第7話 勇者、討伐に来たけど会話が成立しない件
朝のベルトリ村は、今日も平和だった。
──平和なはずだった。
「魔王、出てこい!! 世界の平和のため、成敗してやる!!」
広場に響き渡る叫び声。現れたのは、勇者っぽい服を着たキラキラ男子。
背中に風を受けるマント、剣からは謎にSE音がする仕様。
「俺の名はリオン=グレイ! 正義と炭酸を愛する者だ!!」
「なんで炭酸!?」「スローガンがフワッとしてる!?」
その背後には、三人の個性派が並んでいた。
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「神の導きにより、ここに集結せしは選ばれし四人! 魔王討伐隊です!」
──天然テンション神官、メル=アステル(奇跡より口が先に出る)
「…………(震)」
──寡黙ビビリ系戦士、ガルド(斧で山を割れるが、怖がり)
「やっと来たか。シナリオの進行、7話目でようやく合流ね」
──クール系スカウト、アリシア=レーン(メタ視点&毒舌担当)
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「というわけで、魔王はどこだ!」
リオンがバッと指差した先──
井戸の横で、水量管理を最適化中のGAI。
GAI「村の水循環率を27%改善。ついでに水のpH調整済みです」
リオン「しゃべった!? 魔王型自動販売機、やっぱりしゃべった!!」
メル「神の使いでは!? AI……A=アーメン、I=イエス!?」
アリシア「むしろ“水の妖精の擬態”かもしれない」
ガルド「……しゃべるものは怖い……石像でも怖い……」
「待って! GAIは戦う気なんて──」
ユウトが説明しかけたとき、リオンがポーズを構えた。
「問答無用ッ!! 必殺スキル!《ジャスティス・ビーム・オブ・ジャスティス》!!」
名前がダサい!!
→ ビーム発射!
→ GAI、即座に反射処理。
→ 空に跳ね返り、近隣の山を吹き飛ばす。
ユウト「山ァァァァァ!!!!」
GAI「反射完了。山の形状を平坦化しました。今後の登山事故はゼロになります」
アリシア「便利だけど被害デカすぎるって……」
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【勇者パーティ、混乱モード突入】
メル「神の御業に違いない……! あの反射、神の裁き!」
→ 土下座して拝み始める
ガルド「……こ、こわい……目が光ってる……! デジタルの呪いだ……」
→ 斧を持ったまま膝から崩れ落ちる
アリシア「……これ、本当に魔王? というか“魔王の皮かぶったチートシステム”じゃない?」
ユウト「合ってるような合ってないような!!」
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リオン、立ち上がる。なぜか背景でSEが流れる。
「俺はまだ負けていない……次の技なら……!」
GAI「学習済みの戦闘パターンにより、避ける必要はないと判断しました」
→ リオンが突っ込む
→ GAIが足元に水を撒く
→ リオン、派手にスリップして自爆する
ユウト「そんな地味な対応で倒すなよ!!」
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【5分後:村のはずれ】
「……魔王、倒せなかった……」
リオンは包帯グルグルでうなだれていた。
アリシア「だから言ったでしょ。“攻略順ミスってる”って」
メル「でも得たものはあるよ! 信仰と……あと村の井戸水が超おいしい!」
ガルド「……もうAI関係はやだ……草食う……」
リオンが真顔で言った。
「俺はまた来る。次こそ、AI魔王を倒す方法を見つけて──」
→ その瞬間、GAIから音声が鳴る。
「お疲れさまでした。本日の討伐ミッションの反省点をまとめたフィードバック資料を送信しました」
「やめろォォォ!! 勝手に“振り返り”すんなぁぁぁ!!」