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33.とりあえずデート(王と王妃の待ち合わせ)

本日二話目です。

続けて読んでいただいている方はお気を付けください。

 ラウール王は王宮内を足早に歩いていた。


 待ち合わせ場所が地味に遠い。

 向かう先は王妃の住む区画にある中庭。


 ほとんどあちらに入ったことがないので距離感を間違えた。


 補佐官のカイが言っていた通り少し早めに出ればよかったのだが目の前の書類の束がどうしても気になって時間が押してしまったのだ。


「陛下、あちらが近道です。少し手荒ですが時間には間に合うかと。」


 心配してついてきたカイが中庭に向かう廊下ではなく一つのドアを指差す。

 あの部屋に入れと言う事か?

 城の全てを知っているわけではないがどう考えても不自然なのだが。


「私でも知らない道をなぜお前が知っている?」

「それは聞かないでいただきたいです。」


 入ろうとしないラウールに焦れたのかカイは自分からその扉に近づいてノブを回した。施錠してあるはずのドアがすんなりと開いてしまい更に驚く。


「ここは城の使用人の簡易休憩室です。今の時間は誰もいませんからご安心ください。奥に王妃様の中庭に繋がる通路があるんです。」

「そうか、緊急事態ゆえすまんな。」


 どうやら使用人の手間を省くため彼らの休憩室をはさんで王の執務スペースと王妃の住む区画が繋がっているらしい。彼は室内の環境をなるべく視界に入れないようにして室内を縦断すると奥の扉を開けた。


 金色の刺繍が美しい絨毯が引かれた廊下に出てそこが既に王妃の住む空間だと判る。すぐ先には花々が咲き誇る大きな中庭。


 そこにユリ王妃がいた。


「まあ、初めて時間通りにいらっしゃいましたね。」

「ああ」


 どうやら間に合ったらしい。




「それで、今日の御用件は?」


 部屋に入り侍女が用意したお茶に口をつけ王妃が訪ねた。


「判っているだろう?何故アメリアの結婚の邪魔をする。」

「邪魔ではありません。検討して欲しいとお願いしました。この国の姫として最善の相手を選ぶべきだと私は思いますので。」


 そう言って一つため息をついた王妃にラウールは少しばかり違和感を覚えた。


「もしかして怒っているのか?」

「え?」

「いや、そんな気がしただけなのだが……貴方が人前でため息をつくなど私の記憶の中では数えるほどしかない。」


 ユリ王妃とは幼少期からのつき合いで、幼い頃より婚姻が決まっていた仲だ。色々あって一度は縁が切れたが今は二人で国を支えている。だから彼女の事は良く知っているつもりで。だからこそ、なせ今回この様な騒動を起こしたのかが疑問だった。


「そういえば君がため息をついた後は決まって癇癪を起こしていたな。」


 幼少期の彼女のことを思い出しついニヤリと笑ってしまい慌てて顔をそむけた。

 カチャリとカップが当たる音がして視線を戻すと王妃がじっとラウールを見つめていた。


「そんな昔の事、忘れてください。それに怒ってなどいません。」

「そうか、すまない。」


 ラウールが謝ると王妃はそっと目を伏せた黙ってしまったので仕方なく、彼は本題に入る事にする。


「……やはりアメリアの事が嫌いなのか?」


 薄々感じてはいたが王妃にとっては娘はカメリアのみなのだろう。だから自分の娘をないがしろにされて進む今回の話に納得がいかないのだと、ラウールはそう思っていた。


 すると王妃はゆっくりと首を左右に振る。


「そうではないのです。ただ自分の時の事を思い出してつい口を挟みたくなってしまいました。恋愛ど皇族には不要だと彼女に知って欲しかった。大丈夫です署名は致します。」


 どうせその要件だとは理解している。

 だから本当はその為に一々時間を作るまでもないことだった。

 そう、少しだけ彼に意地悪をしたかっただけなのかもしれない。

 王妃は話は終わったと退出のために立ち上がろうとする。




「……シルフォードの事か?」


 王妃の目が大きく見開かれた。





 シルフォードは公爵家の長男でユリ王妃の二人目の婚約者だった人物。




 当初ラウールと婚約していたユリは王妃になる事を義務付けられそれだけが生きがいだった。しかしいつの間にかラウールはエイミイという女性に出会い彼女を王妃にすると決まてしまった。婚約破棄をされた形となったユリは勿論王家から手厚い謝罪と共に好条件の婚約者を紹介されたのだ。


 それが公爵家の嫡男シルフォードだった。


 初めはぎこちなくであったが二人は徐々に打ち解け恋をして自然と結婚へと進む筈だった。





 それが一通の手紙で一転した。


 《カイナス公爵家ご息女ユリ様に再度王太子との縁組を願う。》






 王家からの書状はお願いと称した命令だ。

 ユリに断る権利はなかった。


 シルフォードは仕方がないと言ってくれたがユリの心はそうはいかない。一年の猶予を貰いやはり無理だと断り修道院に行こうと決心がついた頃、シルフォードが病に倒れあっけなく逝ってしまった。


 それからは流されるままに王家へと嫁ぎカメリアが生まれた。



「貴方には大変申し訳ないことをしたと思っている。」

「仕方がありません。王家の為です。」


 無表情に王妃は答えた。


「そしてカメリアは、彼の子だろう?」

「ご存じでしたか……。」

「ああ、少々タイミングがな……合わないかと。」


 何故か照れるラウールを見て王妃の顔が少し緩む。


「でも、生まれた時から私の娘だ。それは変わらない。それに貴方の事も大切の思っている。」


 ラウールはじっと王妃を見つめた。


「それは嬉しいですね。でもそこまでお知りになられているならやはりこのままという訳にはいきません。場外にある離宮を一つ頂けますか?そちらに移ろうと思います。」

「ここは嫌か?」


 捨てられた犬のような目でラウールが王妃に尋ねる。


「そうですね。少し色々思い出してまた、あの子に意地悪をしてしまうかも。」

「それはちょっと困る。」


 それを見てクスクス笑うユリ王妃。


「別に陛下とお別れをしたいわけではありません。一緒に国を支える友人としてこれからも寄り添いますから。……ラウール様。」

「なんだ、ユリ?」


 昔の呼び名にドキリとした。



「ずっとお慕いしていました。」

「ああ、知っている。」


 ユリ王妃はゆっくりとこの国一番の美しいお辞儀を披露するとそっと退出した。
















取りあえずいろんな人のデートを書いてみました(笑)

本命のデートは少し複雑なことになりそうなので来週土曜日午後にアップ予定です。



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