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偏差値45からオックスフォード大学に進学した話  作者: 希羽
第一章 留学準備編

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第五十六話 リーディング

 ライティング対策の方向性が見えてきて、少しだけ前向きな気持ちで授業を受けていた数日後。


 教室に入ると、すぐに花蓮が駆け寄ってきた。


「駿くん! 先輩、連絡ついたよ! 明日なら時間あるって!」

「まじか!!!」

「うん、直接会って話聞いてくれるって!」

「うおー!!! 花蓮、本当にありがとう!!」


 これでリーディングの突破口も見つかるかもしれない。俺は花蓮に何度もお礼を言った。


 そして翌日の昼休み。


 俺は花蓮と一緒に、大学のカフェテリアの一角で、その先輩が来るのを待っていた。


 少し緊張しながら待っていると、奥の席から一人の男性がこちらに歩いてくるのが見えた。すらっとした、優しそうな雰囲気の人だ。花蓮が立ち上がって手を振る。


「あ、先輩! こっちです!」

「こんにちは、お待たせ」


 先輩は俺たちのテーブルに来ると、にこやかに挨拶してくれた。


「はじめまして。駿くん、だよね? 花蓮さんから話は聞いてるよ。俺は宮田みやた。よろしくね」

「はじめまして、駿です! 今日はありがとうございます!」


 俺は慌てて立ち上がって頭を下げた。宮田先輩は落ち着いた雰囲気で、「まあ座って」と促してくれる。


 簡単な自己紹介を済ませた後、宮田先輩が切り出した。


「それで、花蓮さんから聞いたけど、IELTSのリーディングで悩んでるんだって?」

「はい、そうなんです。前回7.0だったんですけど、そこからスコアが伸びなくて……」

「ふーん……って、え? 今、IELTSでオーバーオールいくつ持ってるの?」

「あ、この前受けたやつで、ちょうど7.0取れたところです」


 俺がそう答えると、宮田先輩は少し目を見開いて驚いた顔をした。


「……7.0!? 留学経験なしで? それはすごいね……。留学経験者でも、7.0取るのは結構大変だよ」


 先輩の言葉に、少しだけ自分のスコアに自信が持てた気がした。でも、問題は停滞していることだ。


「それで、本題のリーディングなんだけど……」


 宮田先輩は少し言いづらそうに口を開いた。


「実は、俺の場合、TOEFLのリーディング対策って、いわゆる『対策』みたいなことは、ほとんどしてないんだ」

「えっ?」


 思わず声が出た。TOEFLリーディングほぼ満点の人が、対策をしてない? どういうことだ?


 俺の疑問を察したように、宮田先輩は続けた。


「いや、誤解しないでほしいんだけど、勉強してなかったわけじゃないんだ。ただ、ちょっと変わってるかもしれないけど、俺、高校生の頃からずっと続けてる英語の勉強法があって。それが結果的に、TOEFLのリーディングにも繋がったって感じなんだよ」

「高校生の時から……ですか?」

「そう。昔から英語の長文読むのは割と得意で……。で、やってたのはすごいシンプルなんだけど……」


 宮田先輩は、コーヒーカップを置いて、まっすぐ俺を見た。


「英語の読解問題を解くだろ? そしたら、その解いた問題の本文を、設問とか解説とか全部読んで、内容を完全に理解するんだ。一文一文、単語の意味も文の構造も、曖昧なところがない状態にする。で、その上で、その本文を声に出して読むんだよ。意味を頭の中で追いかけながら、感情を込めるくらいのつもりで」

「声に出して……読む?」

「そう、音読。最低でも3回は繰り返す。スラスラ意味を取りながら読めるようになるまで、かな」

「……それだけ、ですか?」


 あまりにもシンプルというか、地味な方法に、俺は拍子抜けして聞き返してしまった。もっと複雑なテクニックとか、特別な教材とかが出てくると思っていたからだ。


 すると、宮田先輩はフッと笑って言った。


「それだけ、だよ。でも、駿くん。これをきっちりやると、確実に英語を英語の語順のまま、速く正確に理解する力がつくんだ。騙されたと思ってやってみてほしい。最初は面倒くさいかもしれないけど、続ければ絶対に読解力は上がるから」


 先輩の言葉には、経験に裏打ちされたような妙な説得力があった。


「……分かりました。ありがとうございます!」


 俺は深く頷いた。「なんだ、そんなことか」とは思わなかった。むしろ、シンプルだからこそ、本質的なのかもしれない。


「宮田先輩、今日は本当にありがとうございました! その勉強法、早速今日からやってみます!」


 宮田先輩は「うん、頑張ってね」と笑顔で応えてくれた。


 リーディングに関しても、やるべきことが明確になった。あとは、信じて実行するだけだ。俺は確かな手応えを感じていた。

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