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14.遅すぎた真実

お読みいただきありがとうございます。

 実は先程読んでいた報告書には『青い髪の宝石姫がアメリア』と書いてあった。

 それが正しいのならあの娘は嘘をついている。


 ………嫌われたくない。

 いっそ騙されたままでも自分は一向にかまわなかったのに。


 エルカイルは彼女の部屋へと続く廊下を小走り気味に歩きながら国王である意識不明の父の事よりも今から会うあの姫にどう言えば傷つかないのかだけを、ずっと考えていた。


 自分だけならさっさと相手の国に乗り込んで穏便(強制的)に解毒させる方法を選ぶのだが、流石に一国の王が倒れたとなるとその時間すらない。さっさと意識がなくなった父に何故あと数日我慢出来なかったのかと文句を言いたい気分だ。


 そんなこと薄情なことを思いながら歩いていたらこの後の考えがまとまらないうちにあっという間に彼女の部屋の前にたどり着いていた。


 護衛の騎士がエルカイルに気づいて一礼をする。


 遅い時間の来訪に少し驚いているようだったがそこは何かを察したのか彼は少し席を外しますと言ってそのままエルカイルが来た方向は反対方向へと歩いて行った。


「エルカイルです。少し話したいのですが。」


 エルカイルはそっとドアをノックし、声を掛けた。暫くするとカチャリと鍵が開く音がして侍女のサブリナが顔を出した。


「殿下。このようなお時間に何用でしょうか?姫様は既に御就寝のお支度が済んでおりますので………。」

「すまない。急ぎの用事だ。」


 やんわり断ろうとしている侍女の言葉をエルカイルはバサリと遮った。


「君はクリークから彼女と共に来たはずだな?ならば君にも訪ねたい。取りあえず中に入れてもらうぞ。」


 驚いた顔をするサブリナの肩をそっと押してエルカイルは、するりと部屋へ入り込んだ。そこには夜着に上着を羽織っただけの女性が目を大きく見開いて強引に入室してきた男を見ていた。


「緊急の用事ゆえ申し訳ない。」


 まず、エルカイルは深々とお辞儀をして謝罪をして彼女の前に立った。


「臥せっていた父が意識を失った。ガゼリアの毒が原因らしい。」

「パントバリウス様が……。」


 カメリアは一気に血の気が引いたようで青い顔をして名前を呟くのが精いっぱいだった。


「実は俺も先日君の事を教えてくれたあの国の使者に同じ毒を盛られた。」

「姫様!」


 ガタンと音を立てて椅子から崩れ落ちるアメリアをサブリナが慌てて支えた。

 そのあまりにも予想通りの光景に、居たたまれなくなってエルカイルは思わず顔を背ける。


「私が……原因?」

 

小さい声でアメリアが呟いた。


「ああ、アメリア姫を連れて来いと言っていた。彼女は青い髪の宝石姫だそうだ。」


 サブリナに支えられて座る彼女の方がピクリと跳ねた。そして両手をぎゅっと握りしめている。


「君の髪は、青いな。我々は君にまんまと騙されていたんだな。妹に成り代わるなんて凄い演技力だ。もともとガセリアから逃げてルイタスを隠れ蓑にしていたのか?」

「ごめんなさい……。」


 目をつむったまま彼女は声を震わせながら呟くとゆっくりと頭を下げた。


「ところで君は本物のアメリア姫なんだろうな?」

「………はい私は、アメリアと申します。」


 そのかすれた声に、アメリアがすでに泣いている事を知ってエルカイルの顔が悔し気に歪んだ。それでも彼はまだ彼女を追い詰める言葉を紡がなければならない。


「君が、アメリアなら……人魚の血を引くのならその血を分けて貰えないだろうか?父を救うにはそれが必要なんだ。万能薬なんだろう?ガゼリアもその血が欲しいらしい。我々は少しで良いんだ。」


 アメリアの肩を抱く形で背後に立っていたサブリナがまるで汚いものを見るような目でエルカイルを見つめた。


 そして当人のアメリアは無言のまま。


「すまない。時間がないんだ。」


 パチンっ


 何をしようとしたのかエルカイルがアメリアに向かって手を伸ばし、それをサブリナが払い落した。


「サブリナさん!」


 突然の侍女の行動にあせったアメリアが思わず顔をあげた。


 王族の手を叩くなど侍女がして良いはずがない。それも相手は他国の王太子。その場で切られても当然の出来事だった。

 アメリアは兎に角謝罪をするようにと言うためにサブリナの顔を見上げた。

 しかし侍女は呆然とエルカイルを見つめているだけ。


「何故泣いているんですか?」


 そしてその侍女がぽつりと呟いたのを聞いてアメリアは初めて目の前のエルカイルに視線を移す。


 そこには無表情を装ったつもりの彼の瞳から堪えきれなかった涙が一筋頬を伝っていた。


 その光景を目にしたアメリアは何故か一刻も早くその涙を止めたくなって、まだおぼつかない足取りのままふらりと立ち上がり彼の元まで歩いて行くとそっと頬の涙を指で拭った。


「すまない。君を傷つけたくないのに。俺はこんな事しか言えない……。」

「いえ、彼らが私に求婚してきたときに名乗り出ればよかったのです。でも、それを私が先延ばしにしてしまった。ごめんなさい。」


 真実を明かす事を遅くすればそれだけ傷は深くなる。海の魔女が言った通りだった。

 事態はすでに、アメリアとカメリアの二人だけの問題では済まなくなった

 

 そして今はそれ以上に伝えなくてはならない重大な問題がある。


「エルカイル殿下。確かに私はアメリアですが、私は人間の父と人魚の母の謂わば混血です。薬になりません。純粋な人魚の血でないとだめなのです。」


 エルカイルの瞳が驚きで大きく見開かれ、そしてそのままそっと瞼が伏せられた。


「騙されたのか、くっ……」


 まるでアメリアしか持っていないと、だから奪えとばかりに言っていた間者の言葉を鵜呑みにしてひどい言葉の数々を彼女の浴びせてしまったことを何と詫びればよいのか。


 エルカイルは下手に感情を残してしまうと後の別れが辛くなると思いワザときつい言葉を選んだことをエルカイルは今になって深く後悔した。


 今更どんな言い訳をしても彼女はきっと自分を許してはくれないだろう。

 そもそも、ここに来た事さえ間違いだったのだから。


「貴方にはひどいこと言ってしまった。今後の事は明日話そう。」

「待ってください。」


 クルリと踵をかえして立ち去ろうとしているエルカイルをアメリアは慌てて呼び止める。


「薬なら、あります。」


 アメリアは海の魔女から貰った小瓶に入ったの薬を引き出しから取り出しそっと机の上に置いた。

少々事情で、だいぶ時間が空いてしまいました。

引き続きお読みいただきありがとうございます。

このあと話の展開が丁度区切りになるのでもしかしたら、明日も更新するかもしれません。

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