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24.エスコートは誰に頼む?

連休明けはそこそこ忙しいですね。

 エルカイル殿下にエスコートをお願いしたいと手紙を出すと数日たって大きな衣装箱と共に返事が来た。


 手紙を出した際に、もしまだそちらにドレスが残っているなら一着借りたいと付け加えておいたのだが、どうやらそれも届いたようだ。


 滞在中様々なドレスをエルカイルがデザインしてくれて全てがアメリアのお気に入りだった。その中のどのドレスを選んでくれたのだろう。

 ワクワクしながら衣装箱に手を掛ける。


 しかし中から出てきたドレスは今まで一度も見たことのないものだった。それは美しい空色のつるんとした生地が何枚も重なっていてそこに金色の糸でびっしりと刺繍が施されている。


「素敵なドレス。」

 思わず感嘆のため息が出てしまう。

 きっとダンスを踊る時には会場の明かりを受けてキラキラと輝いて見える事だろう。


「エルカイル殿下の瞳の色だわ………それにまたお針子さん達に無理をさせて。」


 見たこともない美しいドレス。

 これが彼の新作であることは間違いなかった。



『あの夜の光り輝く君をずっと忘れられない。』



 そしてメッセージカードにはそんな言葉がつづられていた。

 まるでまだ自分を好きだと言ってくれているようなそんな言葉にアメリアの心がぴくんと跳ねた。


 身代わりだったことを大きな問題としたルイタスは一方的に婚約破棄を突き付けることで各国にその怒りを表した。


 勿論それは当たり前のことだ。



 ただ去り際にパントバリウス陛下からのお言葉としては暫くしたら国交を再開したいという暖かい言葉を貰った。社交辞令ともとれるその言葉はアメリアに淡い期待を持たせた。



 そしてこのお誘い。

 恐らくこれがその一歩なのだろう。


 でも、本来なら今度こそカメリアに正式に話が行くものと思っていた。


 しかし、エルカイルはアメリアにエスコートの誘いをし、ドレスを贈ってくれた。。

 それは国交の再開のアピールとしてでも嬉しい。


「………早く、会いたい。」


 でもその時、彼に会って何を伝えたらいいのだろうか。

 口から出た言葉とは裏腹にアメリアはこれから祝賀会当日までに悩むことになるのだった。










「アメリアお姉様、私もパーティー招待されてるんです。一緒に行っても良いですか?」



 その日の夕食の時に同席したカメリアにそう言われて、アメリアは思わず咽てしまった。上座に座る父をこっそり見ると頭を抱えている。


 どうやらコレは父の知らない話のようだ。


「大人しくしているから……ダメ?」


 良い筈がない。

 アメリアはおろか後ろに控える使用人の顔も揃って呆然と目が大きく開かれ、口が半開きである。誰もがきっと同じことを思っているのに何故か父の隣の王妃だけがニコニコとしているのがやけに恐ろしい。


「アメリアさん。場を学ぶには実践が必要です。連れて行ってあげられません?」


 なら王妃が行けばよいのではないか。そう言いたいがどうやら今回は父が行かないというので参加を見送るのだと先ほど言っていた。


「アメリア、頼む。」

「………わかりました。」


 なんとも情けない声の父王の頼みにアメリアは渋々承諾の意思を伝える。

 王妃同様ニコニコしながらデザートのゼリーと食べる妹にアメリア深いため息を一つ吐き出した。


「カメリア、一緒に行くのはいいけどエスコート役はどなたかいるの?」


 通常エスコートはペアが基本だ。稀に女性二人に男性一人の組み合わせもあるがそれは大変近しい間柄、もしくは女性二人が男性より優位な立場な場合に限る。今回のように国交の再開を知らしめるためお互いが対等な立場の相手となるのだからその扱いはありえない


「ガセリアのユータス様。」

「はあ?」

「今回の事を教えてくれたのも彼なんですよ。社会勉強にもなるから是非お勧めだと言っていました。同伴者としても是非やりたいと……。」

「彼はエルカイル様に毒を盛ったのよ!それなのに何を考えているのよ!」


 カメリアの言葉に思わず声を荒げたアメリア。あわてて口をつぐんだが既に遅かった。部屋が奇妙なくらいに静まり返った。


「そ、そんなに怒らなくても。ユータス様は手違いだったことで既に解決済みだし、成りすましをバラしてしまった事をお姉様にも改めて謝罪をする機会を貰えないかと言っていたのよ。」


 成りすましって……元はと言えばカメリアの我儘から始まったことなのだが。

 彼が迷惑をかけたと自分に謝りたいのなら書面でも構わないのと思う。それなのにわざわざ会いたいなんて、嫌な予感しかしない。。


 とはいえ、エルカイルと会う事になると判れば流石に彼も気まずいだろうから断ってくるだろう。


「エルカイル様のエスコートで私が行くという事を知れば彼は嫌がると思うけど、大丈夫?」


 心配そうにそう言ってやるとカメリアはニコッと笑った。


「うん。そろそろエルカイル殿下がお姉様を誘うはずだと言っていたわ。だから楽しみだって。」


 身体を使う事よりも頭脳を使う事を得意とするガセリアのユータスはすでにそれも想定していたと言う事か。完全に裏がありそうだがそれでも妹の相手をしてくれるというのだから仕方がない。あとはエルカイルが何と思うかだが、ここで断ってくるような小さな器の持つ主ではないと思う。


「ではエルカイル様には伝えておくから。……明日からマナーのおさらいだけはしておいてね。」

「はーい。わかってまーす。」


 妹のカメリアの軽い返事が、姉のアメリアに重く圧し掛かった。

いつもお読みいただきありがとうございます。



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