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30.調印式2

いつもお読みいただきありがとうございます。


 すまなさそうに頭下げて牧師が帰っていくを見送り、一同は改めて座席に座りなおした。後から来た二人にも即席の座席が用意される。



「……アメリア、エルカイル殿すまない。」

「……お父様。」


 アメリアの父であるラウールが改めて二人に頭を下げる。

 今回の発端となった二人の王子は無言で席に座ったままだ。何を考えているのかわからない王妃に至っては牧師よりも先にカメリアと退席してしまった。


「牧師は見合わせを宣言はしたが書類は置いていってくれた。先程こっそり教えてくれたが宣言によって中断したからと言って牧師の同席が再度必要なことはないそうだ。通常通り署名をして後日教会へ提出してくれてかまわないと言っていた。」


 ラウールが言いたいことは、検討などせずにこの場さっさと署名を済ませてしまおうと言う事なのだ。ちらりと離れた席に座る二人を見たがユータスについてすっかり目を伏せてしまっているし、レイモンドについても小さくため息をついたのみなのでその可能性は考えていたのかもしれない。


「牧師不在の場合は親族の立会人の署名が必要になりますよね?四人必要かと」

 エルカイルがゆっくりと口を開いた。


「うちは父と弟がいますがそちらの……ユリ王妃は大丈夫なのですか?」


 彼は少し悲しそうにそう言うとアメリアの手をぎゅっと握る。

 そもそも王妃が異議に同調したのが今回の問題なのだ。流石に義理とはいえ母親が婚姻に問題ありと唱えてしまわれたことに流石のアメリアも動揺を隠させない。


「俺は何かしてしまったのでしょうか……やはり一度婚約破棄などしたから気分を害されたか……」

「エルカイル様……。」

「そうではないと思うが……そうだな彼女の説得がまず必要か。いや、彼女でなくとも署名だけなら……」


 そう言ってラウールは何かを考え始めて黙り込む。


「あの……」

「なんだね?」


 小さく声をあげたレイモンドにパントバリウスが直ぐに反応する。


「提案なのですが、僕たちと話し合う事が王妃様を納得させる事になると思うんですが?」

「ん、どういう事だ?」

「あちらの王妃様は検討をさせたいんですよね。なら一度アメリア姫が改めて僕たちの中から選べば良いと思うんです。そうすれば王妃様も納得されるのでは?」

「……既にアメリア嬢とうちの息子は結婚の約束をしたと思うが?」


 パントバリウスの冷たい視線がレイモンドに浴びせられる。


「それはまだバチェリ公国の王太子である私との縁がなかった頃の話です。それにユータスもまだアメリア姫にお伝えしたい事もあるでしょう。それを踏まえて再検討していただきたいと申し上げています。」


 レイモンドが言葉遣いを改めて怯むことなく真剣な目で彼を見つめ返した。

 その視線に少しばかりパントバリウスに瞳が興味深いものを見つけたようにキラリと煌めく。


「ほう、時間さえあればアメリア嬢がウチの息子よりも自分を選ぶと言いたいのか。」

「父上?」


 何やら怪しげな会話の流れにエルカイルが少し慌てて声を掛けた。あの雰囲気の父は油断していると暴走するのだ。


「エルカイル、お前は喧嘩を売られたんだぞ?少しは自覚しろ。」


 彼はぴしゃりと窘められる。


「おい、ラウール。」

「ん、ああ?」


 急に声を掛けられて考え事に集中していたアメリアの父は顔をあげた。


「この婚約、少し待て。バチェリ公国の小僧、少し時間をやるからやってみろ。そして、さっさとフラれろ。」


 室内が一瞬シンと静まり返る。

 そしてレイモンドが嬉しそうに声をあげた。


「ありがとうございます。ご期待に沿えずご子息が残念な結果になられてもお恨みになりませんようお願いしますね。」

「承知した。誰の名前が書かれた婚約宣誓書だろうと立会人になってやる。」

「お、おいパントバリウスっ!それは困……。」

「ありがとうございます。」


 慌てて制するアメリアの父の前でレイモンドは恭しく丁寧に腰を折る。

 そして顔をあげるとにこやかにアメリアに向かって微笑んだ。





 ◆◆◆


 取りあえず二人の王子には部屋を用意され、彼らは案内の執事たちと共に退出していった。




 その場に残ったのはアメリアとエルカイルそして各父親とエルアトス。


「父様、まんまとレイモンドに乗せられましたね。」


 今まで黙っていたエルアトスが口を開く。


「ん?そう見えるか?今回の事はきっかけだがバチェリ公国の王太子は割と骨がありそうだから少し様子を見てみたいと思っただけだぞ?」

「その為に自分の息子の婚約を使うのか?」


 信じられないという顔でラウールに見つめられパントバリウスはニヤリと口の端を上げた。

 そして黙り込む息子の隣に座る目に見えてしょんぼりしている女性に視線を移す。


「アメリアちゃんすまないね。彼らを納得させるためにも取りあえず、三人全員とデートしてやってくれ。」

「……わかりました。」


 隣で明らかに不機嫌なエルカイルを横目で見ながら、とても断れる雰囲気ではないのでアメリアも渋々承諾する。


「ラウールはその間に王妃の説得だな。」

「判った。」



 なんとも言えない気まずい元調印式ががやっと終わった。

梅雨なのに暑いですね。

体調には注意してくださいね。


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