第三十二話 絶対に行く
IELTSの試験から約二週間。
(そろそろ結果が出る頃か……)
リーディングは手応えがあった。ライティングはまあまあ。スピーキングは途中で詰まったし、リスニングは後半が難しかった……。
(どうだろう……6.0はほしいけど……)
胸の高鳴りを抑えながら、IELTSの公式サイトにアクセスし、ログインする。
結果のページが表示されるまでの数秒が、異様に長く感じる。
(落ち着け……大丈夫……)
画面が切り替わる。そこに表示されたスコア——
— リスニング: 6.0
— リーディング: 7.0
— ライティング: 6.5
— スピーキング: 6.0
— オーバーオール: 6.5
「……!」
一瞬、画面を見つめたまま固まる。
「オーバーオール6.5……! やった……!」
決して高得点ではない。だが、目標にしていた6.5に届いた。
「リーディング7.0は嬉しい。ライティングも6.5……でもスピーキングは6.0か」
試験当日のことが頭をよぎる。緊張していたとはいえ、もう少しスムーズに話せていたら違う結果になったかもしれない。
それでも——6.5。
スマホの画面をじっと見つめる。じわじわと実感が湧いてくる。
試験前、不安で仕方なかった自分。何度も問題を解き、エッセイを書き、英語で独り言を続けた日々。
その努力が、この数字につながったのだ。
そして、ふと気づく。
「あれ……でも、イギリスの大学院進学に必要なのってIELTS7.0だったよな……オックスフォードは7.5だけど……」
指で画面をなぞりながら、小さく息を吐く。
(もしかして……本当に行けるんじゃないか? イギリスの大学院)
今までただの憧れだったものが、現実に変わるかもしれない。
心の奥で、何かがはじける感覚があった。
まだ母にも、誰にも打ち明けたことのない目標。
けれど——
「行ける。いや、絶対に行く」
スマホを握る手に、少しだけ力が入った。




