第二十六話 新たな目標
「駿ー!! めっちゃ久しぶり!」
「元気そうだな、雅人!」
今日は久しぶりに高校の友人たちと食事に行く日。駅で雅人と合流し、一緒に店へ向かって歩く。
「雅人、めっちゃ日焼けしてるけど、スポーツでも始めた?」
「あ、やっぱり焼けてる? 俺、テニスサークル入ったんだよ! 週に何回かやってるから、そりゃ焼けるわな」
「テニス!? やったことあったっけ?」
「ないない、完全初心者! でも、みんなで楽しくやってるよ」
「へえ、楽しそうだな」
「駿は何かサークル入ってないの?」
「バスケに誘われたけど、結局何も入ってないな」
「もったいないぞ。大学生活は四年間しかないんだから」
「まあ、勉強とか宿題とかバイトで手一杯だし」
「バイトって何やってんの?」
「……塾講師」
「え!? マジで? もしかして英語教えてる?」
「そうそう」
「すげえな、まじで英語漬けの生活じゃん」
「まあな」
「で、駿は彼女できた?」
「いねーよ!」
「そうかそうか……でも、留学行ったら現地で彼女作ればいいんじゃね?」
「……それはアリかもな」
笑いながら店に入る。
久しぶりに集まった高校の友人たちと、他愛のない話で盛り上がる。
みんな雅人と同じで、それぞれサークルに入ったり、バイトに明け暮れたり、彼女ができたり――みんな楽しそうに大学生活を送っていた。
ふと気づく。勉強ばかりしているのは、どうやら俺だけのようだ。
でも――それでいい。
俺は俺のやるべきことをやるだけだ。
帰宅後――。
部屋に入り、ベッドに倒れ込む。
「はぁ……今日は疲れた」
久しぶりに会った友人たちとの時間は楽しかったが、どこか気持ちがざわついていた。
みんながそれぞれ大学生活を楽しんでいるのを見て、自分だけが違う道を歩んでいるような感覚があった。
「シャワー浴びてさっさと寝るか……」
そう思いながらスマホを手に取る。なんとなく、ふとした興味で検索バーを開いた。
「イギリス 大学院 受験」
検索ボタンを押すと、いくつもの記事が表示される。その中の一つをタップして読んでみる。
「イギリスの大学院受験は……書類審査のみ?」
目を疑った。
「マジか……!」
思わず声に出してしまう。
日本の大学や大学院といえば、筆記試験や面接試験が当たり前だ。
だが、記事を読めば読むほど、イギリスの大学院では学部時代の成績や推薦状、志望動機のエッセイなどが重要視され、試験はほとんどないということが分かってくる。
「書類だけで……合否が決まるのか……」
スマホを持つ手に力が入る。
今まで英語の勉強を続けてきたのは、ただ漠然と「留学してみたい」という思いからだった。
でも、目の前にもう少し具体的な目標が現れた気がする。
「イギリスの大学院……俺も目指してみようかな」
心の奥底で、小さな炎が灯るのを感じた。




