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校内の盗難事件の犯人

作者: 浅賀ソルト

「ここ数日の盗難なんだけどなあ、監視カメラにお前が映ってたんだよ」

「違うんです。鈴木くんに金を持ってこいっていわれてて」

「鈴木?」

「そうです。本当にこんなことしたくはなかったんです。すいません。けど、断るとひどいことされるから」

 僕はちゃんと説明したんだけど、後日、また学校に呼び出された。しかも母親もだ。うちの母はシングルマザーで昼間は働いているんだから呼び出さないで欲しい。

 教師は校内で盗難が多発していて、監視カメラに僕の姿が映っていたという説明を繰り返した。

 僕はもちろん脅されてやったんだという説明を繰り返した。

「しかしですね。鈴木くんと宅間くんが話をしているところを誰も見たことないんですよ。学内でまったく接触のないいじめというのもないと思うんですけどね」

「全部スマホで命令されます。いまどきカメラがあることなんてみんな知ってます。ズルい奴はそういうのがうまいんです。僕が言えなかったのも証拠がないからです」

 教師は僕を見ていたが、話の相手は母だった。「鈴木のスマホも任意で見せてもらったんですがね、何もなかったです。綺麗なものでした」

「けど証拠があったら見せませんよね。はいどうぞって渡すってことはもう証拠は隠しているんです。二台持ちかもしれません。きっとそうです」

「というわけで、すいませんが、宅間くんのスマホもちょっと調べさせていただけませんか?」

 母は言った。「ええ、それはもちろん構いません」

 僕も頷いた。「はい」スマホを差し出す。「けど、鈴木は僕のスマホのログも消させるので、証拠はないです」

「なるほど」教師はそう言いつつも、じゃあ結構ですとは言わずに僕のスマホを受け取った。

 なんとなく操作して色々アプリを確認したが、それで終わりだった。指の動きからなんとなくLINEとSNSをチェックしたというのは分かった。しかし、適当に見ただけという感じだった。証拠を探そうという感じはまるでない。最初から無いことを知っているみたいだ。

「はい、結構です」スマホを返してきた。

 僕は受け取った。

「確かに証拠はないですね」

「だから言ったじゃないですか」

「で、その課金した金はどこから出したんだ?」

「それは自分のお金ですよ」

「高校生がそんなにガチャにつっこめないと思うけどねえ」教師は普通の口調で言った。「それにお前、課金が盗難の日付と金額に一致しすぎてるよ」

「いや、違うんです。鈴木くんに育成を頼まれているんです」

「うーん」教師は探るような目で僕を見ていた。「ちょっとねえ、私も更正の機会を奪うのはどうかと思っているんですけどねえ。普通に窃盗として警察に被害届を出した方がいいと思っています。お母さんの方はどう思います?」

 母が何か言おうとするのを遮って僕は怒鳴った。「いいかげんにしろよ! 被害届なんか出してみろ。恥をかくのはお前らだぞ!」

 教師と母は溜息をついた。

「鈴木のスマホに送金の証拠が絶対にある。下手なことをして鈴木に逃げられているじゃないか。今度はすぐに捜査してもらった方がいいんだ」

「つまり、お前が盗んで、鈴木のスマホに送金したんだな?」教師は言った。

「そう言ってるだろ!」僕は自分のスマホを操作して画面を出した。「ほら、見ろ!」

「んー、どれどれ」教師がそれを見た。「ゲームの課金履歴じゃないか」

「違う。これは送金だよ。僕はこれで送金してたんだ」

「……」

「先生、僕は鈴木に脅されているんです。騙されないでください。なんとか鈴木をやっつけてください」

「うーん。まあ、とりあえず今回は様子を見ましょう」


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