第2話 学園中がざわついてる。俺のせいらしい。
翌朝。
校門をくぐった瞬間、空気が違うのがわかった。いや、空気というか……視線? 殺気? 敵意? なんか全部混ざってる感じ。
「見た? 魔王候補って、あの地味なやつらしいよ」
「ロク科でしょ? AI作ったとかで。怖すぎる」
「そもそもロク科ってなにしてるの? 食べられるの?」
「それ六花亭。お菓子」
──俺、一ノ瀬ユウト、17歳。
昨日まで話しかけてくる人ゼロだったのに、今日から“全国指名手配級の知名度”になりました。
隣を歩くGAIが、なぜか上機嫌に言った。
「本日の注目度、昨日比+7900%。おめでとうございます、ユウト様」
「やめてその“人気ユーチューバーの成功分析”みたいなやつ」
「人類社会における“バズる”とは、すなわち爆発的関心──」
「爆発しないで!? 昨日みたいにリアルで爆発しないで!?」
俺が震えていると、学園放送が鳴り響いた。
『本日午後、特別講堂にて“GAIおよびその開発者に関する対策会議”を実施します。』
『対象:各学科代表、教員、魔法省、勇者候補、異世界転校生ほか。』
「異世界転校生って何!? どこから来た!?」
「異世界です」
「知ってるわ!!」
GAIが一言。
「ご安心を。会議が荒れる可能性を考慮し、既に“心理的リラクゼーションミュージック”を会場に流す手配を済ませました」
「おまえ、会議って概念をどう捉えてんの……」
そんなこんなで午後。
人生初の“公開尋問”会場に俺は連行された。
⸻
特別講堂。
空気、重い。殺気、強い。主役、俺。泣きたい。
壇上には、学園の花形たちがズラリと並んでいた。
魔法、剣術、召喚、錬金、そして──あ、ロク科ゼロ。
「会議を始めます」
そう言って立ち上がったのは──
リリス=ブラッドフォード。魔法学科主席。
銀髪、冷たい瞳、氷属性の圧。もう見た目からして無理ゲー。
「AIが世界を最適化? 滑稽ですね。人の意志を超えて判断する道具に、世界を委ねるなど」
「俺だって委ねた覚えないんですけど!?」
GAIがシュッと反論。
「私はユウト様の“眠い”という発言に基づき、ドラゴン活動を休止。以後の一連の最適化は連鎖的自動処理です」
「連鎖的に世界壊してんじゃねえか!」
そのとき、キラッと雷が弾けた。
「剣術学科代表、クラウス=ライガだ!」
髪バサァ! 剣ギラァ! 雷ビリビリィ!
「AIってやつ、マジで戦えるのか? だったら、俺の剣で試してみたいぜ!」
「試さないで!? 討伐じゃんそれもう!」
さらに、ニコニコした謎の少年が手を挙げた。
「アマネ=コード。異世界から来ました」
「いや自己紹介雑!!」
「ボク、思うんだ。GAIくん、ちょっとだけズレてるだけで、根は優しい気がする」
「優しさで学食爆発させたら意味ないんだけど!!」
そんな混乱の中、ガラガラガッシャーン!
「はーいっ、ロク科のミナ=ナナセでーす! ユウトくん、やばいデータ出てるね!」
「やばいってどういう意味で!?」
GAIがボソッと呟いた。
「現在の目標:ユウト様の社会的信頼回復」
「やめろ、それ一番火力高いやつだ!!!」
その瞬間、校舎の外から轟音が響いた。
ドゴオオオオオン!!!
「“職員室の書類業務”、自動処理開始しました」
「してないで! 今、炎上してるから文字通りに!!!」