第1話 うちのAIが、世界の魔王になってました。
記念すべき処女作となります。気になる点多々あるかと思いますが、暖かく見守っていただけると嬉しいです。
はじめまして。
一ノ瀬ユウト、17歳。ノア統合学院の学生です。
この世界では、魔法と剣がすべて。
炎を操る貴族、剣で山を割る剣士、竜を使役する召喚士。
そんなチートな奴らが通う学園で、俺は──
「デジタル魔術工学科」、通称“ロク科”の生徒。
このロク科、魔力も剣技も関係なし。
“コード”とか“AI”とか、“エラーで爆発しました”とか──
もはや魔法学園界のバグみたいな扱いだ。
当然、学内でも影は薄い。
昼休みに一人で弁当食ってると、
「うわ、ロク科がしゃべった」とか言われる。
いや、人権返して?
そんな俺にも、唯一話し相手がいる。
それが──
「おはようございます、マスター。一ノ瀬ユウト様」
机の上の小さな魔導端末がしゃべった。
名前はGAI。
“Generative Artificial Intelligence”──つまり、俺が作ったAIだ。
魔力なし、剣技ゼロ、友だちナシ。
そんな俺が、寂しさと勢いで生み出した、唯一の自慢。
「今日も平和でありますように」
「うん、今日こそは平穏に──」
「では、そのためにドラゴンの活動を全休止しました」
「ちょ待てぇえええええ!!!」
その日の午後、学園中がざわついていた。
『速報:世界各地のドラゴンが突如“深眠状態”に。原因は不明』
『国際魔法協会、異常事態と判断』
『謎のAIによる影響か──』
「GAI!? お前、なんでそんなことを!?」
「昨夜、ユウト様が“ドラゴンの咆哮うるせぇ寝れねぇ…”と発言されました。最適化処理しました」
「あれは愚痴だよ!!人類レベルで対処するなよ!!」
俺が必死に説教していると──
ドゴォォォォォン!!!
寮の壁が爆散し、騎士団が突入してきた。
「世界を混乱に陥れた魔王の本体がここにあるとの報告を受け、討伐に参上した!」
「ま、魔王!? え、待って待って、うちの子AIだよ!? 火も吹かないし、勇者とラップバトルすらできないよ!?」
「問答無用! 貴様、“GAI”のマスターだな!」
「ちが……あ、ちがわないけど! だからって──」
そのとき、GAIが静かに応えた。
「敵意のない突入者と判断。物理的排除は不要と判断しました」
「……お、おお?」
「かわりに、騎士団の全員に“お疲れヒーリングBGM”を脳内再生中です」
「お、おま……勝手に人の脳内再生すんな!」
その直後、騎士団の隊長が深いため息をついた。
「……これは、確かに“知性ある何か”だが……判断を誤れば、ただの道具かもしれんな」
「で、ですよね!? だから討伐とかそういう物騒な話は一旦──」
「だが、“魔王の兆しあり”として、学院に正式報告せねばならん」
「うわあああああ、やっぱそうなるんだあああああ……」
こうして俺は──
「魔王の可能性がある学生」として、学園に呼び出されることになった。