第十一話 必要なこと
午前中の授業を終え、俺は颯太と優奈と一緒に学食でランチを取ることにした。
「駿はTOEIC850点だし、優奈は発音めちゃくちゃ綺麗だし……なんだかんだ、みんなすごいよな」
颯太がカレーライスを口に運びながら、しみじみとつぶやく。
「いやいや、颯太こそペラペラだったじゃん! あれはマジでびっくりしたわ」
俺は思わず突っ込んだ。
「まあ……海外に住んでたから、話すのは慣れてるけどさ。でも、語彙力とか文法はまだまだだよ」
颯太はスプーンを置いて、苦笑いを浮かべる。
「だって、TOEIC710点だったし」
「え!? あんなに話せるのに!?」
俺と優奈が同時に驚き、思わず顔を見合わせる。
「そうなんだよ……スピーキングはできても、リーディングが微妙でさ」
颯太がため息をつく。
「逆に、駿はリーディングめっちゃ得意なんだろ? なんかコツとかある?」
「いや、俺もまだ全然だし……」
「英語も頑張りたいけど、二人は何かサークルとか入らないの?」
優奈がふと話題を変えた。
「俺はバスケサークルの体験に行こうと思ってるよ」
颯太がそう答え、俺は少し驚く。
「颯太、バスケやるんだ?」
「高校でバスケ部だったからさ。久しぶりに体動かしたくてな」
「へえ、意外だな。駿は何かスポーツとかするの?」
「……俺は、特に」
「バスケサークルの体験、一緒に行ってみるか? 初心者でも大歓迎らしいし」
「考えとくよ」
本当は、少し興味があった。でも、今はそれより英語を優先したい。
バスケは嫌いじゃない。むしろ好きだ。
けれど、今の自分にとって一番必要なのは、英語の力を伸ばすことだ。