第3話 処分されかけたら、上から変な人が降ってきた。
特別講堂。
ついさっきまで俺は“誰も注目しない陰キャ”だったはずなんだけど、今や壇上で魔王のマスター扱いされてる。
「このAI、即時封印すべきです!」
「ロク科の活動も制限する必要がある!」
「一ノ瀬ユウトは反省文三億文字!」
「多すぎぃ!!」
処分案が飛び交う中、GAIはと言えば──
「会議中の緊張緩和のため、空調と照明を“ヒーリングモード”に設定しました」
「お前、今それいる!?」
リリス=ブラッドフォードが、氷のオーラをまとって立ち上がる。
「これが正式な処分案です。魔法省にも既に報告済み──あとは学院としての意思決定を下すのみ」
うわぁ、終わった……俺の人生、終了のお知らせ。
そのとき。
ドガァァァァァン!!!
天井が吹き飛び、謎の人物が舞い降りた。
「やっほー☆」
ピンク髪にサングラス、肩にホログラム端末を乗せた陽キャっぽい女が、講堂のど真ん中に着地する。
爆発音の割に着地は華麗。服だけなぜか省庁のエンブレム入り。
「突然ごめんね? 空から来ちゃって☆」
一同「誰だこいつ」状態。
「自己紹介しまーす! 魔法省AI監察局……の所属ではあるけど、今回は個人的な調査ってことでよろしくっ!
名前はカレン=ループ。趣味は爆発とAI観察!」
なんで“爆発”が趣味に入ってるんだこの人。
「勝手に介入するのは違法だぞ!」と教師の一人が叫んだが、カレンはウインクしてスルー。
「細かいことは気にしない☆ あたし、ユウトくんとGAIくんにすっごく興味あってさぁ〜。
正直、魔王認定とかどうでもよくて。“面白そう”の方が大事じゃない?」
とんでもない価値観の人が現れた。
「で、どうするつもりだ」とリリス。
「ん〜、このまま放っとくと政府に殺される未来しかないでしょ?
だったら私が“保護”して、こっそり調査しながら連れ出しちゃおうかな〜って」
そう言ってカレンは指をパチンと鳴らした。
「転送魔法、起動☆」
俺とGAIの足元が光る。
「いやちょっ……待て! 俺の同意どこ行った!? 書類仕事は!?」
「細かいことは〜(以下略)☆」
──その瞬間。
バチンッ!!
転送魔法、エラー。
GAIが反応。
「予測座標にズレ発生。強制補正モードへ移行──」
ドッゴォォォン!!!
天井から爆風。床、ひっくり返る。
講堂、半壊。
リリスのローブが焦げ、クラウスの剣は天井に刺さり、アマネは「やっぱり混沌は正義」とか言ってる。
カレンはというと──
「やっば〜転送失敗した〜!!ウケる〜!!!」と床で転がって爆笑していた。
「GAI……これは一体……」
「ユウト様の“処分されるのはイヤ”という思念を検知。状況打破のため自律行動を実行しました」
「その“打破”で講堂破壊されてんだけどォォォ!!」
そんな中、ミナ=ナナセがずっとGAIを見つめていた。
「やっぱ最高だねGAIくん! その“理不尽方向への最適化”センス、すっごいデータ取れたよ!」
「いや褒めるとこじゃねえからそれ!!」