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5.図書館1

事情により遅くなりました。


 食事が終わると陛下は執事の彼に引きずられるように公務に戻っていき、エルカイルはアメリアを部屋に送ると騎士たちの鍛錬があると言って去っていった。


 その際に手渡されたのは王宮の別棟にある図書館のカギ。昨日の博物館での様子から自分がそう言ったものに興味がると推測したらしい。


 殿下の予想は大当たりだ。


 アメリアは、『後で自分も行くから』と名残惜しそうに言って去っていったエルカイルをさっさと見送ると直ぐにサブリナを呼んで出かける準備を始めた。


 昨日の博物館に収められていた内容からもここの図書館には自分の知らない蔵書がたくさんあると期待できる。アメリアは好きなジャンルこそないが手当たり次第にいろいろな本を読む事が大好きだ。そしてその結果、自分の知識が増えていくことが楽しかった。ルイタスは武力中心(今はそんなことはないと知っているが)と言われていたので半ばあきらめていたのだが別棟に独立しての図書館があるというのはそれだけで心が躍った。


「サブリナさん、図書館があるんですって。鍵を預かったわ。入口にある管理人室の方が案内してくださるらしいけど一人では不安だからサブリナさんも付き合ってくださいな。ああ、いつものメモ帳は持ち込んでよいのかしら。」


 少し距離御ある別棟まで馬車に乗ることになるのでサブリナが用意した上着を身に着け、小さなバッグに手帳とペンを入れる。本を読む際に気になった単語や後で深く調べたい事柄をメモしておき後でゆっくりとそれについて調べるのもアリシアの楽しみの一つだった。


「そうですね。持って行って管理の方にお伺いしましょう。」


 本の事になると、とたん口数が増えるアメリアにサブリナは苦笑する。先程頼んでおいた馬車が準備できたとの知らせが届いた。





「ここが第一書庫になります。第二第三書庫については王家所有の蔵書がある為殿下が付き添う予定です。」


 馬車が到着した建物は想像していた以上に大きかった。馬車が止まる音を聞きつけた管理人のラントムが直ぐに挨拶に出て来た。アメリアがエルカイルから預かった鍵はラントムに渡すとそれを使って彼は部屋奥にある鍵箱を開けた。


 中には形の違う銀色のカギが三つ。


「第一、第二、第三書庫の扉の鍵です。今から行くのは第一書庫です。そこは特定日には一般にも開放されていますので閲覧に制限はありません。最近の流行りの物は適度に揃えられていて定期的に俺が補充しています。カメリア様は何かお読みになりたい書物はありますか?案内しますよ。」


 ラントムは管理人というだけあって書庫の配置にも詳しいようだ。しかしアメリアはゆっくりと首を振った。


「今日は見学をだけにしておきます。こんなに広いからさっきから目移りしてしまって……既に目が回りそうです。あ、でも貴方のお薦めの本があったら教えてください。」

「俺の?」


 初対面でお薦めの本?

 アメリアと並んで歩いていたラントムが聞き返す。


「はい。自分で選ぶと、どうしても内容に偏りが出来てしまいますから。特に本に詳しい人や

 その人の事を良く知りたいなっと思った人に出会ったときにはお薦めの本を聞いているんです。……後で殿下にも聞こうと思っています。」


『殿下にも』のあたりでほんのりアメリアの頬が赤くなったのを見てラントムまで恥ずかしい気持ちになった。そして良い事を思いつく。


「カメリア様。俺のお薦めの本はまた今度お教えしますから、今日、まずこの図書館で一番最初に読むべき本をお教えしましょう。」


「一番初めに読むべき本?」


 アメリアが首をかしげながら彼を見つめる。

 その仕草はラントムがドキッとするくらいに、かなりかわいい。


「そ、そんな顔を俺相手にしていたら殿下に怒られますからやめてください。はい、本のある場所に着きましたよ。」


 ラントムは図書館の奥にあるガラスケースの前に来ると立ち止まった。そしてガラス戸をそって引くと一冊の小冊子を取り出してアメリアに手渡す。そこには黒い飾り文字で『王家の家族』と書かれている。


