第二十一話 TED Talks
「駿、バスケめっちゃ上手いらしいね!」
教室で優奈がテンション高めに話しかけてきた。
「めっちゃ上手いよ、マジで!」
俺の代わりに颯太が即答する。
「えー! 体育でバスケ選択すればよかった~! 駿のプレー見たかったなあ」
優奈が少し悔しそうに言う。
「まあ、中学の頃は結構頑張ってたからな」
「じゃあ、アメリカ留学したら現地でバスケしてみたら?」
優奈がふと思いついたように言う。
「いや、昔の俺ならそうしたかったかもしれないけど、もうバスケはいいんだよ」
「えー!? なんで?」
優奈は驚いた顔をするが、俺の気持ちは変わらない。
その時、教室のドアが開き、先生が入ってきた。
「皆さん、こんにちは! 授業を始める前に、今日は一つ紹介したいものがあります」
先生が教壇に立ち、話し始める。
「皆さん、TED Talksは知っていますか?」
数人の学生が頷く。
「TED Talksは、非営利団体TEDが提供する英語のプレゼンテーション動画です。ビジネス、心理学など、幅広い分野の専門家や著名人のスピーチを見ることができます」
先生は続ける。
「英語学習にも役立つし、モチベーションアップにもつながると思うので、ぜひチェックしてみてください」
そう言ってから、先生は授業に入った。
放課後――。
家に帰り、今日もTOEFLの勉強をする。
しばらくしてリビングで休憩しながら、ふと今日の授業を思い出す。
(TED Talksか……)
気になってスマホで検索すると、すぐに動画が見つかった。
試しに人気のものを一つ再生してみる。
スマホの画面に映し出されたのは、舞台の上に立つスピーカーの姿だった。
観客席からの拍手が響く。スピーカーは少し笑いながら、話し始めた。
シンプルな英語だけど、発音がきれいで聞き取りやすい。
(意外とわかるな……)
字幕をつけながら、俺はスピーチを聞き続けた。
テーマは、失敗から学ぶこと。
英語の勉強のつもりだったけど、内容にも引き込まれる。
途中、少し早口になる部分もあったが、文脈でなんとなく意味がつかめた。
(これ、TOEFLのリスニング対策にちょうどいいな)
話が進むにつれ、気づいたことがある。
ただ単に英語を「聞く」だけじゃなくて、「考えながら理解する」ことが大事なんだ。
TOEFLのリスニングでも、ただ単語を拾うんじゃなくて、話の流れを掴むことが必要になる。
スピーチが終わると、会場から大きな拍手が起こった。
俺はスマホを置いて、少し考えた。
(俺も、もっと英語を話せるようになりたいな……)
リスニングはなんとかなりそう。
でも、スピーカーみたいに「話す」ことはまだまだ難しい。
(もっとスピーキングの練習もしないとな……)
そんなことを思いながら、俺は次の動画を再生した。




