その1
全3話です。
連休の投稿。
あの消し去りたい出来事から早2年。
あのトラウマで今は海が少々苦手。
「お前達に縁談の申し込みだ。」
朝から俺と弟のアナリアンケは共に父に呼び出された。
「僕たち、『二人に』ですか?」
父の言葉に違和感を感じているとアナリアンケも同じことを考えていたようだった。
違和感。それはいつもの流れならまず王位継承権のある長男の俺に話しが来ると言う事。
そして、断る。
それなら、アナリアンケにと話しが来る。
それならってなんだよ!
父、激怒。
母と一緒になってからは随分丸くなったと言われているが、怒らせると相手が再起不能になるまで追い詰める。おかげで婚姻が成立するわけでもないのに今でも属国が増える一方だ。
「ああ、『どちら』でも良いそうだ。」
父がニヤリと笑った。
これ、全てすっ飛ばして激怒ってやつ?
意図せずゴクリと兄弟ともに喉が鳴った。
「ちち~、マリーも『えんだん』したーい。」
誰も発言することが出来ない凍りついた広間に一筋のそよ風が、ふんわりと吹いた。
声のする方を振り向くと母アメリアに抱かれた妹のマリアンヌとその隣には祖父のパントバリウス様。
長年王位にいた祖父はマリアンヌが生まれて直ぐに王位を父に譲り引退した。
理由はマリアンヌとの時間を出来る限り多くとりたいから。
だけどやっぱり祖父の威厳は衰えていないのでつい名前の後に『様』が付いてしまう。
「マリーちゃん、そんな悲しいことお爺ちゃんはして欲しくないなあ?」
マリーの頬にチュッとキスをする祖父。
うん、きっとそんな縁談が来たら国ごとなくなる。マリアンヌは母の腕から下ろされるとそのままテトテトと歩いて俺達の側まで来てぎゅっとその小さい手で俺の人差し指を握った。
「じゃあ、マリーは兄さまたちのえんだん見学する~。」
ニッコリ笑うマリー。
ん?おかしな展開?
玉座から父の深いため息が聞こえた。
父の後ろでは予定表をパラパラとめくる宰相のバリーの指だけが動いていた。
◆◆◆
マリアンヌの一声から始まったそれは相手の都合などお構いなしに着々と進み、父が取りあえず会うだけなら可能という内容の返事をしてから一月後。遂に見合い相手が到着した。
断られるのが決まっているのにわざわざ遠い国から来るなんて可愛そうなことだ。
エルタラサは自室の窓から庭に用意された椅子に座っている女性の頭を見下ろした。
アレがヤン国の姫か。
逆方向からアナリアンケが歩いてくるのが見える。
女性とお付きの侍女が慌てて立ち上がった。
そのままお互い挨拶し合ってアナリアンケが姫を座る様に促し、二人は着席。
この意味のないお茶会が静かに始まったのを見届けてエルタラサはゆっくりと自室を出た。
「エルタラサ、何処へ行くつもりですか?」
あのお茶会が終わるまでゆっくり時間をつぶそうと図書室へと足を向けたところで母に声を掛けられた。どうやらサボりはバレていたらしい。
「アナリアンケが話相手に出向いているのだから俺まで行く必要はないでしょう?」
どうせ断る相手なのだからわざわざ俺まで挨拶するまでもない。アナリアンケにも気が向いたら行くとだけ伝えてある。
「エルタラサは、女性が他国までわざわざ来るという事の苦労を考えなさい。今までは書面での返事のみだったけど今回は違うのよ?マリーの我儘だからと言っても相手にそれは通用しないわ。断るにしても一度は会うのが礼儀。」
静かに語る母。
こういう時の母には逆らわない方が良い。何といっても言い合いになれば援軍が父、祖父、マリアンヌと強敵だらけだ。
「わかりました。」
確かに顔を出さないというのは少し引け目があった。
エルタラサは仕方なく行き先を変更することにする。
さて、遅刻した言い訳をどうやって胡麻化そうか。
ちなみにマリアンヌを生んだときはアメリアちゃんは100%人間です(笑)
あれから10年ほどかけて人魚の生気を抜きました。




