第三十一話 IELTS本番
試験当日。
朝から落ち着かない。
何度も受験票を確認し、必要なものをカバンに詰め込む。パスポート、筆記用具、貴重品——忘れ物はない。
(大丈夫、これまでの努力を信じろ。)
そう自分に言い聞かせ、家を出た。
試験会場に到着すると、すでに多くの受験生が集まっていた。
様々な国の人たちがいて、英語が飛び交っている。その空気に飲まれそうになりながらも、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
試験は、リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの順で行われる。
リスニング——
アナウンスが響き、試験が始まった。
最初のセクションは日常会話。レストランの予約に関するやりとりで、これは比較的スムーズに答えられた。
しかし、後半のアカデミックな内容になると難易度が一気に上がる。
(速い……情報量が多すぎる!)
必死にメモを取りながら聞き取るが、いくつかの単語が抜け落ちる。最後の問題を解き終えたとき、少し肩を落とした。
(まぁまぁ、といったところか……)
リーディング——
三つの長文を読み、設問に答えていく。
(これは……TOEFLと比べると、確かに少し解きやすいかも)
一つ一つの文章を慎重に読み進め、設問に答える。難しい単語が出てきたが、文脈から意味を推測して対応できた。
リーディングは、手応えあり。
ライティング——
Task 1は、データ分析の問題。「1990年から2020年までの電力消費量の推移」についてのグラフを要約するものだった。
(焦るな、シンプルにまとめることが大事だ。)
短く簡潔にまとめ、Task 2へ移る。
エッセイのテーマを確認し、すぐに構成を考えた。これまで書いてきたエッセイの経験が活きる。時間内に書き終え、見直しまでできた。
(悪くない……!)
スピーキング——
個室に案内され、試験官の前に座る。
「Let’s begin. Tell me about your hometown.(では始めましょう。あなたの故郷について教えてください)」
準備していた話題だったので、比較的スムーズに話せた。
しかし、途中の質問で言葉に詰まりかける。
(まずい……)
それでも、英語で独り言を続けてきたおかげで、なんとか話をつなげることができた。
「Alright, that’s the end of the test. Thank you.(では、試験はここまでです。ありがとうございました)」
全力を出し切った。
試験終了。
すべてのセクションを終え、会場を後にする。
「終わった……! やり切った……!」
緊張が一気に解け、思わず空を見上げた。