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偏差値45からオックスフォード大学に進学した話  作者: 希羽
第一章 留学準備編

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第三十八話 楽しみ

 交換留学の学内選考に合格し、家に帰宅した後、夕方には母親も仕事から戻ってきた。


「母さん、交換留学の選考結果が出たんだけど……」

「え、そうなの? どうだった?」

「……受かった」

「本当!? おめでとう、駿!」


 母親は目を輝かせ、心から嬉しそうな笑顔を見せた。その表情を見て、ようやく実感が湧いてくる。


「ありがとう、母さん」

「よかったわね。ロンドン大学なんて、すごいじゃない」

「……ただ、ちょっと気になることがあって」

「何?」

「家賃や生活費のことなんだけど……授業料は免除されるけど、ロンドンでの生活費はそれなりにかかると思うんだ。大丈夫かな?」


 俺がそう尋ねると、母親は少しも動揺した様子を見せず、穏やかな口調で言った。


「あら、そんなこと心配しなくて大丈夫よ」

「でも……」

「英語の勉強、すごく頑張ってたでしょ? お母さんだって応援したいの。それに、せっかくのチャンスを、お金のことで諦めてほしくないし」


 母親の言葉がじんわりと胸に染みた。


「……ありがとう、母さん」

「いいのよ。それより、ロンドンでの生活、楽しんでらっしゃい」


 母親の優しさに感謝しながら、俺は改めて、留学を成功させようと心に誓った。



 ◇◇◇



 数日後。交換留学合格者向けの説明会に参加するため、学内の講堂へと向かった。


 会場に入ると、すでに多くの学生が席についており、低くざわめく声が響いている。期待と緊張が入り混じった雰囲気だった。


 俺も空いている席を見つけて座り、資料に目を通していると、不意に見覚えのある顔が目に入った。


「……あれ?」


 視線の先にいたのは、入学直後のオリエンテーションで知り合った凛だった。


「もしかして、凛?」

「あ、駿くん! 久しぶり」


 凛は俺に気づくと、明るい笑顔で手を振った。


「あれ? 凛も交換留学?」

「そうだよ。私は来年の秋から、フランスに行くことになったんだ」

「フランスか! 俺、英語圏の合格者しか見てなかったから……」

「駿くんは英語圏なんだね」

「うん、ロンドン大学に行くことになった」

「え、ロンドン!? 近いじゃん!」


 凛は目を輝かせ、嬉しそうに言った。


「フランスからなら遊びに来れるな」

「うん、絶対行く! 私、英語よりもフランス語の勉強を頑張ってるんだけど、英語も少しは頑張るよ」

「俺も、フランス語を少し勉強してみようかな」


 イギリスとフランスは近い。留学中に友人を訪ねてフランスに行くのも面白そうだ。そう思うと、留学生活がさらに楽しみになった。

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