第十五話 体育の授業
大学に入学して一週間が経った。
授業は比較的少人数制で、ほとんど英語で行われる。宿題も意外と多いが、英語が得意な学生が多く、刺激的な環境だ。
TOEFLの試験対策も始めた。昨日は、そのためのパスポート申請に行ってきた。
TOEFLを受験するにはパスポートが必須だからだ。
まさか、初めて取得するパスポートの用途が海外旅行ではなく、身分証明のためになるとは思わなかったが、仕方ない。
そして今日は、初めての体育の授業。
着替えを済ませて体育館に向かうが、正直、気が乗らない。
「まさか大学の体育でバスケをやることになるとは……」
つぶやく俺に、ドリブルをしながら颯太が話しかけてきた。
「駿、俺が教えてやるよ!」
「いや、大丈夫。一応やったことあるし、バスケ」
「えっ、そうなの? サークル入ればいいのに!」
「……考えとくよ」
授業が始まり、まずは軽いウォーミングアップから。その後、3対3のゲーム形式の練習をすることになった。
俺は適当に流すつもりでいたが、ボールをもらった瞬間、体が勝手に動いた。
――ダブルクラッチでディフェンスをかわし、そのままレイアップ。
ボールは綺麗にリングを通り抜けた。
「えっ、駿、めっちゃ上手くね?」
周りがざわつく。
久しぶりのバスケだったが、体はしっかり覚えていた。
ディフェンスの位置を見極め、カットイン、ジャンプショット――。気づけば、ほぼ俺の独壇場になっていた。
授業後、颯太が興奮気味に話しかけてくる。
「駿、お前すごいじゃん! なんで今まで言わなかったんだよ!」
「いや、別に隠してたわけじゃ……」
「なあ、今度バスケサークルの練習に来てみないか?」
すると、近くで授業を見ていたバスケ部の人まで話しかけてきた。
「サークルもいいけど、うちの部にも体験で来てみない? 本格的にやるなら、部の方がいいぞ」
いきなり勧誘ラッシュ。
「とりあえず、体験だけ行ってみるよ」
こうして俺は、バスケサークルとバスケ部、両方の体験に行くことになった。