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7.情報は正確に。

「国王様、エルカイル殿下がいらっしゃいました。」


 次の間に控えていた執事と共にエルカイルが入室してきた。

 ソファでと優雅に紅茶を楽しんでいた男がゆっくりと顔を上げた。


「父上、先程エルアトスが来ませんでしたか?ここで待ち合わせているはずなんですが。」


 あの後、弟の言葉が気になったエルカイルはカメリア姫に急用ができたと謝って彼女を部屋まで送り届けて戻ってきたのだ。急いだつもりだったが遅すぎたのだろうか。


「ああ、先程偵察から部下が戻ってきたと言って報告を聞きに行っている。今戻ってくるはずだ。すまないな、貴重な彼女との時間を。」

「全くです。」


 エルカイルが無表情に応えた。少しの時間でも彼女とゆっくり過ごしたかったのに、余計なことを。


「……冗談だったのだが。」


 国王は呆れた顔でエルカイルを見つめた。


「先程エルアトスから少し嫌なことを聞いたぞ。カメリアちゃんに別人疑惑が浮上した。」


 エルカイルは執事に勧められるままに王の対面側のソファに腰かける。


「それなら俺も彼女から聞きました。エルアトスに姉と間違われたと。」


「姉、『青の宝石姫アメリア』か。確かにその呼び名の方が彼女にしっくりと来るな。だとすると我らはクリークに欺かれた事になる。面白くないな。」


 王がアメリアには見せたことのない冷たい微笑みを浮かべる。一旦敵とみなせば容赦しないのがルイタス国王パントバリウスだ。彼の頭の中では既にクリークへの報復が組み立てられ始めている。


「彼女はカメリアで間違いないですよ。その物騒な顔を彼女に向けたら俺が貴方を殺します。」


 エルカイルは自分の為に用意されたカップに口をつけてこくりと一口紅茶を飲む。

 昔、クリーク王宮に出向いた時に見た綺麗な青い髪の、初恋の彼女。


 あの時の少女がそのまま大きくなって今この国にいる、自分が見間違えるはずがない。


「まあ、私は正直どちらでも構わないがね。あの子はとても可愛くて聡明だし。お前は彼女にメロメロだ。ただ間者となれば話は違う。」


「?」


「クリークには未だに『カメリア姫』がいるらしいぞ。流石に二人いるのは変だよな?」


 パントバリウスの言葉にエルカイルの顔がこわばる。


「あ、兄さんお待たせ。」


 そこへエルアトスが帰ってきた。


「ガセリアを偵察に行っていた部下が帰ってきたから報告を聞いてきたよ。さっき父様に報告したことは少し訂正しなければならないかもしれない。あの国の王子が求婚したのはカメリア姫じゃなくてアメリア姫だった。ごめん。今クリークにいるのはアメリア姫だ。それもクリークにいる者から連絡が来た。」


 無意識に力んでいたエルカイルの身体からゆっくりと力が向けていく。

 彼女が本物だと、違うとわかっていたのに、自分が情けない。


「エルアトス、そういうことは正確な情報になってから報告してくれ。私はもう少しで可愛いカメリアちゃんを虐めるところだったぞ。」


 大きく息を吐き、深く背もたれに沈み込んだパントバリウス。彼もそれなりにカメリアの事は気に入っているようだ。


「しかし、クリークはガセリアとも婚姻を結ぶのか?」


「いや、断った。あちらの王子はアメリアに惚れていみたいでかなり乗り気だったけど結局、姫に会う事もなく振られたんだって。おかげであちらはお怒りらしいよ。力で国ごと手に入れる為に随分大勢の軍勢が城から出て行ったらしい。」


 王とエルカイルの顔がピクリと動く。


「数日で、クリークに到着する予定。」


 今度は間違いない。言ってエルアトスが先程の国王と同じ顔でニヤリと笑う。


「そろそろカメリアちゃんの実家に良い所見せないとね。バリー今出られる軍隊はいくつある?」


 国王は傍らに控えた執事に声を掛けた。


「十部隊は一時間で、残り十部隊は遠征中ですので伝令をだして現地集合になるかと。」

「そう。じゃあ手配よろしく。あと、お前もおいで。」

「ありがとうございます。」


 王に向かい恭しくお辞儀をして去っていく彼は執事であり国王の片腕。

 久しぶりに共に行くことが許され自然と笑みがこぼれていた。


「俺も準備をしてくる。」


 今まで黙っていたエルカイルも立ち上がる。

 出撃の準備もそうだがカメリアの周辺の警備も手配しなければ安心できない。遣ることは沢山あった。彼は父に軽く頭を下げるとそのまま執務室を出て行った。


「気合入っているね…兄様。」


 部屋を出て行く兄の背中を見つめてエルアトスが呟いた。


「そりゃあ、大好きな子に良いとこ見せたいのが男だからね。で、今回もエルアトスは待機組?」


「俺は頭脳派だからね。カメリアちゃんとお留守番してます。それに父様と兄様で十分でしょ?」


「横着者め、まあ良い。少し体を動かしたかったから丁度いい相手だ。暫く手出しできぬように懲らしめてくるから内部の守りを任せたぞ。」


「はーい。」



 一時間後、国王率いるルイタスの誇る精鋭の軍勢がガセリアの侵攻を迎え撃つべくクリーク王国の手前にあるバサミ大平原へ向けて出陣した。

ラブが少ない……。

love…もう少しお待ちください。

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