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第十話 初めての授業

 クラス分けのTOEICが終わり、ついに初めての授業の日がやってきた。


 国際学部の必修科目はすべて英語で行われる。


 そして俺は――


 最上級のAクラスに入った。


(リーディングとリスニングは何とかなるけど、スピーキングはまだ全然できないし……大丈夫か?)


 少し緊張しながら教室に入ると、すでに他の学生たちが15名ほど集まっていた。


 このクラスは、全部で20人程度。


 俺は空いている席に座った。


 すると、後ろから声をかけられる。


「駿くん!」


 振り向くと、オリエンテーションで知り合った村田颯太むらた そうただった。


「颯太! 同じクラスじゃん! よかった!」


 思わず笑みがこぼれる。


「駿くん、英語苦手とか言ってたのに、一番上のクラスってどういうこと?」

「いや、それは颯太もだろ?」

「まあね!」


 二人で笑い合う。


「凛はいないみたいだね」


 颯太が周りを見回しながらつぶやく。


「そういえば、駿はTOEIC何点だった?」

「俺は850」

「え?」


 颯太が驚いた顔をする。


 その瞬間、近くにいたクラスメイトがこちらを振り向いた。


「もしかして、帰国子女!?」


 話しかけてきたのは、肩までの黒髪を後ろでまとめた女の子だった。


「え、いや……」

「ごめん、びっくりしてつい話しかけちゃった。私は優奈ゆうな

「俺は駿。こっちは颯太」

「駿と颯太ね。よろしく!」


 にこっと笑う優奈。


「それにしても、駿すごいじゃん」


 颯太が感心したように言う。


「TOEIC850点って……どっか留学してたの?」

「いや、まだ海外行ったことないけど……」

「ええ!?」


 優奈と颯太が同時に驚く。


「まあ、入学前にTOEICの勉強してたから」

「マジか――」


 そんな話をしていると、外国人の先生らしき人物が教室に入ってきた。


 全員の視線が先生に集まる。


「皆さん、こんにちは!」


 笑顔でそう言うと、先生は黒板に「Jacob」と書いた。


「今日は初回なので、お互いに自己紹介をしましょうか。私はこのクラスを担当するジェイコブです。ジェイコブと呼んでください。皆さん、それぞれ順番に、名前やこれまでの海外経験について話してくださいね」


 そう言うと、教室の端から順番に自己紹介が始まった。


 帰国子女、留学経験者、旅行で海外に行ったことがある人――さまざまなバックグラウンドを持つクラスメイトたちが話していく。


 そして、短髪で少し日焼けした男の子の番が来た。


「Hi, Jacob! My name is Joe(やあ、ジェイコブ! 僕の名前はジョー)」


 流暢な英語が教室に響く。


「I lived in the U.S. until I was 18(18歳までアメリカに住んでたんだ) But my parents are Japanese, so I decided to go to university in Japan(でも両親は日本人だから、日本の大学に進学することにしたんだ)」


(いや、完全にネイティブじゃん!?)


 俺は内心、驚愕した。


 そして、颯太の番が来る。


「Hey, everyone! I’m Sota Murata(やあ、みんな! 僕は村田颯太です)」


 颯太は笑顔で話し始めた。


「I lived in Singapore for three years when I was a kid, so I got used to English(子供の頃、3年間シンガポールに住んでたから、英語には慣れてるよ)」


「But my speaking is not perfect, so I’ll work hard with you all!(でも、スピーキングは完璧じゃないから、みんなと一緒に頑張るよ!)」


 流暢な英語に、クラスの何人かが「おお」と感心したような声を漏らす。


(え、お前そんなに話せるのか!?)


 俺は颯太の実力に驚かされた。


 そして、優奈の番が来る。


「Hello, everyone. My name is Yuna(こんにちは、みんな。私の名前は優奈です)」


 彼女の発音はとても綺麗だった。


 流暢というほどではないが、一つひとつの単語がクリアに発音されていて、聞き取りやすい。


「I went to Australia for a short homestay when I was in high school(高校の時に短期ホームステイでオーストラリアに行きました)」


「My English is not perfect, but I love speaking English, so I hope we can all improve together!(完璧じゃないけど、英語を話すのが好きだから、みんなと一緒に上達したいです!)」


 優奈の自己紹介が終わると、何人かが頷いていた。


(発音、めっちゃ綺麗だな……)


 俺は思わず感心した。


 そして、ついに俺の番が来る。


(うわ……やばい……)


「えっと……」


 緊張で喉が渇く。


 だが、ここで何も言えなかったら、Aクラスにいる意味がない。


「I'm Shun(僕は駿です)」


「I have no experience abroad, but I want to study abroad in the future(海外経験はないですが、将来留学したいと思っています)」


 何とか言い切る。


 拙い英語だったが、ジェイコブ先生は笑顔で頷いた。


「Great!(素晴らしい!)」


(……よかった)


 クラスメイトのほとんどは、少なくとも旅行で海外に行ったことがあるらしい。


 海外経験ゼロなのは、俺ぐらいだ。


 けれど、TOEICの点数ならおそらくクラス上位にいるはず。


(スピーキングはこれから、みんなに負けないように頑張ろう)


 俺は新たな決意を胸に、授業の開始を待った――。

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