49.末永くお幸せに!
「やっと元に戻ったんですね、兄上。」
「ああ、アメリアが随分世話になったな。」
部屋にエルアトスを招き入れ、三人はソファに落ち着く。
「あと三日ぐらい忘れてくれていたら僕とアメ様が婚約で来たんですけどね?」
エルアトスがアメリアに向かってニッコリと微笑んだ。
「その呼び方やめろ。」
「え?『アメ様』ですか?」
エルアトスがワザともう一度言う。
「怒るぞ?」
「わあ、心狭っ……ごめんなさい。」
じろりとエルカイルに睨まれエルアトスは慌てて謝罪。
アメリアはクスクス笑った。
そして、一つ気になっていたことを口にする。
「カメリアの事なんですが、どうしましょう。」
彼女はきっとエルカイルと結婚してルイタスの王太子妃になれると思っている。少々思い込みが激しい彼女の事なのでエルカイルが正気に戻ったとしてもそれを黙って受け入れるのかが心配だった。それを思うとアメリアは悲しくなって隣のエルカイルを見つめた。
「ああ、その事なら僕が伝えてくるから大丈夫。その代わり上手く行ったら僕が『アメ様』って呼ぶのを許して。」
ニヤリと笑うエルアトス。
エルカイルはムスッとしながらも頷くのだった。
式は盛大に行われた。
アメリアの不安は良い方向にハズレ、城にある大聖堂で大勢の招待客に祝福され二人は無事結婚式を挙げた。そして今日は、やっと数日かけて各国の要人を見送った二人がようやく侍女の用意したお茶を楽しむ余裕が出来たところだった。
そこへ丁度式の後処理を手伝ってくれていたエルアトスが花束を持って入ってきた。
「兄上とアメ様。カメリア様とクリーク皇后様からお花が届いていますよ。」
実はあの後、エルアトスと話をしたカメリアはどういった心境の変化か結婚式のために到着した父と入れ違いに逃げるように城を出て帰国した。
「一体どんな魔法を使ったんだ?」
エルアトスから受け取った花束を侍女に渡しながらエルカイルはアメリアが疑問に思っていたことと同じことを口にした。
「ん、兄上が責任をとって『王族ではなくなるけど』カメリア姫と結婚したいと言っていると伝えただけだよ。」
一瞬の沈黙。
「だから、彼女は兄上との結婚より《ルイタスの王太子妃》になりたかったんだよ。僕は親切に兄上と結婚してもそれは実現しないことを教えたあげただけ。」
カメリアは勿論納得できなかったようで激怒したらしいが、それが当初からの王と二人の王子の条件だったと説明されると彼女はそのまま荷物をまとめて出て行った。
「だから、こちらに挨拶もなかったのか。」
帰国の挨拶などしたら責任を取ると言ってエルカイルに引き止められると思ったに違いない。
「これで暫くはカメリア姫はこちらに近づかないでしょう。」
今頃悔しがっているであろう妹姫を思い、カメリアからのメッセージカードの(おそらく定型文)「末永くお幸せに!」という文章を見つめアメリアは優しく微笑んでいた。
終わり
本編完結です。
出産編を考えていますので少ししたら更新予定。
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