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11.来客来る!

いつもお読みいただきありがとうございます。

 彼を見つけると自然と目で追ってしまう。


 ここ数日は朝食を共にする以外はエルカイルと別行動をすることが増えた。


 彼は騎士としての鍛錬や準備の他にも王太子として政務の一部を受け持っているのだと言っていた。婚約者とはいえ他国の姫が立ち会える分野ではないため自然と城での行動範囲は限定される。


 今日も図書館から帰って来る途中に騎士たちの鍛錬場の脇を通り過ぎる。


 本来なら馬車で通過すればよいのだが最近は徒歩。先日偶然通りかかったときに鍛錬に参加していたエルカイルを見つけて以来の日課だった。声を掛けるわけでもなく暫し彼の美しい剣捌きや鍛錬を見学し、その場を去る。


 それだけなのになんとも幸せに気分になるのは何故だろう。


 アメリアは最近芽生えたこの感情が何なのか、まだわからない。でも不意に城で彼を見つけると嬉しくなる、そんな自分は嫌ではなかった。


 今朝届いたドレスは濃い色から淡い黄色へのグラデーションが美しい作りの少し大人っぽい物だった。以前はほぼ毎日届くそれにただ恐縮してしまいこむばかりだったがエルカイルがデザインしていると知ってからは彼が今、自分の事をどう思っているのかがにじみ出ている様に思えてついつい色々なことを想像してしまう。


 先日話をした際に近々アメリアのお披露目の夜会を開く予定があるのでそれ仕様のものを考えていると言っていたので恐らくこれがそうだろう。大人っぽくしたのはエルカイルとの年の差を見た目だけでも縮めたいという意図が見え隠れする。大きく開いたデコルテ部分からの袖がないタイプのドレス。だからと言って肩は隠せるように同色の羽織物が用意されていた。


「年の差、気にしているのかな。」


 エルカイルは二十七歳と聞いている一方カメリアは十六歳。お互い歳をとればそんなに気にはならないが若い時期には気になる程度の年の差だ。しかし見た目は幼く見えるが本当ならアメリアは二十三歳そこまで離れているわけではない。こうやって少しづつ彼を騙している。エメリアの胸がチクリと痛んだ。



 ドアをノックする音と共に部屋の外にいる護衛が来客がある事を告げた。


「カメリア様、クリークからララ様という方がお越しですがこの部屋の隣の応接室にお通してもよろしいでしょうか?」

「お願いします。」


 父からの手紙にあった母の知り合いという人物だ。

 アメリアは護衛に了承を伝えると、早速隣の部屋へ移動した。


 続きの間になっている応接室へ移動すると既に一人の女性がソファに座っていた。


 黒い髪を結い上げなんとの艶めかしい年上の美しい女性。一見初対面かと思ったが彼女の着ている深い青色のパーカーに見覚えがあった。


「婆さま。」


 あの日、海辺で会ったお婆様が若くなっていた。


「えへ、来ちゃった。貴方のお母様の知り合いっていう設定だからそれなりに若作りしてみたの。似合うかしら?」


「え、ええ。とてもお若く……ってキャラ変わってません?」


「だって外見が若くて話し方そのままって可笑しいでしょ?さあ、あまり長くはいられないんだから座って頂戴。私の事はララって呼んでね。」



 アメリアはお婆…ララに勧められるままに向かいのソファに座る。


「どうだい?こっちでの暮らしは。やっぱり気になってね、そしたらラウールに相談があるからって呼ばれてそれならって紹介状を書かせたんだよ。」


「ララ、ここで話すといろんな人に聞こえる…。」


 アメリアは小声でララに囁いた。勿論悪い話ではないと思っているが恐らくドアの外では護衛がいるし侍女も隣の部屋に控えている。


「大丈夫よ。ここに入ったときに軽く幕を張ってあるから。私たち以外の人には私が用意した当たり障りのない楽しい話し声だけが聞こえている筈よ。」


 そういうことは一番初めに言って欲しい。得意げに話すララを見て緊張していたアメリアはほっと息をつく。


「で、伝言は『苦しくなったら、遠慮なくいつでも帰っておいで』だって。もしそれでこの国の王から苦情が来たらラウールが対処するから安心しろって言ってた。帰る時は私が連れ出してあげるから安心していいよ。」


「え?」

「そうだよね、今更言うなって感じ?だったら初めから止めてくれればよかったのにねえ。」


 アメリアは思わずこくんと頷く。

 でも、そうなったらエルカイルとは会えなかったと言う事になる。


「あら、なんだか複雑な顔してるわね。もしかして好きになっちゃった?」


 ララが揶揄う様に言うと、ほんのりアメリアの耳が赤くなった。


「皆さん、いい人なんです。私にはもったいないくらい。」


 アメリアは恥ずかしさを隠してララ言う。


 エルカイルの事だけでなく陛下も、エルアトスもそして城の人達皆が自分を大切に扱ってくれるのが判る。だからこそもう少し一緒にいたいと願ってしまう。自分がカメリアじゃないと知ったら彼らはどうなってしまうのだろう。


「本当の事、話すのはもう少し後でも良い?」

「そうしたいなら止めないけど。遅くなるだけキズは深くなるよ?もうすぐお披露目なんだよね?本当のカメリアを知っている人もいるかもしれない。」


 薄々は気付いていた。お披露目の前に真実を告げてカメリアと入れ替わりここを去るか、もしくは何も言わずに別の理由をつけて立ち去るか。どちらにせよきっとここにはいられなくなる。それを思うと自然と胸が締め付けられそうに痛んだ。



「あと、ガセリアがお前の事を諦めてないみたいだ。諦めずにお前との婚姻を望んでる。どうやら彼らは『人魚の血』の噂話を調べたみたいだね。クリークにいるアメリアが偽物だと気づけば自然とこっちに目が向くから気を付けて。」


 狙うって、何も出来ない『ただの人間』の自分が?


「私、ただの人間ですよね?」


 アメリアはララに確認する。


「ああ、今は(・・)何の力もないよ。さて、やはり長く陸にいるのは疲れてしまう。そろそろ帰るね。」


 何故か突然話を切り上げてララが立ち上がる。

 するとタイミングを計ったかのようにドアをノックする音。


「カメリア嬢、ララさんがいらしているというのでご挨拶したいのですが。」


 エルカイルの声だった。ララを見ると人差し指を唇の前に立ててシーの合図をしている。そのままドアま歩いていくと彼女はドアノブを引く、


「初めまして、エルカイル様。ララと申します。そろそろお暇する時間でして、お話は今度ゆっくり。お邪魔いたしました。」


 ララは軽く挨拶をしてそのまま出て行ってしまった。

 エルカイルは暫くララが去っていくのを視線だけで見送する。


「エルカイル様?」


 ドアに手を掛けたままじっと動かない彼に向かってアメリアが尋ねると、直ぐにエルカイルが我に返える。


「あの方がララさんでしたか。なんだか、とても目を引く女性だな。瞳の印象が何故かあなたに似ていて美しい。」


「彼女の事が気になりますか?」


 まるで夢でも見たかのように語るエルカイルにアメリアは落ち着かない気分になり尋ねた。


「いいえ、私の婚約者は貴方です。カメリア様だけですよ。」


 アメリアを安心させようとしていった彼の言葉が、さらに彼女の心に深く突き刺さる。


 自分をカメリアと呼ぶ彼のその声が、なんだかとても嫌だった。

もう少し書きたいのですが、キリが良いのでここまで。

明日更新したいなあ(あくまで希望です)


宜しければブックマーク&☆評価などお願います。


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