表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/61

12.本物は誰?

ちょっと長くなりました。

 

 カメリアは相変わらず父から外出の許可が降りていない。だから仕方ないので少しでも興味を持つと物でも人でも姉アメリアの名で城に呼びつけては毎日の暇をつぶしていた。


 今まで慎ましやかに過ごしていた青の宝石姫が身元の分からぬよそ者や華美な装飾品の商人を日替わりで呼び寄せ、散財をし始めたと街で悪い噂が広がっているのだがそんなことはカメリアが気にする様な必要もなかった。


 今のお気に入りは他所から流れてきた宝石商人に同行してきた旅客の男性だ。名はサラスという。


 サラスは色々な国をめぐっているらしく城に来るたびに違う国の話をする。カメリアが興味を引くように少々脚色したりそれをモチーフにして物語として語ってくれ、それがまた楽しかった。宝石商は別の国へ渡ってしまったがカメリアのお気に入りとなったサラスは城に部屋を用意されとどまるこになった。勿論その時には身辺調査はされたが問題なし。


 こうしてサラスはいつの間にか客人からカメリアの付き人へと変わった。


「サラス、今日は何の話をしてくれる?」


 カメリアは朝食をとり身支度を終えると自分の部屋にサラスを呼び寄せた。

 城の中とはいえ未だ外部の者扱いのサラスの前ではカメリアは『アメリア』として過ごさなければならない。それが父から出された彼を雇う条件だった。


「アメリア様、今日はサーガルという国の話をしましょう。その国特産の有名な木の実が丁度手に入りまして……。」


 最近のサラスはふらりと街に出てはカメリアが見たこのない物を持ってきて喜ばせていた。入手経路を聞いても曖昧にはぐらかされてしまう。


「こちらの果実、皆さんの分までございますので切り分けてお食べください。」


 話が一区切りするとサラスは抱えていた包みを侍女に渡した。紙袋を覗いた侍女の顔が嬉しそうに輝く。


「こんなに沢山ありがとうございます。お話を聞かせていただいている間是非食べてみたいと思っていたところなんです。折角ですからお切りしてきますので暫く姫様をお願いsます。」


 侍女はカメリアとサラスを残して足早にへやを出ていった。

 先程まで三人でいた部屋が、一人かけて二人きりになると何やら部屋が広く感じる。

 気心が知れてきた間柄とはいえ付き人それも男性のサラスは侍女の計らいにより配置された椅子によって十分な距離をとって座っていた。


 二人というのはなんて間が持たない物なんだ。

 居心地の悪さを感じてカメリアはどうしたらよいのかと考え込む。


「アメリア様、折角ですからそちらに行ってもいいでしょうか?」


 声がして我に返るとサラスが隣に立っていた。

 行っても良いかと尋ねているのに既に横にいるのはどういう事なんだ?その図々しさにカメリアは少し腹を立てながら相手を見上げる。


「サラス、貴方勘違いしてはだめよ?貴方は付き人、私は主人。わきまえてくれないと追い出すわよ?」


 カメリアがそう注意をするとサラスは申し訳なさそうに顔をゆがませてそのまま彼女の座る長椅子の隣に腰を下ろした。


「申し訳ありませんアメリア様。私の主人は既にいますので……わきまえる必要はないんです。」


 手を掴まれているのだけなのに身体が動かないことにカメリアは動揺する。慌てて声をあげようとしたら口を塞がれた。


「静かにして頂けますか?女性を痛めつけるのは流石に気が引けます。」


 綺麗な顔で微笑まれてカメリアの背中にツーっと一筋の汗が流れる。慌ててコクコクと頷くとやっと口から手が離れた。


「サラス、こんなことはやめなさい。もうすぐ侍女が戻ってくるわ。今なら黙っていてあげるから直ぐここから出て行きなさい。」

 

そう言いながらもカメリアは侍女が帰ってきてドアが開くのをじっと待っていた。


「そんな顔をしていてもダメですよ。ドアのカギはさっき私が閉めました。それに果物には睡眠薬も入っていますからつまみ食いをしていたら今頃は、どこかでお休み中です。」


 カメリアの顔から一気に血の気が引いていく。

 それを見てサラスがニヤリと笑った。


「大丈夫ですよ。俺の仕事が終わったら直ぐに出て行きます。」


 彼はカメリアの腕をつかんでいる手と逆の手で器用にバッグから縄を取り出すとあっという間に彼女を縛り上げていく。


 カメリアは縛り上げられソファに座らせれているだけなのに目の前の男が怖くて仕方がない。


「何が目当てなの?私が取り寄せていた宝石?それともお金?それならいくらで持って行って。」

「俺が必要なのはね、貴方の血です。アメリア様、人魚の生き血。」

「いやっ」


 サラスの右手にはいつの間にかきらりと光るナイフが握られていた。


「俺の主人がずっと不治の病に苦しんでいるんです。人魚の生き血は万能薬だから取って来いって言われてるんですよ。初めはアメリア様自身を丸ごと持って帰ろうと思ったんですが流石に警備がきついのでね、何処なら良いですか?その綺麗な首筋は……失敗したら殺しちゃうからダメか。うーん。」


