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赤いバッグ

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ありがとうございます。


 

 

 余りにも暇だったので待ち時間を使い冒険者ギルドを見て回る事にした。一階には受付と掲示板の他に食堂と雑貨屋の様な小さな売店があり、食事や買い物もできるようだ。それと盗み聞きをした情報によると魔物の解体場と買取所も建物の裏にあるそうだ。そして大きなホールの真ん中はテーブルとベンチが沢山おいてあり、自由に食事したり、受付を待つ間の休憩をする場所として使っても良いらしい。食べている人を見てたらお腹が空いてきちゃったな。そうは思っても、小銭がないので食事は我慢して、売店を覗きに行ってみる事にする。


「こんにちは! 何かお探しですか?」


 売店に入った瞬間、どこからともなくギルド職員の制服を着た女性が笑顔で現れる。


「え~と、特には無いんですが、良いものがあれば……」


「そうですか、分からないことがあったら、いつでもご質問してくださいね」


「……はい、ありがとうございます」


 まさかの話しかけてくる接客スタイルに、こちらの世界でも苦しまされるなんて……。それでも、そこは一応、笑顔で対応して店内を見渡す。


「あっ! バッグもあるんだ」


 店の奥にバッグを見つけたので、そう言って店員の前からさり気なく移動しようとしたものの、何故か後ろから店員の気配を感じる。いや、ついてくんのか~い! もしかして、万引きを疑われてる? この狭い店で店員を撒けるわけないし、諦めて接客してもらう事にする。


「え~と、手に取ってみてもいいですか?」


「どうぞ、どうぞ、そちらのバッグはレッドボアの皮特有の赤い色が女性にとても人気ですし、実用性の面でも丈夫で燃えにくい素材となっておりますのでお勧めです」


 丈夫なのはいいけど、バッグってそんなに燃える心配する事あったっけ? でも、ここにある他のバッグは全部、暗い色だし、赤は良いかもね……。


「これって、おいくらなんですか?」


「え~と、そちらは金貨十五枚ですね」


 はっ? 高っ! 物は違うけど、さっきのおじさんのお店では大銀貨一枚だったのに……新品価格って事? それにしたって高くない……?


「凄い値段ですね」


「そうですね! レッドボアは滅多に目撃されない個体ですし、階級の高い冒険者でないと倒せないのでその分、お値段がどうしてもお高くなってしまいますね」


 なるほど、レアなんだ。


「一番安いバッグだといくらぐらいになるんですか?」


「そうですね……今、販売している物の中ででしたら、この一角ウサギの皮のものが一番、お手頃となっていまして金貨二枚になりますね」


 おわた……。お手頃とは一体……? 新品は無理そうだね……。


「え~と、じゃあ、その横に置いてあるバッグのお手入れ用のブラシとオイルっていうのは、いくらなんですか?」


「それはブラシが大銀貨三枚でオイルは大銀貨二枚になりますね」


 えっ……おじさんバッグより高いんだけど……。急激に買う気が失せていく。


「ごめんなさい。お金を貯めてからまた来ます」


 驚く職員を置き去りにして、その場をあとにする。あんな値段、ぼったくりじゃん! あれじゃ新人は絶対に買えないし、もしかしたら、ギルドって思っているより、まともな組織じゃないのかも……。


 気を取り直して、二階も見に行ってみようと思い、階段に向かおうとしたところで若い職員に呼び止められる。どうやら、登録プレートとお釣りの用意が出来たようだ。先程と同じ受付に向かうと、リリーさんが硬貨とドックタグのような金属のプレートをのせたトレイを差し出す。


「エレコさま、大変、お待たせいたしました。こちらがお釣りの大銀貨七枚と登録プレートになります。一応、念のために登録プレートに刻まれたお名前に間違いがないか、ご確認をお願いします」


「え~と、名前は……問題ないです」


「ご確認、ありがとうございます。登録プレートは紛失時に悪用される事がありますので、その場合は出来るだけ早くギルドに届け出るようにお願いします」

 

「わかりました…………へぇ~これが大銀貨なんですね! ということは、大銀貨が十枚で金貨一枚って事なのかな」

 

「そ、そうですね……」


「あっ! すみません。故郷と違う硬貨なのでまだ、その辺がよく分かっていなくて」


「あ~なるほど、そういう事だったんですね。よろしければ、お教えしましょうか……?」


「えっ! いいんですか。お願いします」


 その提案にすぐさま飛びつき、その場ですぐに硬貨について教えてもらう。リリーさんの説明によると硬貨には下から銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨とあり、どの硬貨も十枚で一つ上の硬貨一枚と同価値になるそうだ。その他にも騙されないようにと、一般の宿屋の料金や物の大体の値段を教えてくれたので、銀貨は元の世界でいう千円ぐらいの価値があるのではと予想する。


「良かった~。これで騙される心配をしなくて済みます。ありがとございました」


「いえいえ、そういえばエレコさま、細かい硬貨を持ってないんじゃないですか? 大銀貨でも買い物や食事の時に使うと文句を言ってくる店主もいますし、良かったら両替えしましょうか?」


「えっ! いいんですか?」


「本当は冒険者ギルドでは両替えは行っておりませんが、今回だけの特別なので内緒にして下さいね」

 

 そう言うと、リリーさんは大銀貨を銀貨と大銅貨に交換してくれた。


「ありがとうございます」


「いえいえ、それでは他に質問等がなければ、登録の手続きを終了させていただきますが、よろしいでしょうか?」


「はい、色々、教えていただいて助かりました。ありがとうございます」


「冒険者さんのお手伝いが私の仕事なので、お気になさらないでください。それでは本日はご登録ありがとうございました。安全第一で頑張ってくださいね」

 

「はい!」


 お辞儀をして元気に受付をあとにする。リリーさん、良い人~! 色々、教えても貰ったし、落ち着いたらお礼をしなきゃだね。不安だった硬貨の種類や大体の価値も分かって、気分も晴れやかにおじさんバッグを買うべく、ギルドの外に出てふと一つの衝撃的な事実に気付く。


 えっ! レッドボアのバッグ、百五十万てマジ?




銅貨  10円 

大銅貨 100円

銀貨  1000円

大銀貨 10000円

金貨  100000円

大金貨 1000000円

白金貨 10000000円

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