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偏差値45からオックスフォード大学に進学した話  作者: 希羽
第一章 留学準備編

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第二十二話 画像

 今日、俺は初めて大学の研究室へ向かっている。


 大学でも担任制度があるらしく、一年生の春に担任と面談することになっている。


(日本人の担任か……どんな人だろう)


 担任のいるはずの研究室の前に立ち、ドアをノックする。


「はーい、どうぞ〜」


 中から気の抜けた男性の声がした。「失礼します」と言って、俺はドアを開けた。


 次の瞬間、俺は固まった。


 そこにいたのは、ピンクのウサギのぬいぐるみハットを被ったおじさんだった。


「すみません、部屋間違えました」


 条件反射でドアを閉めようとする俺。


「ああ、待って待って。君が探してるのは桜井って先生?」


 ウサギ帽子のおじさんに呼び止められる。


「まあ……そうですけど」

「それ、僕ですね」

「へ?」

「面談できたんでしょう? まあ、こっちに座ってください」


 俺は苦笑いするしかなかった。担任との面談は避けられない。仕方なく言われた通り椅子に腰掛けた。


「で、君のお名前は?」

「……柳駿です」

「柳さんですね、私は桜井。学校生活で何か困ったことがあれば、気軽に相談してくださいね。それで――」

「いや、その前にその帽子は何ですか!?」

「何って、ウサギさんですよ。可愛いでしょ?」

「いや、なんでそんなの被ってんの!?」

「いやあ、学生との会話に困ったらアイスブレイクにでもなるかなあと思ってね。今日は面談が多いから」

「いい歳したおじさんがそんなの被ってたら変態にしか見えないし!」

「ハハハッ、そうだねえ」


 俺はもうツッコむのを諦めた。


「それで、学校生活はどう?」

「ああ、今のところ順調です。留学したくて、TOEFLの勉強も頑張ってます」

「ほう」


 先生の目つきが少し鋭くなった。


「TOEFLの対策は順調なの?」

「……正直、苦戦してます。入学時のTOEICはそれなりに良い点取れたけど、TOEFLは全然違う試験で……」

「うん、全く違う試験だからね」


 桜井先生はにこりと笑う。


「リスニングはシャドーイングとか聞き流しを続けて、だいぶ聞き取れるようになってきた。でも、TOEFLの英単語が難しくて、日本語の意味すらピンとこない単語とかもあるし……」

「そういうときは、その英単語をネット検索してみて、検索結果の画像を見てみるといいよ」

「画像?」

「うん。英単語の意味を表す画像が出てくることがあるから、それでイメージすると覚えやすい」

「なるほど……」

「まあ、英語は努力次第だからね。あんまりアドバイスできないけど、また何か困ったら相談にのるよ」

「あ、ありがとうございます!」


 先生は微笑んだ。


「先生、ちなみに俺、海外行ったことなくて、スピーキングも苦手なんですけど、どうしたらいいですか?」

「あ〜、ごめんね。先生、スピーキングは苦手だから」

「へ?」

「先生も留学経験ないから」

「へ!? 国際学部の先生ですよね!?」

「まあ、海外は何度も行ったことあるし、リーディングとリスニングはできるけどね」

「びっくり……」

「ハハハッ、ごめんね」


 俺の担任、思ってたよりクセが強いかもしれない――。


 担任との面談を終えて、夕方の授業が終わると、いつものように家に向かって歩き出す。


 帰り道、TED Talksを聞きながら歩くのが最近のお決まりの時間。考え事をしながら、時々笑ってしまう面白い話を見つけると、歩く足取りが自然と軽くなる。


 家に帰ると、すぐにデスクに向かい、TOEFLのスピーキングとリーディング対策に集中する。


 自分の成長を感じたい。少しでも時間を無駄にしたくない。


 夜寝る前には、英単語の復習と暗記をするのが日課だ。


「crust(地殻)……」


 試しに単語をネットで検索してみると、意味が視覚的に示された画像が並んでいる。すごくわかりやすい。


「なるほど、これなら日本語の訳に頼らず、イメージで覚えられるかも……」


 面談で先生と話した結果、正解だったと実感する瞬間だった。

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