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偏差値45からオックスフォード大学に進学した話  作者: 希羽
第一章 留学準備編

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第三十九話 実践

 翌日の昼休み――。


 俺は早速、颯太と優奈に昨日の説明会のこと、そして正式にロンドン大学への交換留学が決まったことを報告した。


「マジで!? すげえな駿! ロンドンかよ!」


 一番に声を上げたのは颯太だった。目を輝かせ、まるで自分のことのように興奮している。


「おめでとう、駿! 本当にすごいよ!」


 優奈も満面の笑みで祝福してくれた。


「ありがとう。まあ、まだ一年近く先だけどな」


 照れ隠しにそう答える俺に、颯太が肩を組んでくる。


「いやー、でもマジで尊敬するわ。俺なんて、最近ようやくバスケサークルの練習に慣れてきたとこだってのに」

「颯太も楽しそうで何よりだよ」

「まあな! でも、駿の話聞いてたら、俺もなんかデカいことしたくなってきた!」


 屈託なく笑う颯太を見て、ほんの少しだけ、眩しいような気持ちになった。バスケを思い切り楽しむ道もあったのかもしれない。でも、俺は選んだんだ。この道を。


「私も頑張らないとな……。駿を見てると、本当に刺激されるよ」


 優奈の言葉に、俺は「お互い様だよ」と返し、三人でこれからの大学生活について少しだけ語り合った。


 放課後、バイト先の塾でも報告すると、担当している生徒たちから「先生、ロンドン行くの!? すごい!」「英語教えてください!」と質問攻めにあった。


 彼らのキラキラした目に、自分の目標への責任のようなものを感じ、背筋が伸びる思いがした。


 しかし、浮かれてばかりもいられない。


 自室に戻り、改めてIELTSのスコアレポートと、先日調べたオックスフォード大学大学院のウェブサイトを見比べる。


 オーバーオール6.5。留学の最低基準はクリアしているが、目標とするオックスフォードの要求レベル――7.5には、まだ遠い。特にリスニングとスピーキングの6.0は、明らかに足を引っ張っている。


(このままじゃ、大学院どころか、留学先でのディスカッションにもついていけないかもしれない……)


 危機感が募る。


 シャドーイングや独り言だけでは限界がある。もっと実践的な、生きた英語に触れる機会が必要だ。


(オンライン英会話は……いや、もっと大学のリソースを活用できないか?)


 ふと、入学時のオリエンテーションで説明があった「ランゲージ・エクスチェンジ・プログラム」のことを思い出した。大学に在籍する留学生と、お互いの言語を教え合う制度だ。


(これなら、費用もかからないし、ネイティブと直接話せる……!)


 俺はすぐに大学の学生向けウェブサイトを開き、プログラムの詳細を確認し始めた。幸い、秋学期からの参加者募集がちょうど始まるところだった。


「よし、これに申し込もう」


 必要な書類を確認し、すぐに行動に移すことに決めた。スピーキング能力の向上。それが、今の俺にとって最優先課題だ。


 ウェブサイトでランゲージ・エクスチェンジ・プログラムの申込フォームを見つけ、必要事項を記入していく。


 希望する言語はもちろん英語。希望するパートナーの条件には、「イギリス英語を話す人」そして「学術的な話題や時事問題について話すことに興味がある人」と付け加えた。


 自分の日本語レベルや教えられること、そしてこのプログラムを通じて英語のスピーキング、特にディスカッション能力を高めたいという目的を、拙いながらも正直に書き込んだ。


 送信ボタンを押すと、「申し込みを受け付けました」というメッセージが表示された。あとは、マッチングの結果を待つだけだ。


 数日後、大学のメールアドレスに国際部から連絡が届いた。


「ランゲージ・エクスチェンジ・プログラムのマッチング結果のお知らせ」


 緊張しながらメールを開くと、そこにはパートナーとなった留学生の名前と連絡先が記載されていた。


「パートナー:Emily Williamsエミリー・ウィリアムズ、出身:イギリス(ロンドン)、学部:文学部 交換留学生」


 イギリス、しかもロンドン出身。まさに希望通りだった。すぐにメールを送り、最初の顔合わせの日時と場所を決める。大学のカフェテリアで、昼休みに会うことになった。

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