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私、身代わりで嫁ぎましたが王子に深愛されています  作者: 長井かこ
番外編 赤ちゃんが生まれます!
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【番外編】7

7最終回 

 

「生まれましたね……。」

「ああ。」


 アメリアの傍らですうすうと寝息を立てる金色と青色の双子。先程までの大騒ぎからは想像できない程今は穏やかな顔で眠っている。


 訳も分からず始まり、気が付けばすべてが終わっていた。

 ソファではソニンがぐったりと寝そべっている。かなり力を使わせたらしい。


「その……リアは大丈夫なのか?」

「はい。今は寧ろ産む前より元気な気が……します。」


 少し、手足にしびれがるがそれは気のせいだろう。

 思っていたよりも体調が良く驚いているほどだった。


「……そうか、よかった。」


 エルカイルがうっすら涙を浮かべて、そっとアメリアを抱きしめる。


「……名前、教えてください。」


 何と返して良いのかわからず、アメリアは気になっていた子供の名前を聞いてみた。


「エルタラサとアナリアンケ。」

「やっぱり考えてましたね。」

「……仕方がないだろう。あの時に教えていたら君は満足して真珠玉になってしまうと思ったんだ。」


 少し怒ったように言われ、あのときの言われようもない不安からその可能性もあったと少し反省する。


「さあ、大仕事が終わったのだから皆で食事にしましょうか?」


 別室で食事の準備をしていた使用人から用意が出来たと連絡を貰ったエイミイ母が笑顔でそう言った。







 その夜、不思議な感覚で目が覚めた。

 例えるなら手先と足先から自分が消えていく……そんな予感。


 流石に疲れが出てきため今夜は一人で眠りたいと願い、赤ちゃん二人とエルカイルは別室で休んでいる。だから部屋のは自分以外誰もいないと思っていたのだが、目を開けるとそこにはエイミイ母とソニン、父のラウールがいた。



「やっぱり、ダメだったわね。」

「ああ、一人ならまだしも双子のやんちゃ坊主を産むとは流石アメリアだな予想外だ。」


 ソニンが頭に手を添えて苦笑している。


「使えるだけの力を注いだが、一晩もたないかもしれないな。」

 ソニンの顔が今度は悲しそうに歪んだ。

 そして、判ってしまった。


「私、真珠玉になるのね。」


 一瞬でも子供達を抱けて、二人の素敵な名前も教えて貰った。その思い出だけでも十分ではないか。


 悲しい顔で三人が見つめる中、アメリアはニッコリと笑った。


「後の事はお願いします。」


 実はこっそりエルカイル宛に手紙を書いていた。それを後で渡して貰おう。


「そんなことはさせないわ。」

「そうだな。」


 エイミイが言い、ラウールが頷いた。


「私は貴方をラウールに託して一人にしたことを今でも後悔しているの。だから同じことはさせたくない。」

「耳が痛いな。」


 隣でラウールが顔をそむけた。


「だから今の私の生命力を全部あなたにあげる。今日の日のために極力力を強めておいたから……これなら完全にアメリアの身体は元に戻る。」


 エイミイがそっとアメリアの頭を撫でた。


「でも、そうしたらお母さんの方が……。」


 きっと真珠玉になってしまう。

 アメリアは自分に孫が出来ることを喜んでいたエイミイを思い出して泣きたくなった。


「大丈夫よ。こう見えても真珠玉になるのは二度目なの。直ぐに自我を取り戻して孫たちを見に来るわ。」


 エイミイはおどけて言った。


「すまんな、アメリア。これは私達で事前に決めていたんだ。もしお前が危険なことになるならエイミイがアメリアの『身代わり』になると。」


「父様、父様だってやっとお母さんに会えたのに……」


 好きな人と会えない時間と言うのがどんなにつらいことなのか、アメリアはエルカイルと一緒になって思い知った。それを長年続けていたラウールがやっと母との時間を作る事が出来たのに。


「良いんだ。幸い私にはエイミイがくれた永い時間がある。ゆっくり再会を夢見ながら国や孫の世話でもするさ。」


 自国と孫を同列……。

 一瞬アメリアの中で自身に起こっている危機感と母からの愛情の感動が薄れた。


「さあ、時間がないからやるわよ。ソニン、そう言う事だからまた私は海底から脱走するからよろしく。」

「いやそれは、王として許可できないんだが。」


 ソニンが慌てて否定する。


「なら、ラウールのもとにずっと置いてもらうわ。地上でも少しずつなら生命力を回復でするもの。残念ながら貴方が王の時代にはもうこうやって会えないかもしれないけど元気でね。」


 あっさり言われ更に困惑するソニン。


「わかった。許可する。私の力も多めに注ぎますから、だから海底で早く復活して下さい。」

「初めからそう言えばいいのに。じゃあ、暫く会えなくなるけど元気でね。」


 エイミイはそうにこやかに言って、まばゆい光の中に消えた。


 アメリアの中に沢山の力が入ってくる。以前治療と称してエイミイから時折貰っていた物とは比べ物にならないほどの濃密な力の塊、彼女の生命そのものだ。


 それは優しく、とても暖かい。

 遠い幼い頃に感じたことのある母のぬくもりだった。




 光が収まるとラウールの手のひらには大きな虹色の真珠が、一粒。


「これが彼女なのか。なんて美しい……。」


 ラウールはその美しさに暫し見惚れ、そっとそれに口づけをした。



「私が持っていたらダメなのか?」


 近づいてきたソニンに向かって尋ねる。


「ああ、お前が持っていたら叔母は永遠に近い時間を真珠で過ごすことになる。そんなことは嫌だろう?」

「ああ、そうだな。」


 ラウールは仕方なく真珠をソニンに手渡した。少しだけ真珠が残念そうに光ったのは気のせいだろうか。


「じゃあ、私は叔母を早く海底に安置したいので帰る事にする。先程の約束もあるから季節ごとにはこの館に子供を連れて遊びに来てくれ。」


 ソニンは返事も聞かずに海の中へと消えていった。








 季節はめぐり、ある夏の日。

 アメリア達は夏の余暇を海の館で過ごしていた。


「エルタラサ、アナリアンケ。そろそろ海から出なさい。」


 夏の暑い日差しが我慢できず、子供たち二人は少しだけと言っていた水遊びからどれだけ呼んでもに戻ってこない。


「良いではないか、まだまだ子供だ元気ならそれが一番だ。好きなだけ遊ばせてやりなさい。」

「父様は黙っていてください。」


 すっかり孫バカとなったラウールはエルカイルと共にワインに口をつけながら久しぶりの余暇を満喫している。


 そこへやっとエルタラサが海から戻って来た。


「さっき海の中で、綺麗な女の人からこれ貰ったよ。」

「海の中?」


 彼の手には少し大き目な真珠が一粒。


 後ろでガタンと大きな音を立ててラウールが立ち上がった。

 彼の瞳が驚きに見開かれている。


「エルタラサ、それをお爺ちゃんに見せなさい。」


 エルタラサは頷いてそれをラウールに渡した。

 大事そうに受け取るラウール。




「おかえり、エイミイ。」



 震えた声で呼びかけ、そっと口づけ。

 その瞬間、優しい光が辺りを包む。





 光の中で誰かが、『ただいま』と笑った。





 終わり







お付き合いいただいた皆様に感謝です。

ここまでで当初の考えていた構想がすべて終わりました。


読んでいただいた方、ありがとうございました。

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