第二十九話 夏休み
一ヶ月後——。
大学一年の七月。今日の授業が終われば、ついに夏休み。
長かった春学期も、ようやく一区切りつく。テストもレポートも終わり、あとは夏休みを迎えるだけ。
「よし、終わった!」
最後の授業が終わり、教室を出る。外に出ると、蒸し暑い夏の空気が広がっていた。
今日は、必修科目のクラスメイトたちとの打ち上げがある。
駅前の居酒屋に集まると、皆リラックスした様子だった。テストから解放されたせいか、どことなく開放感が漂っている。
「やっと夏休みだな!」
「マジでレポート地獄だった……」
「来週からちょっと海外旅行いってくるわ!」
話題は自然と、夏休みの予定へと移る。
「俺、短期留学でアメリカ行ってくる」
「えっ、すごい!」
「1ヶ月だけだけどな。語学学校に通う予定」
「私はヨーロッパ旅行! ロンドンとパリに行くよ」
「おしゃれ! お土産よろしく!」
「俺はバイト漬け。稼がないとヤバい」
「それも偉いって。社会経験大事だし」
それぞれが、夏休みにやりたいことを話している。
正直、少し羨ましい。
俺は、まだ海外旅行も短期留学もせず、IELTSの勉強に集中する予定だから。
けれど、ここで努力すれば——来年、俺はイギリスにいる。
それを考えると、自然とやる気が湧いてきた。
「俺、来月初旬のIELTSに申し込んだから、夏休みは勉強漬けだな。まあ、バイトは多少するけど」
「え、すごい! 本気で留学目指してるんだ」
「うん。だから今は頑張る」
そう言うと、クラスメイトたちが「応援してるよ!」と笑ってくれた。
楽しい時間はあっという間に過ぎる。終電前に店を出て、解散。
帰り道、夜風が心地よかった。
この夏を、無駄にしない。来年、俺はロンドンの街を歩いているはずだから。




