19.母のお墓参り?
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ずっと泳いでたら疲れちゃうだろ。」
ララは当たり前のように言った。
確かにあの魚の形をした下半身ではその場にとどまるだけでも絶えず足の部分を動かし続けなくてはならない。そう考えれば足の形に戻して置いた方が都合がいい。因みにララに至っては一度も魚の形にならずに海底まで来ている。聞いてみたら面倒だからと言われた。
「さあ、あそこが神殿だ。力を使い果たして眠っている人魚たちは皆真珠の姿で神殿に守られているんだ。そして親族や恋人など身近なものが時折訪れ、力を注ぐ事により通常より少しだが回復を早めると言われている。」
ララは広場の片隅にある小さな建物を指さす。
「半分人魚のアメリアには力を注ぐ事は出来ないかもしれないけど大きくなった姿ぐらいは見せてやりな。」
ララの説明で力を注ぐと言っていたので自分でもそれが出来ると思っていたのだがやはりそれはできないらしい。そうなると母の真珠を見学するだけで終わってしまいそうだ。
アメリアはそっと扉を押して中へはいる。
薄暗い室内は小さな明かりのもと幾つかの大きな貝が並んでいた。その一つがアメリアが入室するとキラキラと光始める。
「やっぱりわかるんだね。エメリア、あの光っている貝殻に収められている真珠玉がエイミイだよ。」
「私の事が、判るんですか?」
「もう二十年以上だ。そろそろ力が戻って来たんだろうね。」
真珠の形になってしまうと初めのうちは意思疎通は出来ないが基本的にはこちらの声は聞こえていると思っていいそうだ。だからここに来る親族は皆熱心に真珠玉に話しかけるのだという。
「お母様、貴方の娘のアメリアです。」
アメリアはキラキラ光る真珠玉を見つめてそっと挨拶した。
「あ、君がアメリアか!」
目の前の真珠からではなく背後から返事が来てアメリアはビクッと体を震わせた。振り向くと深い青い髪の美しい青年が立っている。傍らにいるララが恭しくお辞儀をしているところを見るとどうやら高貴な身分の人のようだ。失礼があってはいけないとアメリアもララに倣ってそっと頭を下げる。
「アメリア、陸の民の君まで私に頭を下げる必要はないと思うぞ。婆も頭を上げてくれ。」
ララは男にそう言われると直ぐに姿勢を直しニヤリと笑った。
「アメリア、こちらは海の宝玉であられるソニン様だ。簡単に言えば人魚族の王。それなりに偉そうだが元私の教え子だ。そうだなアメリアとは親戚にあたるか。」
「親戚ですか?」
「ああ、エイミイはこの国の王族だったからね。でも城に閉じこもるのが嫌で外に出たんだ。」
ララがあっさりと説明する。
アメリアは何と言っていいのかわからずただ目の前の美しい青年を見つめていた。
「彼女は俺の母の一番末の妹だと聞いている。俺とお前は従兄妹と言う事になるな。」
ソニンはそっとアメリアの頭に手をのせると彼女の髪をそっと撫でた。暖かい何かが撫でられた部分から体に染み込んでいく。それは不快なものではなく寧ろ心地よい。
「海の底は陸の民の血が混ざる君にが好意的ではない者もいるからな。念のために俺の印をつけておいた。」
「ありがとうございます。」
何やら良い事をされた様なのでアメリアは取りあえずお礼を言った。
するとソニンは満足そうに頷く。
「一時的な印だ、陸に戻れば消える。婆、今夜はここに留まるのか?」
「そうだね、夜の海を陸まで帰るのはアメリアには危険だろう。明日帰るよ。」
「ならちょうど良い、城に部屋ならたくさんあるから泊っていけ。」
ソニンはそう言うと真珠玉の並んだ最奥へと消えていった。




