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37.不老不死って? 2

 

 遠目に海が見える。

 そして、その先に白い小さな屋敷。


 白から遠く離れた海辺の一角に王家の直轄地があり、そこには建物が一つ。

 立ち入る権限があるのは国王とアメリアだけだという。


 城で人魚について曰くのある話を聞かされた後、一番に確認したのは現国王のラウールの年齢。驚くことに父のパントバリウスと同年齢だった。そう考えれば外見はかなり、若いと言わざるを終えない。本人に尋ねたところやはり当時その可能性については聞かされたという。しかし完全に歳が止まっているとはいえず、現在も緩やかに老いてはいるらしい。


 エルカイルの表情に何かを感じたのか、何がそんなに心配か?と、ラウール王に笑って問われた。

『彼も』悩むことすらしなかったと言う事だ。


 しかし、アメリアはそうではない。一時の気の迷いで後悔して欲しくないと真剣に訴えてきた。


 しかし心配されているらしい俺からしてみれば、未来の『かもしれない』事で婚姻を避けるなど馬鹿げている。


 そして行き着いたのは彼女の実母の存在だった。

 既に死に別れていると聞かされていたが最近になって生存が判ったという。先日まで一緒にいたと聞いて驚いた。まだ万全の体調ではないらしく静養中だとか。


 ならば話を聞くために挨拶もかねて会いに行こうと言う事になったのだ。



 ようやく建物に到着して馬車から降りてみると、遠目からは小さく慎ましやかな白い建物見えたそれは、離宮とは言えないが大貴族が所有する別宅ほどの大きさだった。使用するのは年に数回程度のはずだが庭木もしっかりと手入れされ大切にされていることが分かる。


 入口の大きな扉の前には一人の若い女性が立っていた。


「エイミイ母様。」


 エルカイルのエスコートで馬車お降りたアメリアはそのまま立ち止まることなくその女性の前に立ちニコリと微笑んだ。


「エルカイル様を、私の大切な人を連れてきました。」

「ルイタスの王太子、エルカイルと申します。」

 促され慌てて挨拶をした。


「初めまして。来てくれて嬉しいわ。こんな所では失礼ですから中へどうぞ。」


 アメリアの姉と言われても疑う事はない、はかなげな女性がふんわりと笑顔を作ってドアを開けてくれた。



 屋敷に入るとアメリアは用事があるらしく母親と共に入り口わきの階段を上がっていった。エルカイルだけが待機していた侍女に先導され応接間に案内される。


 ついた先は煌びやかとはいいがたいが、趣味の良さがうかがえる調度品がちらほらと飾られている少し大きめな談話室と言ったところだろうか?。座り心地の良いソファに座ると香り豊な紅茶が出てきて感心した。


 折角なので紅茶に口をつけているとカチャリと奥の部屋のドアが開く音がする。。

 ほどなくして二人が入ってきた。


「お待たせしました。」

「せっかく来てくれたのに、一人にしてしまってごめんなさいね。」


 申し訳なさそうに謝るアメリアの母親は気のせいか、先程より少しだけ疲れた表情をしている。


「いや、ゆっくりさせて貰っていたので……。」


 エルカイルは立ち上がって軽くお辞儀をした。

 そして、やはり気になるのでアメリアに声を掛ける。


「アメリア?母上は調子が宜しくないのでは?」


 せっかく来たが相手が不調の時に込み入った話をするわけにはいかない。それなら日を改めようかと思いを巡らす。


「あ、大丈夫よ。この子の身体の具合を見て少し治療の追加をしていたので疲れただけよ。少ししたら回復するわ。でもちょっと辛いから座るわね。」


 彼女はそう言うとさっさと一人掛けのソファに腰を下ろしてしまった。

 アメリアは少し考えてエルカイルの隣に座った。


(治療が必要なのか?)


 隣に座ったアメリアにエルカイルが心配になってそっと囁いた。

 その問いかけにアメリアは優しく微笑み返す。


「あら、仲が良いのね。この子の治療は急激に人魚の力の使ったために少しだけ生命力が弱まってしまったから、その分を治療で元に戻しているところなのよ。海底ではソニンが、地上に出てきてからは暫く私がやっていたの。」


「生命力って……死にかけたってことか?」


 驚いてアメリアを見ると何故か目を逸らされた。


「先日、いっぱい叱られたからもう………怒らないでください。」


 そう言って手元のお茶を啜るアメリア。

 思い当たるのは一つしかなかった。


 あの夜は危険だった、それだけではなく死にかけていたなんて。


「……君はなんてことをしたんだ。」


 苦言を言う代わりにそっと彼女の手を握った。


「そんな泣きそうな目をさせるなんてアメリアは罪な子ね。大丈夫よソニンは沢山この子に注いだし、私も治療は得意。今日はちょっとした調整よ。」


「ありがとうございます。ソニンさんにもお礼を言わなければ……。」

「あの子は、アメリアの事を気に入ったみたいだから大丈夫。きっとこれからも無条件に

 アメリアを守ってくれるわ。」

「無条件にですか?」



 少しばかり気になる言い回し。

 エルカイルはエイミイ母をじっと見つめる。



「人魚はね一途なの。だから許してあげて。」

「……人魚の王と恋敵ですか。ちょっと荷が勝ちすぎるな……。」


 彼女の言葉の意味を理解してエルカイルは苦笑する。そんな相手がいるのなら今のアメリアの悩みはすぐに解決するではないか。


 彼はらしくもなく、つい下を向いて直ぐには立ち直れない。


「エルカイル様、私は断りましたよ?」


 彼が何を考えたか悟ったエメリアが慌てて下から覗き込むようにして視線を合せてきた。


「海に残れって言われましたけど、断りました。」

「良かったのか?」

「私、海に残った方が良かったですか?」


 不思議そうに言われて、思わずどう答えてよいか迷った。

 そっと手を彼女の頭の上に乗せる。


「いいえ、断ってくれたのならうれしいですよ。」


 そのままそっと撫でると嬉しそうに目を細めてくれた。




 こほん。


「あっ。」


 小さく咳払いが聞こえてはっと我に返った。


「それ以上は、後にして貰っていいかな?」


 いや、そういうつもりはないのだが。

 顔を赤くする二人。

 そして本来の目的を思い出した。



「実はその事について少々お聞きしたい事があるのですが、良いでしょうか?」



まだ続きます。

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