 ブツブツとつぶやき始めるサラスがとても恐ろしい。


「わ、私は人魚じゃないわ。」

「ああ、貴方は人魚じゃないですね。調べはついていますよ、お母さまが人魚でしょう?人魚と人間との混血。可能性は低いかもしれませんが試さないよりはマシだそうです。」


 サラスはどうやらカメリアの耳たぶに目を付けたようだ。


「ここなら少し切り付けても構わないですか?片耳で足りなければもう片方もありますね……。」


 冷たい刃が首筋をすべるように移動した。

 ゾクッ。


「私の母は王妃よ!人魚じゃない。それに私はカメリアよ、アメリアお姉様じゃないの…助けて…。」

「困った人ですね。嘘つきは嫌われますよ。」

「ホントよ。この髪、ウイッグよ、引っ張っても良いわ。」


 ぐいっと頭をつく出す仕草をするカメリアに驚いてあわててサラスがナイフを遠ざける。そしてそのまま髪を引くとそのまま外れ、青い髪の下から見事な金髪が現れる。

 今まで不気味なほど隙がなかったサラスの瞳がひととき余裕を失う。


「お前は誰だ?青い髪のアメリアは何処にいる?」

「姫様!ご無事ですか?」


 突然入口の扉が大きな音を立てて開けられた。


「ミヤ!」


 カメリアは待ち望んでいた侍女の到着に彼女の名を呼び、声の聞こえたドアに顔を向けた。


 そこにいたのは涙を浮かべた侍女と、カメリアが何度か会ったことのある一人の男性。何故、衛兵ではなく彼がここに?



「なぜお前がここにいる?カメリア姫?」

「ユータス様。」


 彼はつい先日姉に求婚したはずのガセリアの王子だった。





 ◆◆◆


 ガセリアから先日の小競り合いの詫びと称して使者が人クリーク城へと訪れていた。


 国を代表し謝罪の使者としてはかなり年が若めであり使者というより伝令の要素が強いようにも思える。彼はガセリアの制服に身を包み王の書簡を手にしていた。


 パントバリウス王に謁見を求めたが都合が悪いと断られたため、変わって代理である王太子のエルカイルと対面している。


「初めまして、我が王からの使者サラスと申します。家名はございませんのでご容赦ください。」


 サラスはゆっくりとお辞儀をして顔をあげながらエルカイルを隅々まで観察した。良く鍛えられた体つきに隙の無い瞳。


「ようこそ使者殿。父が会えず申し訳ない。」


 実はこの数日前パントバリウスは視察の途中で刺客に切り付けられその後、臥せっていた。小さい矢傷を負っただけだったので本来ならすぐに直る程度のそれがなぜが日に日に彼の身体をむしばんでいるのだ。


「お忙しい方ですから仕方ありません。これは先日の戦の正式な謝罪文です。それとウチの王子からのご提案が一つ。」


 一通の書簡を渡され中を改めると確かに定年な謝罪と王の御璽が押されていた。エルカイルはその書簡を後ろに控えているバリーに渡す。


「で、提案とは?」


「クリークに誤って嫁がれようとしている『青の宝石姫アメリア』を今ガセリアに滞在中の『金の宝石姫カメリア』と交換させていただきたい。」


 王子からの言葉をそのまま言っているのか使者サラスは感情のない瞳でニコリと笑った。


「使者殿?何を言っているのか判らぬが?私の婚約者は既にここクリークにいるカメリアだが?」


 意味不明なことを言う目の前の男に不快感をあらわにしてエルカイルは彼を睨んだ。


「貴方様こそ、ご自身の婚約者が別人だと言う事に何故気づかれていないのか不思議でございます。二人の通り名をご存じでございましょうに。」


 先程中庭で遠目に確認したが、あの青い髪を見てなぜ《金の宝石姫》と思っているのかサラスには理解できなかった。それとも既に彼女の秘密を知っているのか。


「使者殿、俺の婚約者は彼女一人だ。もう一人『カメリア』がいようとも、それは知らん。」


 エルカイルはサラスの物言いにかなりイライラしているのだがそれでも何とか耐えていた。

 それを判っていつつ、サラスはさらに彼を煽る。


「でも貴方は『カメリア』を望まれた。我が王とウチの王子は『アメリア』が欲しい。諦めてください。このままだと本当のカメリアはご自分のお家にすら帰ることが出来ませんよ。それを優しいアメリア様聞いたらなんと思われるか楽しみですね。」


「お前!」


 ついにエルカイルが耐えきれなくなり立ち上がって側においた剣を抜く。とたんこの瞬間を待っていたかのように小さいナイフが飛んできて彼の腕を切つける。数滴の血が床に落ちた。


「エルカイル様」


 後ろに控えていたバリーが慌ててハンカチで彼のキズを覆う。

 落ちているナイフを取り上げて飛んできた先にいるサラスを見ると彼はすでに窓枠に足をかけていた。


「その傷は貴方のお父さんに使った物と同じだよ。治したかったら彼女の血を飲めばいい人魚の血を引くアメリア姫の血を。急がないと君のお父さんは手遅れになるかも。」


 サラスはクスクス笑いながら窓の外へと消えていった。


やっとここまで来たかなって感じです。まだ先は長いですが……。

ブックマーク&☆評価、いいねなどしていただけると大変励みになります。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