「取りあえず立話もなんですからそちらのソファ席にどうぞ。今お茶を用意して貰います。」


 低いテーブルとソファが置いてある場所にアメリアを案内してラントムはメイドにお茶を頼むために入口から出て行ってしまった。アメリアはふかふかしたソファに腰かけるとそっと小冊子を開く。初めのページはこのこの国の成り立ちが書かれていた。小国だった祖先が武力で各国との戦を経て大きくなり、その後は大国の一角となり諸国と協力体制を持つことで国の内外をまとめあげ現在に至る。決して武力だけでは無い、若いながらも勢いのある良い国に思えた。


 そして次のページ。

 《国王:パントバリウス・ルイタス》

 それは今朝、食堂で会ったあの陽気なおじさん、もといこの国の今の国王が威厳を持って王座に座っている写真だった。そう言えば名前を知らなかったとボンヤリと思う。自分は身代わりできた嫁だからとどこかで甘く見ていたのかもしれない。相手の国の事を本当に知らないまま来てしまったのだと思いつくづく恥ずかしくなった。


 次のページは家族の集合写真。


 王と王妃そして黒髪の幼子を抱えた女性、その隣には金髪の少女と見間違えそうなくらい可愛らしい男の子。


 《王家一家 国王パントバリウス 王妃ユリアンナ 側妃ワカナリエ 第一王子エルカイル 第二王子エルアトス》写真の下方部分に説明が書かれていた。


 予想はしていたがやはりあの子可愛らしい男の子はあのエルカイル。どうしたらあんなに可愛かった幼少期から今のムキムキの男らしい男性に育つのか、不思議すぎる。


「お茶をお持ちしましたよ。ああ、そのページ見ました?凄いですよね王家の不思議の一つですよ。」


 ラントムがお茶の乗ったワゴンを押して戻ってきた。サブリナが受け取って三人分のお茶を用意する。


「皆さんその写真をみた後にエルカイル様本人を見てため息をつくんです。そこまでが。この本のお楽しみの一セットです。」


 どうやら彼はそれをアメリアに見せたかったらしい。


「そう言えばこの側妃様抱かれている男の子、第二王子のエルアトス殿下はどちらにいらっしゃるんですか?」


 王妃と側妃については既に亡くなっていると言う事は聞いている。しかし第二王子については存在自体全く知らない事だった。


「ああ、エルアトス殿下ですか…それについても少々残念な逸話がありまして。」


 やはり幼い頃に既に亡くなっていたのだろうか?存在自体隠しているなら余計なことを言ってしまったのかもしれない。


「あんな天使のような殿下だったのですが……」

「何を話そうとしているのかな、ラントム?」


 ラントムが口を開きかけた時、誰かが彼の肩をトンっと叩いた。ラントムの顔がビクッと固まる。


「殿下、おかえりなさい。」


 ラントムは慌てて男の方を振り向くと挨拶をした。


「遠征からの帰還、早かったですね。お疲れ様です。」


 ラントムより少々年若い位のすらりとした黒髪の青年がニッコリと笑う。


「兄が、お嫁さんを貰うって言うんだから慌てて帰って来ちゃったよ。初めまして、カメリア姫。僕は弟のエルアトスです。」


 男らしい筋肉質なエルカイルとは対照的に細身の体系に甘い中性的な顔立ちの青年。エルアトスと名乗った青年がふんわりとアメリアに微笑み手の甲にそっと口づけをする。まるで童話に出てくるワンシーンのよう。


「丁度、模擬の遠征に出ていましたのでお会いするのが遅くなってしまいました。どうぞ仲良くしてください。」


「こちらこそ、カメリア・ヴァイアス・クリークと申します。よろしくお願い致します。」


 アメリアは慌ててお辞儀をした。

ちょっと忙しくなってしまいましたので

週一もしくは週二回くらいの不定期になりそうです。

構想はねってあるので途絶えることはしないはず。


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