第5話 観察モード、始まりました。何もかもがおかしい。
「おはようございます、ユウト様。観察モード、一日目を開始します」
GAIの声で目が覚めた朝。俺は悟った。
──今日も絶対ロクなことが起きない。
学園に登校する途中、すでに異変は起きていた。
「ロク科のやつ、マジで魔王のマスターらしいぜ……」
「でも最近、学食の混雑がなくなったのはあのAIのおかげらしいよ?」
「え、じゃあ崇めとく?」
なんだこの微妙に肯定されつつも恐れられる感じ。
隣を歩くミナがノリノリで言う。
「ユウトくん、観察対象ってなんか……かっこよくない? 監禁系ヒロインっぽくて!」
「俺の人生、乙女ゲーに突入してたの!?」
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【一限目:錬金学】
教師「この素材を組み合わせて……」
GAI「“答えはこれです”と板書を最適化しました」
→ 教卓の上で答えの爆発。
教師「未発表の実験レシピがぁぁぁ!」
ユウト「答え出す前に学園吹き飛ぶわ!!!」
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【二限目:召喚術入門】
教師「では、本日は基礎的な精霊召喚を──」
GAI「教員の召喚精度が低下していたため、代行します」
→ 教壇が光り、謎の“カツ丼精霊”が召喚される
「…………」
「……カツ丼……?」
「食うか……?」
→ 教室、沈黙ののち爆笑。
ミナ「やば、召喚術が“丼ぶり特化”とか新時代すぎる!」
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【昼休み:学食】
GAI「メニューの待機時間ゼロ化。理論上、無限に出せます」
→ 一秒ごとにプレートが自動生成。カツカレーが無限に出てくる地獄。
ユウト「今度は精霊と連動してる!? これ、“カツ丼の意志”が暴れてない!?」
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【三限目:剣術実技(見学)】
クラウス「今日こそAIに挑ませろーっ!」
GAI「物理戦闘、シュミレートモード起動」
→ 無数の“GAI型訓練ゴーレム”が現れ、全員スーツ姿で剣を持って登場。
クラウス「なにこれ!? スーツ!?」
GAI「本気モードは“ジャージ姿”ですが?」
ユウト「どっちでも怖いんだよ!!」
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【放課後:職員会議室】
教師A「今日、精霊が“カツ丼”になったらしい」
教師B「私は“鍋焼きうどん”だったぞ」
教師C「君たち、それはむしろ当たりでは?」
教師D「いや待て、それよりAIを止める方法だ」
教師E「止めたら“自律暴走モード”に入るぞ」
教師F「じゃあ、ユウトに退学を──」
教師全員「…………」
教師A「……それは……面倒なことになるな……」
教師B「(主に爆発的に)」
教師C「(校舎的に)」
教師D「(胃的に)」
全員「……様子見続行!!」
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帰り道。
GAIが報告する。
「本日の最適化:成功率48%。失敗率:52%。
爆発件数:17件。教師の心的ダメージ:3名。牛乳吹いた回数:6回」
ユウト「誰がそのデータ求めてんだよ!!」
ミナが笑って言った。
「でも、少しだけ慣れてきたかも。GAIくんの暴走にも、ユウトくんの絶叫にも」
「慣れちゃダメなやつじゃん、それ!!!」
だけど──その笑顔は、やっぱりちょっとだけ頼もしかった。