誰もが知っている事
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ありがとうございます。
内容を修正して巻き戻しました。
過去の内容はカクヨムではまだ読めますが
ある程度、話が進んだら全て修正する予定です。
よろしくお願いいたします
ゲートをくぐるとすぐさまそのゲートは閉じてしまい、跡形もなく消えていく。
(長居したのは悪かったけど、そんなに急いで閉めなくてもいいのに……)
エレコの出た場所は、草原にぽつんと一本だけそびえたっている大木の下だった。そこは広場のようになっていて、今は誰もいないが焚火の跡などもあるので、旅人の休憩場所になっているのかもしれない。
「わ~っ、気持ちいい風~! 気のせいか空気も美味しいかも……! あれっ! 帽子……」
風でみだれた髪をなおした事で、帽子を被っていない事に気づいた。忘れてきたのかと思い、急いでインベントリ画面を開くと、そこには帽子と杖が入っていた。
「あっ! 杖もか……でもよかった~! ネコちゃんが入れてくれたのかな? いきなり無くしたかと思って焦っちゃった。一応、装備しておいた方がいいよね……」
そう思い装備をして、また『帽子、でかっ!』と驚き、一人で笑う。帽子はイベントリにしまっておこうかとも思ったが、変に視線があって絡まれるよりはマシかと思い直し被っておくことにする。
「今度こそ忘れ物は無いよね……」
一旦、周りを確認すると、エレコは映画のような景色を楽しみながら城壁の街へと向かった。
♦ ♦ ♦ ♦
街の城壁にたどり着くと、そこには門番が立っている三つのゲートが有り、エレコは徒歩用と思われる長い列に並ぶ。残りの二つのゲートは馬車用で、豪華な馬車は止まりもせずに通過していくので、あれが例のお貴族様というやつなのだろう。荷物検査すらされないなんて悪い事をし放題だね。それに引き換え、自分が並んでいる列の先を見ると一人一人が止められて、荷物を改められているようだ。あんなペースだと結構、時間が掛かりそう……。今までこんな行列に一人で並んだ経験なんてあったかな? 時間つぶしのスマホもないのに耐えられるかしら……。
しかし、そんな不安も考えすぎだったようで、この城壁の素材に使ってるあの大きな石材は、どうやってあの高さまで積んだのかを考えたり、何か適当に重ね着しているだけっぽい人たちが、おしゃれに見えるのを観察するなど意外と楽しいものだった。そして、そうこうしている内に自分の順番となり、門番の兵士のもとへと向かう。
「おい、お前、ここに立て…………ちっ! 何してる! さっさと身分を証明できる物を提示しろ!」
「……持っていません。ですので、それを取るために冒険者の登録に来ました」
「聞いていない事までベラベラしゃべるな! なら、持ち物をこの台の上に全部のせろ! 誤魔化そうなんてするなよ!」
何か兵士の物言いが一々、喧嘩腰でイラッとはしたものの、その言葉に従い、手に持っていた杖と通行料を支払う分の金貨を一枚だけ台の上にのせる。
「金貨だと? ……他にもあるのだろう! さっさと出せ! 別におまえをここで素っ裸にして調べてもいいんだぞ!」
はあ? こいつ何なの? 人目がなかったらボコボコにしてやるのに……。
「持ってません!」
本当はインベントリに持ってるけど……。
「何を! ――」「――やりすぎです! それにこれだけの大衆の面前で一体何をする気なんですか? いくら、実家が貴族でも厳罰は免れませんよ」
「うるさい! 黙れ! 平民が!」
私に掴みかかろうとした所を止めに入った兵士が殴り飛ばされ、列に並んでいた人たちからも悲鳴が上がる。
「――おい、何、やってんだ」「――正気か?」
他の兵士たちも騒ぎが大きくなりマズいと思ったのかこちらに駆けつけ、殴った兵士を取り押さえて奥の部屋へと連行していく。すると、誰からともなく拍手が巻き起こりその場は騒然とし始める。話の流れから威張り散らしている奴が貴族の子息で、止めに入ってくれたのが平民出の兵士だという事がなんとなく分かったけど、貴族ってみんな、あんな感じで傲慢な奴ばっかりなの? それにわたしが何かした?
「うちの同僚がすまなかったな! もう大丈夫だ!」
「あっ! 助けていただいて、ありがとうございました。大丈夫でしたか?」
「ははっ! あんなのはどうって事ないさ! それで今回の件なんだが、こちらが迷惑をかけたという事で通行料は免除させてもらう。しかし、今後の為に出来るだけ早く、どこかのギルドの登録をした方がいいな! ギルドプレートを提示すれば通行料を払わなくてよくなるからな!」
「はい、そうします。あの~……冒険者ギルドの場所を教えて貰ってもいいですか?」
「冒険者ギルドはこの門をくぐって道なりに真っすぐに行けば、大きな建物が見えてくるからきっとすぐわかると思うぞ! 盾と剣が彫られた看板が目印だから、見ればわかると思う! それでも迷ったらその辺の子供に小銭を渡せば案内してくれるはずだ!」
「ありがとうございます。……あと、もう一つ、質問していいですか?」
「ん? 構わないが……」
「なんで、私があんな目にあったんでしょうか? 別に責めているからとかではなくて、純粋に理由が知りたくて……」
「申し訳ないが俺の立場上、その理由についてはこの場で話すことはできないが、お嬢さんに非は無いのは確かだから安心して欲しい。それにその理由もこの街の住民だったら、誰もが知っている事だから折を見て誰かに聞いてみるといい」
「わかりました。ありがとうございます」
「おっと、持ち物を忘れずにな!」
金貨と杖を受け取り、もう一度、お礼を言ってその場を離れ、大きな城門をくぐって行く。誰もが知ってるけど言えない事? なんだか、なぞなぞみたい……。
♦ ♦ ♦ ♦
主人公のイメージを液タブを引っ張り出して、描いてみました。
絵も素人なので、この辺が限界です……。