6.図書館2
すいません、途中で上げてしまいました。
本日連投しています。
アメリアに挨拶をされたエルアトスは彼女の顔をまじまじと見つめると顎に手を当てて少し考え込む仕草をする。
「『金の宝石姫』のカメリア様ですよね。確かその美しい髪の色からなぞられた呼び名だったと記憶していたのですが……。」
その言葉にアメリアはドキリと大きく鼓動が跳ねた。もしや『本当のカメリア』の事を知っている人物がこの国にいたと言う事か。しかし目の前のエルアトスも確証はないような言い方をしている。
「いえ、瞳の色が金ですので……皆様に良く姉と間違えられます。」
王族に対してこれ以上嘘の発言をしたくない気持ちもあり随分曖昧な返事をしてしまった。既にここにカメリアとして来ている時点で大きな嘘つきなのだが。
「そうでしたか、失礼しました。自分は諜報部の長をしているので他国の情報には耳を広げでいたつもりなのですが、間違った情報は早めに修正しなくてはいけませんね。」
エルアトスはアメリアに向かってニコッと微笑む。どうやら誤魔化せたようだ。
「カメリア様、この後なにかご予定はありますか?折角ですから僕の執務室でお茶など如何ですか?ここにはない他国から取り寄せた書物などもありますので是非。」
随分積極的な弟殿下にアメリアは戸惑う。これからエルカイルが来るはずなのだが彼がいつここに尋ねてくるかまでは元々ここに一日いるつもりだったアメリアは聞いていなかった。エルアトスの誘いを無下にするのも角が立ちそうだがエルカイルがここにきて自分がいないとなったらきっと悲しむだろう。
「ごめんなさい。エルアトス殿下。お兄様とここで会う約束をしているのです。」
「それなら兄に使いを出しましょう。」
エルコートしようと差し出されたエルアトスの手を受けるべきなのだろうか。
「久しぶりだな、エルアトス。帰ってきたならここではなく、まず父の所に挨拶に行け。」
低い声がした方を見ると部屋の入口にエルカイルがいた。彼の後ろでは粗く呼吸を繰り返す伝令の姿が。そして近くに控えていたラントムの手が小さくガッツポーズをしていた。
「ああ、残念。じゃあ、カメリア様また今度。」
エルアトスはアメシアに差し出していた手を下ろして苦笑し、そのままクルリと踵を返しアメリアに背を向けて歩き出した。そして丁度こちらい歩いてきたエルカイルとすれ違う形になる。
(兄さんは少し独占欲を抑えてくれないかな。周りが恥ずかしいよ。あと、伝えたいことがあるから、なるべく早く父さんの所に来て。カメリア姫にかかわる事だよ)
すれ違いざまに囁かれてエルカイルの瞳がピクリと動いた。
「後で来てね。」
とっさに振り向くとエルアトスは片手をヒラヒラと振りながら既に部屋を出て行くところだった。
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