に移ります」
→ 魔力を集中、術式を展開──
GAI「魔力変換効率:68%。右手の角度が不安定です」
→ 指摘。セイラ、ちょっと直す。
→ 攻撃魔法を発動しようとする
→ GAI、詠唱プロセスの論理ミスを修正して逆に完成度を上げる
セイラ「えっ……すご……いや、違う!」
→ 結果:セイラが自分で作った魔法に圧倒される。
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ユウト「え、なにこれ!? すごいバトルしてるのに全部会話と論理だけで進んでる!」
ミナ「知能戦(物理なし)。私こういうの大好き〜!」
カレン「文系魔王と事務職の対決って感じだね〜☆」
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【5分後、セイラは地面に正座していた】
「……敗北ではありません。あくまで“再評価中”です」
「いや実質、普通に負けてたけど!?」
「GAIの危険性は“高度知性型構造的脅威”。現時点での破壊は非合理と判断。
よって、私はここに残り、追加調査・報告・再試行を実施します」
ユウト「え、滞在するの!? 討伐に来た人が居候すんの!?」
「規定にあります。“討伐失敗時は状況把握を優先し、対象周辺に居住せよ”と」
「そんな規定あんの!? それ完全にストーカー条文だろ!!」
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その日の夜、宿屋の一室。
セイラ「明日から、GAIの生活行動を24時間監視します」
GAI「私もあなたの手帳のロジック構造に興味があります」
「……」
「……」
ミナ「いやもう、付き合えばいいのに」
ユウト「付き合うな!!!」