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痛いの痛いの飛んでけ~!


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ありがとうございます。


 こちらの作品は投稿がメインの小説に比べると

ゆっくりですが気長にお待ちください。

今年もよろしくお願いします。




 今朝、エレコは早起きをして街に繰り出していた。一応、働かなくても一日一枚金貨が手に入るスキルがあるので、今の宿に泊まり続ける事は出来るのだが、チップを払うには働かなくてはいけないという意味不明な状態なので、朝から稼ぐ方法を探しにきていた。


 まず、最初の案として回復魔法を覚えて、その治療費で稼ぐというものだったのだが、回復魔法の本を探していくつかの雑貨屋をまわった結果、高すぎて買えないという結論に至った。せめて立ち読みで少しでも読めればと思ったのだが、高価な本を店頭に置いている店はなく実物を見ることも叶わなかった。魔法関連の本は最低でも一冊、金貨五十枚で、買う気(現金)をみせないと見せてもくれないらしい。


「ん~……魔法はイメージすればできるって言ってたけど、わたしは活字から入りたいタイプなんだよね……」


 仕方がないので今度はクラフトを試してみる事にする。何を作ろうかな? どうせなら必要な物がいいよね! 着替えを作るついでに服を何着か作って売れるか試してみる? さっきのお店に生地が売ってたしそうしようかな。そう思い、くるりと振り返り、先ほどまでいた店に引き返す。


「いらっしゃ――なんだ、また、あんたかい! いくら頼んでも本は見せちゃやらないよ!」


「もう、それは諦めました。今度は布が欲しくて!」


「……なら、ゆっくり選んでいきな」


「現金だな」


「あんだって?」


「いえ……」


 怖っ! 意外と耳がいい? こっちを睨んでいるおばあちゃんに気づかないふりをして布を吟味する。


「おばあちゃん! コットンの生地ってないんですか?」


「何だいそりゃ? ウチにはお貴族さまが使うような布は置いてないよ」


 もしかしたら、コットンはまだ庶民には普及していないのかも……。ここにあるのは全部、麻っぽいけど下着の替えがないと困るし、とりあえず、これでいいか。


「じゃあ、これ、両方だといくらですか?」


「う~ん…………そっちが銀貨四枚で、そっちが銀貨三枚だから、合わせて大銀貨一枚でいいよ」


「えっ! おまけっぽく言ってますけど、ぼったくろうとしてますよね? 合わせても銀貨七枚だし……」


「へぇ~あんた! 計算ができるのかい? それに魔法が使えるんだろ! ……うちで働いてみないかい?」


「へっ?」


「何、間抜けな顔をして固まってるんだい」


「えっ! だって、ぼったくろうとしたかと思ったら、今度は働けって言うから」


「今のは試験なようなもんだよ! あたしも計算もできない間抜けは雇いたくないからね。働きぶりによっては本の中身を見せてやらない事もないよ」


 なぬ……。


「……お給金はいくらもらえるんですか?」


「そうだね……あんたが働いてくれたらポーション作りに専念出来るから、一日、大銀貨一枚ってところかね」


「えっ!」


 破格過ぎない? もしかして、ポーション作りで有名な人なの?


「当たり前だろ! 護衛と計算の両方出来る人間はそうそういないからね。それに店の金に手を付けるほどの度胸もなさそうだしね。で、どうするんだい?」


「じゃ、じゃあ…………お願いします」


 何か騙されている気もするけど、大銀貨一枚の誘惑には抗えず承諾してしまった。


「よし、じゃあ、決まりだね! あんたも準備があるだろうし明日の朝から頼むよ。そうそう、その布は二つで銀貨三枚でいいよ」


「あ、ありがとうございます! あっ! わたしエレコっていいます。明日からお願いします」


「あたしはファティマだよ! ところで、あんた、その布は何に使うつもりなんだい? 何だって、服を作って売ろうと思ってるのかい? へぇ~あんた、服も作れるのかい……なら、明日、作った物を持ってきてみな! 良さそうだったらウチで買い取ってあげようじゃないか」


「ええっ! いいんですか?」


 何か、この意地悪そうなおばあちゃんが、急に女神さまに見えてきたよ! 


「もちろんさ! 買値の倍以上で売るから問題ないよ!」


 あっ! 錯覚だった





 ♦ ♦ ♦ ♦ 





  おばあちゃんのお店を出た後、心配事がいくつも片付き、気持ちが一気に楽になった気がする。やっぱり、バイト先と作った物を売る場所を同時に見つけられたのは大きかったと思う。ちょっと、雇い主に癖があるけど、ああいうおばあちゃんは嫌いじゃないし、何とかなるでしょ! でも、よくよく考えたら一日分のバイト代が破格とはいえ、一日の宿泊代の十分の一っていうのは、やっぱり、おかしいんだよね……。でも、あそこ以上に清潔な宿ってあるのかな? せめて同等で安い宿があれば……。あっ! 普通の部屋が空いたら、移らせてもらえばいいのか! その手でいこう!


「いてっ! 何だ、このクソガキ! 気を付けろ! ぶち殺すぞ!」


 突然の怒鳴り声で現実に戻されて顔をあげる。


「ごめんなさい!ごめんなさい!」


「こりゃ、足が折れちまったかもしれねぇな! どうしてくれるんだ?」


「兄貴、治療費を払わせましょうよ!」


 あんな子供から治療費とか頭おかしいの? 見れば、怯えて泣いている小さな女の子を見下ろすように、二人の冒険者風の男が大声でがなり立てていた。


「あんたたち! やめなさい! 何があったか知らないけど! 小さな女の子を泣かすなんて、大人のやることなの?」


「なんだ、てめえ、文句あんのか!」


「あるから、言ってるんでしょう! 本当に足を折られる前、ここから立ち去りなさい!」


「このやろ~……」


「兄貴、やばいですよ! あいつ魔術師ですぜ」


 兄貴らしき男が剣を抜こうとした所を弟分の男が止める。そうこうしている間に野次馬が集まり出し、辺りは騒然とし始める。

 

「また、あいつらか、魔術師さま、やっちまってください」「ぶっ殺しちまえ」「オレの知り合いもあいつらにタカられてひどい目にあったらしい」


 あら~この人たち、大分、嫌われてるみたい。


「お、覚えてろよ! いくぞ! おまえらどけ! どけ!」


 男たちが立ち去ったのを見て、急いで女の子に駆け寄る。そして、男たちが野次馬をかき分けて立ち去ると、集まっていた人たちから歓声が巻き起こり、私に賞賛の声がかけられる。


「もう、大丈夫よ! あっ! 足を怪我しているのね。大丈夫、大丈夫! 泣かないで! 痛いの痛いの悪い奴らに飛んでけ~」


 えっ! 緑色の魔法陣のようなものが空中に浮かびあがり、女の子の膝のすり傷が跡形もなく消えていく。そして、男たちが立ち去った方向から『いて~~っ!』という叫び声が聞こえてきた。


 えええ~~っ! 魔法ってこんなに簡単に出来るのものなの……?






 


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