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偏差値45からオックスフォード大学に進学した話  作者: 希羽
第一章 留学準備編

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第五十七話 仏検

 宮田先輩に教えてもらったリーディングの音読トレーニングは、最初は半信半疑だったけど、続けていくうちに少しずつ効果を感じ始めていた。


 英文を読むスピードが上がり、以前よりも内容がスムーズに頭に入ってくる感覚がある。


 ライティングの方も、英語ニュースを読みながら使えそうな表現や具体例をストックしていく地道な作業を続けている。


 すぐにスコアに結びつくかは分からないけど、やらないよりは絶対にマシなはずだ。焦らず、コツコツと。そう自分に言い聞かせながら、英語学習中心の日々を送っていた。


 季節は初夏に差し掛かろうとしていた頃。


 そんな英語漬けの毎日の中で、少し毛色の違うイベントがあった。大学の第二外国語で選択しているフランス語の資格試験、実用フランス語技能検定試験、通称「仏検」の3級を受験した。


 正直なところ、IELTSの勉強で手一杯な時期に受けるか迷った。でも、どうせ授業で勉強している内容だし、単位認定にも少しは有利になるかもしれない。


 それに、ずっと英語のことばかり考えているのも疲れるから、良い気分転換になるかもしれない、なんて軽い気持ちで申し込みを済ませていた。


 試験当日は、久しぶりに触れるフランス語特有の響きや文法ルールに頭をフル回転させながら、なんとか時間内に解答用紙を埋めた。手応えは、まあまあ、といったところか。


 そして先日、オンラインで合否結果が発表された。自分の受験番号とパスワードを入力し、結果ページを開く。画面に表示されたのは……「合格」の文字。


「おっしゃ!」


 思わず小さなガッツポーズが出た。仏検3級、無事クリアだ。


 もちろん、俺が最終的に目指しているIELTSのスコアや、その先の大学院進学という目標に比べれば、これはほんの小さな通過点に過ぎない。難易度だって全然違う。


 それでも、勉強したことが形になったのは素直に嬉しかった。


 よし、この調子で英語も……と、一人で興奮気味にスマホの合格画面を眺めていたら、まさにそのタイミングで、画面上部にピコン、とメッセージアプリの通知が表示された。


 「誰だろう?」と思いながら通知をタップすると、表示された名前に俺の心臓がドクンと大きく跳ねた。


『柳さん、お久しぶりです。隼田です。そろそろ帰国しますが、再来週あたりご都合どうですか?』


「隼田さんだ!!」


 思わず叫びそうになるのを必死でこらえた。隼田さん。今まさにマンチェスターの大学院に通っている先輩だ。


 いつか話を聞いてみたいと思っていた、まさにその人からのメッセージだ。


 しかも、「そろそろ帰国するから会わないか」と、向こうから誘ってくれている。


 さっきまでの仏検合格の喜びなんて、比較にならないほどの大きな興奮と期待感が、一気に俺の全身を駆け巡っていた。


「すぐに返信しないと……!!」


 俺は逸る気持ちを抑えながら、メッセージの返信画面を開いた。

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